[PA055] 大学生における失恋によるストレスの強度と対処行動
キーワード:Broken love, Stressor, Coping
目的
青年期の対人関係においては,異性との愛情関係(恋愛)が重要な意味をもつ(戸田・松井,1985)。特に「失恋」という経験は平凡でありふれた経験であると同時に,当事者に強いショックを与え,ネガティブな心理的反応や情動反応を誘発する (飛田,1989;1997)。青年期におけるストレスフルな出来事は失恋以外にも多くのものがあるが(真舟他,2006),失恋がどの程度のストレッサーであるかは明らかではない。本研究では,失恋と他の出来事を比較し,失恋が大学生にとってどの程度のストレッサーであるかを調べ,加えて対処行動の違いについても検討することとした。
方法
対象者:女子大学生139名。平均年齢は19.95歳(SD=1.78,18-26歳)であった。
質問紙:以下の内容を含む質問紙を作成した。
⑴ 大学入学後に経験した状況・出来事
「生活パターンの大きな変化があった」,「自分の勉強,研究などが上手く進まない」,「自分の性格や能力,適性などについて考えるようになった」,「人間関係が上手くいかない」の4項目を原口他(1991)から用い,「経済状況が好ましくない」,「失恋した」の2項目を新たに加え,計6項目を使用した。これらに対して,経験が「ある」または「ない」のいずれかを選択させた。
⑵ 各状況・出来事のストレスの程度
各状況・出来事について,どの程度ストレスに感じたかを,「まったくストレスに感じなかった」(1点)から「非常にストレスに感じた」(7点)までの7段階評定を用いて回答を求めた。
⑶ 各状況・出来事の直後の行動
原口他(1991)のコーピング尺度から,「現在の状況を変えようと努力した」等の20項目を用意し,各状況・出来事が生じた直後(1週間以内),各行動をどの程度行ったかを「まったく行わなかった」(1点)から「よく行った」(4点)までの4段階評定を用いて回答を求めた。
結果と考察
大学入学後に経験した状況・出来事
「自分の性格や能力,適性などについて考えるようになった」(91.37%)や「生活パターンの大きな変化があった」(83.45%)については経験した者が多かったが,「失恋した」は31.65%であり,各状況・出来事の中で最も少なかった。
各状況・出来事のストレスの程度
「自分の勉強,研究などが上手く進まない」(M=5.62, SD=1.24),「人間関係が上手くいかない」(M=5.49, SD=1.61)では平均値が高かったが,「経済状況が好ましくない」(M=4.12, SD=1.54),「失恋した」(M=4.13, SD=2.34)では低かった(Figure 1)。
各状況・出来事の直後の行動
「失恋した」以外では,「どうしたらいいか考えた」が共通して高く,積極的な対処行動が全体的にとられていた。「失恋した」については,「自分の状況を誰かに話して聞いてもらった」,「時間が過ぎるのを待った」,「時間がたって対応できるようになるのを待つことにした」,「気を紛らわせるようなことをした」,「そのことについては考えないようにした」,「物事の明るい面を見ようとした」,「今の経験はためになると思うことにした」といった項目で平均値が高かった。すなわち,失恋の直後では,消極的な対処行動が行われていた。
以上より,失恋は他の状況・出来事よりもストレッサーの程度としては低いことが示されたが,個人差も大きいことが予測される。今後,失恋がどのような人にストレッサーとして強く感じられるのか,またどのような場合に強く感じられるのかをさらに検討することが必要と考えられる。
青年期の対人関係においては,異性との愛情関係(恋愛)が重要な意味をもつ(戸田・松井,1985)。特に「失恋」という経験は平凡でありふれた経験であると同時に,当事者に強いショックを与え,ネガティブな心理的反応や情動反応を誘発する (飛田,1989;1997)。青年期におけるストレスフルな出来事は失恋以外にも多くのものがあるが(真舟他,2006),失恋がどの程度のストレッサーであるかは明らかではない。本研究では,失恋と他の出来事を比較し,失恋が大学生にとってどの程度のストレッサーであるかを調べ,加えて対処行動の違いについても検討することとした。
方法
対象者:女子大学生139名。平均年齢は19.95歳(SD=1.78,18-26歳)であった。
質問紙:以下の内容を含む質問紙を作成した。
⑴ 大学入学後に経験した状況・出来事
「生活パターンの大きな変化があった」,「自分の勉強,研究などが上手く進まない」,「自分の性格や能力,適性などについて考えるようになった」,「人間関係が上手くいかない」の4項目を原口他(1991)から用い,「経済状況が好ましくない」,「失恋した」の2項目を新たに加え,計6項目を使用した。これらに対して,経験が「ある」または「ない」のいずれかを選択させた。
⑵ 各状況・出来事のストレスの程度
各状況・出来事について,どの程度ストレスに感じたかを,「まったくストレスに感じなかった」(1点)から「非常にストレスに感じた」(7点)までの7段階評定を用いて回答を求めた。
⑶ 各状況・出来事の直後の行動
原口他(1991)のコーピング尺度から,「現在の状況を変えようと努力した」等の20項目を用意し,各状況・出来事が生じた直後(1週間以内),各行動をどの程度行ったかを「まったく行わなかった」(1点)から「よく行った」(4点)までの4段階評定を用いて回答を求めた。
結果と考察
大学入学後に経験した状況・出来事
「自分の性格や能力,適性などについて考えるようになった」(91.37%)や「生活パターンの大きな変化があった」(83.45%)については経験した者が多かったが,「失恋した」は31.65%であり,各状況・出来事の中で最も少なかった。
各状況・出来事のストレスの程度
「自分の勉強,研究などが上手く進まない」(M=5.62, SD=1.24),「人間関係が上手くいかない」(M=5.49, SD=1.61)では平均値が高かったが,「経済状況が好ましくない」(M=4.12, SD=1.54),「失恋した」(M=4.13, SD=2.34)では低かった(Figure 1)。
各状況・出来事の直後の行動
「失恋した」以外では,「どうしたらいいか考えた」が共通して高く,積極的な対処行動が全体的にとられていた。「失恋した」については,「自分の状況を誰かに話して聞いてもらった」,「時間が過ぎるのを待った」,「時間がたって対応できるようになるのを待つことにした」,「気を紛らわせるようなことをした」,「そのことについては考えないようにした」,「物事の明るい面を見ようとした」,「今の経験はためになると思うことにした」といった項目で平均値が高かった。すなわち,失恋の直後では,消極的な対処行動が行われていた。
以上より,失恋は他の状況・出来事よりもストレッサーの程度としては低いことが示されたが,個人差も大きいことが予測される。今後,失恋がどのような人にストレッサーとして強く感じられるのか,またどのような場合に強く感じられるのかをさらに検討することが必要と考えられる。