The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PA

Wed. Aug 26, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PA053] 大学生用トラブルチェックリストの開発

予測的妥当性と増分妥当性の検討

橋本剛 (静岡大学)

Keywords:大学生, 適応, ストレス

問題と目的
大学生活への適応や心身の健康を促進するために,大学生が経験しているトラブルや悩みごとを把握することは重要な課題である。しかし,大学生のライフイベントやストレッサーに関する既存のツールには,いずれも古いが故にネットトラブルなどの現代的要素が欠落していたり,項目数が多すぎて非実用的といった問題点がある。
そこで橋本(2014)は,それらの問題点を改善して,現代の大学生が経験するトラブルを簡便かつ網羅的に把握するツールとして,大学生用トラブルチェックリスト(TCL)を開発した。TCLは不適応指標と中程度の,パーソナリティと弱い関連を示し,一定の基準関連妥当性は確認された。
しかし,そこでは友人関係トラブルの経験率が過度に低いなど,文言に修正の余地がある可能性も示唆された。また,トラブル経験がその後の大学適応に及ぼす影響といった予測的妥当性や,既存尺度より相対的に有用かという増分妥当性についてはまだ検討されていない。そこで本研究では,これらについて検討することを目的とする。
方法
静岡県内の大学生を対象に,2014年5月と7月に短期縦断調査を実施した。両回の調査に参加した123名(男性33名,女性90名:1年生72名,2~3年生51名)のデータを有効回答とした。
本研究では以下の尺度を実施した。⑴大学生用トラブルチェックリスト:橋本(2014)による,12生活領域の最近1ヶ月間でのトラブル経験頻度を4件法で尋ねる尺度。先述の論点に基づいて,若干文言を修正した。⑵大学生用ライフイベントチェックリスト:丹波・小杉(2006)によるライフイベント尺度。⑶ストレス反応:鈴木他(1998)のSRS-18。⑷学校適応感:石田(2009)による学校適応感尺度を大学生向けに若干修正して使用した。なお,トラブルチェックリストとストレス反応は両回で,ライフイベントは第1回のみ,学校適応感は第2回のみ実施した。
結果と考察
トラブルチェックリストの回答傾向
TCLの各項目経験率を確認したところ(Figure 1),学業が「ややあった」「かなりあった」という回答率が両回とも40%以上と最も高く,次いで友人関係,居住環境,健康や生活の豊かさも20%以上と相対的に高かった。反社会的被害,ネット利用,教職員との関係は10%未満と少なかった。橋本(2014)と比較して友人関係の経験率が高く,これは文言修正によるものと推測される。
TCL全12項目の素点合計をTCL得点としたところ,第1回(M=19.3, SD=4.3)と第2回(M=20.2, SD=4.6)の相関係数はr=.68(p<.001)であった。
予測的妥当性と増分妥当性の検討
大学生用ライフイベントチェックリストの合計をLECL得点として,TCL得点との相関係数を算出したところ,r=.42(p<.001)と中程度の正の相関が示された。また,SRSや学校適応感といった適応指標に対して,TCLはLECLよりも全般的に高い関連を示した(Table 1)。
さらに,第2回SRSを基準変数として,第1回SRS,LECL,TCLの順に説明変数を投入した階層的重回帰分析では,LECLによる説明力増加は示されなかったが,TCLによる説明力の増加は有意であった(ΔR2=.03, p<.05)。この結果は,LECLよりTCLの方がストレス反応の予測力が高く,事前のストレス反応を考慮しても,TCLが増分妥当性を有していることを示している。