[PA024] ASD傾向のある発達障害児に対する表象を支援する算数文章題指導
アニメーション教材を利用して
キーワード:算数文章題, アニメーション教材, 表象機能
1.問題と目的
知的水準は高くても文章理解に困難を示す児童がいる。このような児童に対し,東原(2012)は,映像教材を利用して文章読解を促すことに成功した。この時,映像を視聴後,ナレーションの音声を消して再生し,本児に解説をさせること(言語化)と,文章を音読しながら,その内容通り模型を動かすこと(動作化)で内容理解を評価した。それは本児が記憶系が良好であることと関連していると考えられた。すなわち,映像やナレーションをあえて部分的に隠して再生させることで,文章とその背後にある現実(映像)を一体化させることができたと考えられた。そこで,本研究では,本児が困難を示す算数文章題においても,アニメーションを活用して,文章とその背後にある量の関係を結びつける指導が有効であるか検討することとした。
2.方法
2-1 対象
通常学級に在籍するASD(正しくは,PDDと診断されている)の6年男児A。WISC-Ⅳでは,FSIQ80(90%信頼区間76-86)。WMIが他の3指標より有意に高かった。KABC-Ⅱでは,認知総合尺度に比べ全ての習得尺度が有意に低く,認知の力が学業スキル獲得に活かされていないとみられる。「計算」は評価点7とノーマル範囲であったが,「数的推論」は評価点4と著しく低かった。
2-2 時期・場所
平成23年12月から1年間,M教育相談室における月1回指導時間の一部を利用した。
2-3 手続き
(1)プリテスト
基礎加減法文章題14題(Rileyによる)と乗法,除法(等分除,包含除)の文章題3題。
(2)アニメーションによる指導
プリテストで正答できなかった問題を取り出し,アニメーション化した(TDK「はり絵わーるど2」使用)。その際,あえて絵を部分的に隠し,表象を促す支援をした。
(3)ポストテスト
プリテストで正答できなかった問題のみ実施した。また,誤答の場合,量の関係がイメージできるよう,「多い」「あげた」等の枠に人物名や数の変化を記入できるような図入りのポストテストを用意し再度実施した。
3.結果及び考察
プリテストはChange2, 3, 4, 6, Compare5, 6と乗除法問題全てが誤答であった。それらをPC教材で指導したところ,以前1度見せた動画を別の日に再生する際途中で止めた静止画像を見ただけで正答できたものもあった。問題文と量の関係や操作を結びつけるのに,アニメーション教材は有効であったと考えられる。しかしポストテストでは,プリテストと同様に誤答した。そこで,図入りテストで再度実施したところ,下のように図に数値などのメモを書き込むことができ,そこから立式し全て正答できた。すなわち,アニメーションからペーパーテストへの橋渡しとして,具体物まで戻さずとも,抽象化された途中段階の表現が重要であることがわかった。
付 記
本児の指導は当時の卒論生の池亀明花さんに手伝っていただきました。
文 献
東原文子(2012):自閉傾向の一児童に対するデジタル教科書を用いた説明文指導.日本特殊教育学会第50回.
知的水準は高くても文章理解に困難を示す児童がいる。このような児童に対し,東原(2012)は,映像教材を利用して文章読解を促すことに成功した。この時,映像を視聴後,ナレーションの音声を消して再生し,本児に解説をさせること(言語化)と,文章を音読しながら,その内容通り模型を動かすこと(動作化)で内容理解を評価した。それは本児が記憶系が良好であることと関連していると考えられた。すなわち,映像やナレーションをあえて部分的に隠して再生させることで,文章とその背後にある現実(映像)を一体化させることができたと考えられた。そこで,本研究では,本児が困難を示す算数文章題においても,アニメーションを活用して,文章とその背後にある量の関係を結びつける指導が有効であるか検討することとした。
2.方法
2-1 対象
通常学級に在籍するASD(正しくは,PDDと診断されている)の6年男児A。WISC-Ⅳでは,FSIQ80(90%信頼区間76-86)。WMIが他の3指標より有意に高かった。KABC-Ⅱでは,認知総合尺度に比べ全ての習得尺度が有意に低く,認知の力が学業スキル獲得に活かされていないとみられる。「計算」は評価点7とノーマル範囲であったが,「数的推論」は評価点4と著しく低かった。
2-2 時期・場所
平成23年12月から1年間,M教育相談室における月1回指導時間の一部を利用した。
2-3 手続き
(1)プリテスト
基礎加減法文章題14題(Rileyによる)と乗法,除法(等分除,包含除)の文章題3題。
(2)アニメーションによる指導
プリテストで正答できなかった問題を取り出し,アニメーション化した(TDK「はり絵わーるど2」使用)。その際,あえて絵を部分的に隠し,表象を促す支援をした。
(3)ポストテスト
プリテストで正答できなかった問題のみ実施した。また,誤答の場合,量の関係がイメージできるよう,「多い」「あげた」等の枠に人物名や数の変化を記入できるような図入りのポストテストを用意し再度実施した。
3.結果及び考察
プリテストはChange2, 3, 4, 6, Compare5, 6と乗除法問題全てが誤答であった。それらをPC教材で指導したところ,以前1度見せた動画を別の日に再生する際途中で止めた静止画像を見ただけで正答できたものもあった。問題文と量の関係や操作を結びつけるのに,アニメーション教材は有効であったと考えられる。しかしポストテストでは,プリテストと同様に誤答した。そこで,図入りテストで再度実施したところ,下のように図に数値などのメモを書き込むことができ,そこから立式し全て正答できた。すなわち,アニメーションからペーパーテストへの橋渡しとして,具体物まで戻さずとも,抽象化された途中段階の表現が重要であることがわかった。
付 記
本児の指導は当時の卒論生の池亀明花さんに手伝っていただきました。
文 献
東原文子(2012):自閉傾向の一児童に対するデジタル教科書を用いた説明文指導.日本特殊教育学会第50回.