[PA030] Web上での学習者間相互交流の仕組みがeラーニングに対する動機づけに与える効果(IV)
Keywords:eラーニング, 自己調整学習, 学習量
背景と目的
eラーニングは,学習者の学習データを大量かつ容易に蓄積し,フィードバックする自動処理能力をもっている。一方,その単調さから学習者の動機づけが持続しにくく,ドロップアウトする学習者が多いことが古くからの課題とされている。そこで,澤山・寺澤(2014a)では,学習者のオンライン人数が常時表示される機能などから構成される,「繋がりシステム」を開発し,これを一問一答式eラーニングに導入した。また,繋がりシステムの有無を独立変数とする学習実験を,1ヶ月を超えて実施した。その結果,繋がりシステムを稼働させる条件では,学習量の減少が抑制されることが示された。ただし,その後のスマートフォンアプリを用いた検討では,この効果が検出されず,繋がりシステムの学習量減少抑制効果が弱まっている可能性が示唆されていた(澤山・寺澤,2014b)。この理由としては,近年のSNSの普及などが考察された。本研究では,この結果の再現性を検討することを目的とした。
方 法
澤山・寺澤(2014b)と同様に行った。
参加者 大学の教職に関する講義で参加者を募った。参加者は,学習に対する動機づけなどを測る予備調査への回答結果に大きな差が出ないよう,盲検法によって,繋がりシステムを稼働させない「単独学習条件」42名と,稼働させる「繋がり学習条件」43名に割り振られた。
繋がりシステム オンライン人数表示機能や,自由に発言を共有するツイート機能等から構成された。
学習コンテンツ 教員採用試験対策の問題
学習期間[前半]:2014年11月24日~12月7日
[後半]:2014年12月8日~12月21日
手続き できるだけ毎日ログインするよう求めた。一方,学習量については個人の自由とした。また,学習期間中は,友だちと,画面を見せ合ったり実験の話をしたりすることのないよう求めた。
結果と考察
澤山・寺澤(2014b)と同様に,データを集計し,学習量(単位:回)について,2水準の学習条件[繋がりシステムの有無],及び2水準の学習期間[前半及び後半]を要因とする2要因混合分散分析を行った。その結果,学習条件と学習期間の交互作用は認められなかった(F(1,67)=0.00, n.s.)。すなわち,繋がりシステムによる,学習量の減少抑制効果は認められなかった(図1参照)。また,繋がり学習条件では,学習期間中,1度もツイートが投稿されなかった。これらは,澤山・寺澤(2014b)と同様の結果である。概して,繋がりシステムによる1ヶ月間の学習量減少抑制効果を示した澤山・寺澤(2014a)の結果とは対照的に,スマートフォンアプリを用いた検討では,この効果が検出されないことが明らかとなった。理由としては,近年,他者とオンラインで繋がるためのサービスが飽和状態にあることで,このようなWebを介した繋がりに対し,学習者が魅力を感じにくくなっている可能性が示唆される。今後は,学習に関する共通の話題提供などを通して,当該学習システム上でなければ満たすことのできない欲求を喚起するといった対策を講じる必要があろう。
引用文献
澤山郁夫・寺澤孝文(2014a).一問一答式eラーニングにおける学習者同士の繋がる仕組みが学習者の学習量推移に与える効果 日本教育工学会論文誌,38(1), 1-18.
澤山郁夫・寺澤孝文(2014b).Web上での学習者間相互交流の仕組みがeラーニングに対する動機づけに与える効果(III) 日本社会心理学会第55回大会発表論文集, 222.
付 記
本研究は,科学研究費補助金による助成を受けた(基盤研究A,課題番号:22240079,研究代表者:寺澤孝文)。
eラーニングは,学習者の学習データを大量かつ容易に蓄積し,フィードバックする自動処理能力をもっている。一方,その単調さから学習者の動機づけが持続しにくく,ドロップアウトする学習者が多いことが古くからの課題とされている。そこで,澤山・寺澤(2014a)では,学習者のオンライン人数が常時表示される機能などから構成される,「繋がりシステム」を開発し,これを一問一答式eラーニングに導入した。また,繋がりシステムの有無を独立変数とする学習実験を,1ヶ月を超えて実施した。その結果,繋がりシステムを稼働させる条件では,学習量の減少が抑制されることが示された。ただし,その後のスマートフォンアプリを用いた検討では,この効果が検出されず,繋がりシステムの学習量減少抑制効果が弱まっている可能性が示唆されていた(澤山・寺澤,2014b)。この理由としては,近年のSNSの普及などが考察された。本研究では,この結果の再現性を検討することを目的とした。
方 法
澤山・寺澤(2014b)と同様に行った。
参加者 大学の教職に関する講義で参加者を募った。参加者は,学習に対する動機づけなどを測る予備調査への回答結果に大きな差が出ないよう,盲検法によって,繋がりシステムを稼働させない「単独学習条件」42名と,稼働させる「繋がり学習条件」43名に割り振られた。
繋がりシステム オンライン人数表示機能や,自由に発言を共有するツイート機能等から構成された。
学習コンテンツ 教員採用試験対策の問題
学習期間[前半]:2014年11月24日~12月7日
[後半]:2014年12月8日~12月21日
手続き できるだけ毎日ログインするよう求めた。一方,学習量については個人の自由とした。また,学習期間中は,友だちと,画面を見せ合ったり実験の話をしたりすることのないよう求めた。
結果と考察
澤山・寺澤(2014b)と同様に,データを集計し,学習量(単位:回)について,2水準の学習条件[繋がりシステムの有無],及び2水準の学習期間[前半及び後半]を要因とする2要因混合分散分析を行った。その結果,学習条件と学習期間の交互作用は認められなかった(F(1,67)=0.00, n.s.)。すなわち,繋がりシステムによる,学習量の減少抑制効果は認められなかった(図1参照)。また,繋がり学習条件では,学習期間中,1度もツイートが投稿されなかった。これらは,澤山・寺澤(2014b)と同様の結果である。概して,繋がりシステムによる1ヶ月間の学習量減少抑制効果を示した澤山・寺澤(2014a)の結果とは対照的に,スマートフォンアプリを用いた検討では,この効果が検出されないことが明らかとなった。理由としては,近年,他者とオンラインで繋がるためのサービスが飽和状態にあることで,このようなWebを介した繋がりに対し,学習者が魅力を感じにくくなっている可能性が示唆される。今後は,学習に関する共通の話題提供などを通して,当該学習システム上でなければ満たすことのできない欲求を喚起するといった対策を講じる必要があろう。
引用文献
澤山郁夫・寺澤孝文(2014a).一問一答式eラーニングにおける学習者同士の繋がる仕組みが学習者の学習量推移に与える効果 日本教育工学会論文誌,38(1), 1-18.
澤山郁夫・寺澤孝文(2014b).Web上での学習者間相互交流の仕組みがeラーニングに対する動機づけに与える効果(III) 日本社会心理学会第55回大会発表論文集, 222.
付 記
本研究は,科学研究費補助金による助成を受けた(基盤研究A,課題番号:22240079,研究代表者:寺澤孝文)。