[PA037] 評価者と学習者で作成したルーブリックを用いたパフォーマンス評価
遂行回避目標志向に着目して
Keywords:達成目標志向性, ルーブリック, テスト観
目 的
達成目標理論(Elliot & Harackiewicz,1996)の遂行回避目標は学業に抑制的な影響を与えるとされ(田中・藤田,2003),遂行回避目標志向が高い学生に対する学業促進的な授業の提供が教員に求められる。ルーブリック提示がテスト観の「改善」に影響し理解方略に正の効果を与え,テスト観の「強制」が内発的動機づけに負の効果を与えること(鈴木,2011),授業者・学習者・観察者でルーブリック構築することが学習目標や内容を明確にすること(寺嶋・林,2006)などが明らかにされている。本研究では,教員と学生で作成したルーブリックを用いたパフォーマンス評価として実技試験を実施し,それを遂行回避目標志向の高い学生がどのように認識するのかを調査し,学業促進的に作用する可能性を探ることを目的とする。
方 法
対象者 専門学校生(言語聴覚士養成課程)38名(男性15名,女性23名)平均年齢28.4歳(SD:7.07)。
手続き
達成目標 検査を施行する実技試験(以下実技試験)の前に,光浪(2010)による目標志向性尺度(17項目,5件法)を用いて質問紙調査をした。
テスト観 実技試験前に,鈴木(2012)によるテスト観尺度(18項目,5件法)を用いて「当学校のテスト全般」について質問紙調査をした。
実技試験 ルーブリックを用いたパフォーマンス評価として実施した。ルーブリックの評価項目を全対象者に考えてもらい,筆者が集約して10項目を抽出し,内容的な適切さを筆者と教員1名が確認した。評価基準は筆者が作成して教員2名が添削した。ルーブリックは事前に対象者に渡した。筆者が試験直後に採点し,対象者もビデオ録画された自分の実技試験の映像を見て採点した。
実技試験観 実技試験実施後,鈴木(2012)によるテスト観尺度を実技試験に合うように用語を訂正し(18項目,5件法),「今回実施した実技試験」について質問紙調査をした。
時期 2014年9月~12月
結 果
達成目標
因子分析(プロマックス回転)を行い「マスタリー目標志向」「遂行接近目標志向」「遂行回避目標志向」の3因子を抽出した後,クラスター分析を行った。
テスト観と実技試験観の因子分析
テスト観と実技試験観で「改善」「誘導」「強制」「比較」の4因子を抽出し,共通して負荷を与えた質問項目のみ選出し(改善5項目,誘導2項目,強制2項目,比較3項目),平均値を算出した。
遂行回避[高-低]群間のテスト観の多重比較
改善(4.10<4.42*),誘導(3.60>3.26*),強制(3.55>2.76**),比較(2.76>1.69**)。
遂行回避[高-低]群間の実技試験観の多重比較
改善(4.44・4.46),誘導(3.90>3.56*),強制(2.76・2.59),比較(2.11>1.67**)。
考 察
遂行回避(高)群は(低)群に比べ,テスト観では「改善」が低く「誘導」「強制」「比較」が高かったが,実技試験観では「誘導」「比較」のみ高かった。遂行回避の高い学生は,当学校のテスト全般を「勉強を強制させるもの」と認識していたが,実技試験に対しては遂行回避の低い学生と同様に「強制させるもの」ではなく「自分の状態を把握して改善に活用するもの」と認識していたと考えられる。今後は,教員と学生で作成したルーブリックを用いた実技試験のどのような要素が,遂行回避の高い学生に対して学業促進的な影響を与えるのかについて検討することが課題である。
達成目標理論(Elliot & Harackiewicz,1996)の遂行回避目標は学業に抑制的な影響を与えるとされ(田中・藤田,2003),遂行回避目標志向が高い学生に対する学業促進的な授業の提供が教員に求められる。ルーブリック提示がテスト観の「改善」に影響し理解方略に正の効果を与え,テスト観の「強制」が内発的動機づけに負の効果を与えること(鈴木,2011),授業者・学習者・観察者でルーブリック構築することが学習目標や内容を明確にすること(寺嶋・林,2006)などが明らかにされている。本研究では,教員と学生で作成したルーブリックを用いたパフォーマンス評価として実技試験を実施し,それを遂行回避目標志向の高い学生がどのように認識するのかを調査し,学業促進的に作用する可能性を探ることを目的とする。
方 法
対象者 専門学校生(言語聴覚士養成課程)38名(男性15名,女性23名)平均年齢28.4歳(SD:7.07)。
手続き
達成目標 検査を施行する実技試験(以下実技試験)の前に,光浪(2010)による目標志向性尺度(17項目,5件法)を用いて質問紙調査をした。
テスト観 実技試験前に,鈴木(2012)によるテスト観尺度(18項目,5件法)を用いて「当学校のテスト全般」について質問紙調査をした。
実技試験 ルーブリックを用いたパフォーマンス評価として実施した。ルーブリックの評価項目を全対象者に考えてもらい,筆者が集約して10項目を抽出し,内容的な適切さを筆者と教員1名が確認した。評価基準は筆者が作成して教員2名が添削した。ルーブリックは事前に対象者に渡した。筆者が試験直後に採点し,対象者もビデオ録画された自分の実技試験の映像を見て採点した。
実技試験観 実技試験実施後,鈴木(2012)によるテスト観尺度を実技試験に合うように用語を訂正し(18項目,5件法),「今回実施した実技試験」について質問紙調査をした。
時期 2014年9月~12月
結 果
達成目標
因子分析(プロマックス回転)を行い「マスタリー目標志向」「遂行接近目標志向」「遂行回避目標志向」の3因子を抽出した後,クラスター分析を行った。
テスト観と実技試験観の因子分析
テスト観と実技試験観で「改善」「誘導」「強制」「比較」の4因子を抽出し,共通して負荷を与えた質問項目のみ選出し(改善5項目,誘導2項目,強制2項目,比較3項目),平均値を算出した。
遂行回避[高-低]群間のテスト観の多重比較
改善(4.10<4.42*),誘導(3.60>3.26*),強制(3.55>2.76**),比較(2.76>1.69**)。
遂行回避[高-低]群間の実技試験観の多重比較
改善(4.44・4.46),誘導(3.90>3.56*),強制(2.76・2.59),比較(2.11>1.67**)。
考 察
遂行回避(高)群は(低)群に比べ,テスト観では「改善」が低く「誘導」「強制」「比較」が高かったが,実技試験観では「誘導」「比較」のみ高かった。遂行回避の高い学生は,当学校のテスト全般を「勉強を強制させるもの」と認識していたが,実技試験に対しては遂行回避の低い学生と同様に「強制させるもの」ではなく「自分の状態を把握して改善に活用するもの」と認識していたと考えられる。今後は,教員と学生で作成したルーブリックを用いた実技試験のどのような要素が,遂行回避の高い学生に対して学業促進的な影響を与えるのかについて検討することが課題である。