[PA004] 教職実践力を育成する支援の一方途
若手教師にロールレタリングを導入して
キーワード:教職実践力, ロールレタリング, 若手教師
問題と目的
中央教育審議会答申(2006)では,教員に対する揺るぎない信頼を確立するために,大学の教職課程の見直しの一つとして,「教職実践演習」を新設し,2010年度の入学生から必修化を図っている。本研究では,「若手教師にロールレタリングを導入し,教職実践力を育成する」という仮説を設定し,心理測定尺度と精神生理学的評価,ロールレタリングの記述内容,内省報告を用い,若手教師の教職実践力を育成するロールレタリングの効果を明らかにすることを目的とする。
方 法
1.対象
教職経験3年未満の20代の健常な若手教師(実験群)3名(男性3名)と20代の健常な若手教師(統制群)9名(男性6名,女性3名)を分析対象とした。実験群には,隔週1往復,ロールレタリングを3ヶ月間(5往復,合計10回)実施した。
2.方法
⑴ 手続き
⑵ 効果の測定(査定)
本研究では,教師自尊感情尺度,エゴグラム,酸素化ヘモグロビン濃度,ロールレタリングの記述内容と内省報告で効果測定を行った。
結果
1.教師自尊感情尺度の得点の変化
実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=19.07, df1/10,p<.005)。
2.エゴグラムのの得点の変化
NPにおいては,実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=12.20, df1/10,p<.01)。Aにおいては,実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=11.61, df1/10,p<.01)。CP,FC,ACにおいては,実験×時期の交互作用は有意でなかった。
3.ロールレタリング中の脳血流変動
「私→〇〇〇へ」(往信課題)では,oxy-Hbは実験前に比較して,全ての部位について有意な変動は観察されなかった。「〇〇〇→私へ」(返信課題)では,oxy-Hbは実験前に比較して,側頭連合野右記録部において実験後(P<.05)で有意に減少した。
4.ロールレタリングの記述内容と内省報告
「私→指導に従わない生徒へ」「指導に従わない生徒→私へ」の記述内容では,指導に従わない生徒に親身になって心配し,その返信では,生徒の心情を考え,生徒自身の行動に目を向け,記述していた。内省報告では,生徒の気持ちを考えて書くことで,生徒理解が深まったと述べていた。
考 察
本研究では,若手教師にロールレタリングを導入することは,教職に対する誇りや使命感,教育的愛情,対人関係能力,児童生徒理解といった教職実践能力を育成するために有効であることが示唆された。本研究の課題としては,統制群の教師の脳血流変動の測定,管理職や同僚教師等による多様な角度からの行動変化の測定が必要である。さらに,教師のメンタルヘルスを促進していく視点から,ベテラン教師や中堅教師にもロールレタリングを導入していく研究を進めていきたい。
中央教育審議会答申(2006)では,教員に対する揺るぎない信頼を確立するために,大学の教職課程の見直しの一つとして,「教職実践演習」を新設し,2010年度の入学生から必修化を図っている。本研究では,「若手教師にロールレタリングを導入し,教職実践力を育成する」という仮説を設定し,心理測定尺度と精神生理学的評価,ロールレタリングの記述内容,内省報告を用い,若手教師の教職実践力を育成するロールレタリングの効果を明らかにすることを目的とする。
方 法
1.対象
教職経験3年未満の20代の健常な若手教師(実験群)3名(男性3名)と20代の健常な若手教師(統制群)9名(男性6名,女性3名)を分析対象とした。実験群には,隔週1往復,ロールレタリングを3ヶ月間(5往復,合計10回)実施した。
2.方法
⑴ 手続き
⑵ 効果の測定(査定)
本研究では,教師自尊感情尺度,エゴグラム,酸素化ヘモグロビン濃度,ロールレタリングの記述内容と内省報告で効果測定を行った。
結果
1.教師自尊感情尺度の得点の変化
実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=19.07, df1/10,p<.005)。
2.エゴグラムのの得点の変化
NPにおいては,実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=12.20, df1/10,p<.01)。Aにおいては,実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=11.61, df1/10,p<.01)。CP,FC,ACにおいては,実験×時期の交互作用は有意でなかった。
3.ロールレタリング中の脳血流変動
「私→〇〇〇へ」(往信課題)では,oxy-Hbは実験前に比較して,全ての部位について有意な変動は観察されなかった。「〇〇〇→私へ」(返信課題)では,oxy-Hbは実験前に比較して,側頭連合野右記録部において実験後(P<.05)で有意に減少した。
4.ロールレタリングの記述内容と内省報告
「私→指導に従わない生徒へ」「指導に従わない生徒→私へ」の記述内容では,指導に従わない生徒に親身になって心配し,その返信では,生徒の心情を考え,生徒自身の行動に目を向け,記述していた。内省報告では,生徒の気持ちを考えて書くことで,生徒理解が深まったと述べていた。
考 察
本研究では,若手教師にロールレタリングを導入することは,教職に対する誇りや使命感,教育的愛情,対人関係能力,児童生徒理解といった教職実践能力を育成するために有効であることが示唆された。本研究の課題としては,統制群の教師の脳血流変動の測定,管理職や同僚教師等による多様な角度からの行動変化の測定が必要である。さらに,教師のメンタルヘルスを促進していく視点から,ベテラン教師や中堅教師にもロールレタリングを導入していく研究を進めていきたい。