日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA051] 中学生における内集団の好ましくない成員に対する感情の検討

学級を内集団に設定して

長峯聖人1, 外山美樹2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:社会的比較, 黒い羊効果, 学級集団

問題と目的
小中学生において,学級集団が持つ役割は大きい。例えば,自身が属する学級への効力感が学校適応感に影響を及ぼしたり(淵上・今井・西山・鎌田,2006),自身が属する学級が持つ規範意識がいじめ加害傾向に影響を及ぼしたりする(大西・吉田,2010)などの結果が示されている。
本研究では,黒い羊効果(Marques, Yzerbyt, & Leyens, 1988)を取り上げ,学級集団内に存在する好ましくない成員に対して生じる感情について検討することを目的とした。本研究は,学級集団の役割について,集団間比較によって生じる社会的現象による影響という観点から新たな示唆を与えうると考えられる。検討にあたり,黒い羊効果と関連があると考えられる社会的比較志向性,集団同一視,自尊感情と内集団の好ましくない成員に対する感情との関連を見ることとした。
方 法
分析対象者 茨城県内および静岡県内の中学1・2年生559名(男子288名,女子265名,性別不明6名)
調査時期 2014年10月~2015年2月
調査方法 学級ごとに質問紙調査用紙を配布した。
調査内容 1. 内集団の好ましくない成員に対する感情尺度(予備調査に基づき作成),2. 社会的比較志向性尺度(外山,2002),3. 集団同一視尺度(Karasawa, 1991を中学生用に改変),4. 自尊感情尺度(桜井,2000),5. スポーツおよびバスケットボールの重要性に関する項目(独自作成)を使用した。
なお,1を使用するに際し,学級間の競争状況としてクラスマッチ(競技はバスケットボール)を題材とした仮想場面を提示した。場面の内容的妥当性に関しては,予備調査で検証を行った。
結果と考察
内集団の好ましくない成員に対する感情尺度の因子構造
内集団の好ましくない成員に対する感情尺度に対し,最尤法,Promax回転による因子分析を行った結果,3因子解が得られた。第1因子は“C(ターゲット)を信じてあげたい”などの項目であり,“共感”と命名した。第2因子は“むかつく”などの項目であり,“敵意・怒り”と命名した。第3因子は“悲しい”などの項目であり,“他者に起因する抑うつ・落ち込み”と命名した。各項目の内容ならびに因子パターンをTable 1に示す。
内集団の好ましくない成員に対する感情尺度を従属変数とした階層的重回帰分析
内集団の好ましくない成員に対する感情尺度を従属変数とした階層的重回帰分析を男女別に行った。まず,Step 1においてバスケットボールの重要性を統制変数として投入した。続いて,Step 2において社会的比較志向性,集団同一視,自尊感情を投入した。最後に,Step 3において社会的比較志向性と自尊感情の交互作用項ならびに集団同一視と自尊感情の交互作用項を投入した。分析の結果,女子においてのみ,“敵意・怒り”でStep 3が有意傾向に近く(ΔR2=.03, F(2, 227)=2.32, p=.10),集団同一視と自尊感情の交互作用が有意であった(β=.17, p<.05)。
単純傾斜分析を行った結果,集団同一視が低い場合には,自尊感情が“敵意・怒り”に影響を及ぼしており(b=-0.18, β=-.24, p<.05),自尊感情が低いほど“敵意・怒り”の得点が高かった。一方,集団同一視が高い場合には,そのような影響が見られなかった(b=0.03, β=.05, n.s.)。