[PA045] 音声コミュニケーションに困難を示す人への態度と失敗観
聴覚障害者・吃音者に対する抵抗感
Keywords:態度, 失敗に対する価値観
問題と目的
現代は社会性や対人能力を必要とする機会が増え,音声コミュニケーションの重要性が増している。このような中,聴覚障害者や吃音者など,音声コミュニケーションがスムーズにいかない人たちは不利な状況におかれている(独立行政法人高齢者・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター,2007)。本研究は,聴覚障害者や吃音者に対する評価を調べた。
また,聴覚障害者や吃音者が表出するコミュニケーション上の困難は,「失敗」のシグナルとして受け取られる可能性がある。失敗を否定的に評価する人ほど,聴覚障害者や吃音者に抵抗を感じやすいと予測した。
方法
参加者 大学生・大学院生・研究生 19名
手続き 大学の講義時間中に質問紙を実施した。失敗に対する価値観には,池田・三沢(2012)の失敗観尺度を用い(項目例:失敗すると,自己嫌悪に陥ってしまう),5件法(5=非常にそう思う)で回答を求めた。参加者は授業で様々な学生とグループになったという場面を想定し,各学生と質問項目に挙げられた交流場面(例:お昼を一緒に食べないかとその学生を誘う場合)で,どの程度抵抗を感じるかを回答した(河内,2004)。回答は5件法(5=非常に抵抗がある)で行った。対象学生は,耳に機械をつけている学生(聴覚障害),どもりのある学生(吃音),比較条件として健常の学生を対象とした。その後,対象学生が耳に機械をつけていた理由,どもっていた理由についての自由記述,日本語版社会的望ましさ尺度(北村・鈴木,1986),過去・現在の接触経験の回答を求めた。
結果と考察
聴覚障害学生 回答者17/19人が聴覚障害者と接したことがあると述べ,耳に機械をつけている理由について14/19人が「難聴」「聴覚障害」と外的要因に言及した。
交流場面における抵抗感を目的変数,失敗観と対象学生を説明変数とする重回帰分析を行ったところ,失敗観の主効果が有意であり,特に聴覚障害学生の条件において単純傾斜が強かった(聴覚障害学生;β=53, t (34)=2.43, p<.03,健常学生;β=.33, t (34)=1.50, p=.14)。
吃音学生 回答者16/19人が言語障害(吃音)者と接したことがあると述べたが,どもりの理由については3/19人のみ「吃音」等の外的要因を挙げ,その他は「自信がない」「周囲を気にしている」など内的要因に言及した。
同様の重回帰分析を行ったところ失敗観の主効果が有意であり,特に吃音の学生の条件において単純傾斜が強かった(図,吃音障害学生;β=.66, t (34)=3.12, p<.01,健常学生;β=.30, t (34)=1.44, p=.16)。
聴覚障害・吃音のある学生との交流においては,接する側である健常者の失敗に対する価値観が反映されることが示された。
現代は社会性や対人能力を必要とする機会が増え,音声コミュニケーションの重要性が増している。このような中,聴覚障害者や吃音者など,音声コミュニケーションがスムーズにいかない人たちは不利な状況におかれている(独立行政法人高齢者・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター,2007)。本研究は,聴覚障害者や吃音者に対する評価を調べた。
また,聴覚障害者や吃音者が表出するコミュニケーション上の困難は,「失敗」のシグナルとして受け取られる可能性がある。失敗を否定的に評価する人ほど,聴覚障害者や吃音者に抵抗を感じやすいと予測した。
方法
参加者 大学生・大学院生・研究生 19名
手続き 大学の講義時間中に質問紙を実施した。失敗に対する価値観には,池田・三沢(2012)の失敗観尺度を用い(項目例:失敗すると,自己嫌悪に陥ってしまう),5件法(5=非常にそう思う)で回答を求めた。参加者は授業で様々な学生とグループになったという場面を想定し,各学生と質問項目に挙げられた交流場面(例:お昼を一緒に食べないかとその学生を誘う場合)で,どの程度抵抗を感じるかを回答した(河内,2004)。回答は5件法(5=非常に抵抗がある)で行った。対象学生は,耳に機械をつけている学生(聴覚障害),どもりのある学生(吃音),比較条件として健常の学生を対象とした。その後,対象学生が耳に機械をつけていた理由,どもっていた理由についての自由記述,日本語版社会的望ましさ尺度(北村・鈴木,1986),過去・現在の接触経験の回答を求めた。
結果と考察
聴覚障害学生 回答者17/19人が聴覚障害者と接したことがあると述べ,耳に機械をつけている理由について14/19人が「難聴」「聴覚障害」と外的要因に言及した。
交流場面における抵抗感を目的変数,失敗観と対象学生を説明変数とする重回帰分析を行ったところ,失敗観の主効果が有意であり,特に聴覚障害学生の条件において単純傾斜が強かった(聴覚障害学生;β=53, t (34)=2.43, p<.03,健常学生;β=.33, t (34)=1.50, p=.14)。
吃音学生 回答者16/19人が言語障害(吃音)者と接したことがあると述べたが,どもりの理由については3/19人のみ「吃音」等の外的要因を挙げ,その他は「自信がない」「周囲を気にしている」など内的要因に言及した。
同様の重回帰分析を行ったところ失敗観の主効果が有意であり,特に吃音の学生の条件において単純傾斜が強かった(図,吃音障害学生;β=.66, t (34)=3.12, p<.01,健常学生;β=.30, t (34)=1.44, p=.16)。
聴覚障害・吃音のある学生との交流においては,接する側である健常者の失敗に対する価値観が反映されることが示された。