[PA060] 幼児の自称詞の使用(2)
使用される自称詞の種類に着目した2001年と2013年の比較
キーワード:幼児, 自称詞, 12年間の比較
目 的
筆者は, 2001年にA市の公立幼稚園(2年保育)の11園の園児810名(男子413名,女子397名)の自称詞使用の調査を行い報告した。(小嶋2003, 2004,2005日教心)。そして,2013年に同様の調査を行い,使用される自称詞を「一人称(のみ)」「名前・愛称(のみ)」「一人称と名前・愛称の混合」「その他」に分類し, 2001年と2013年の比較を行い報告した(小嶋2014日教心)。本論では使用される自称詞の種類に着目して比較する。
方 法
調査対象者:A市公立幼稚園(2年保育)13園の園児647名(男子345名 女子302名)
調査期間:2013年12月 回収率:100%
調査方法:担任が把握している自称詞を記入する。
結 果
回収されたデータの内,日本語を話さない1名と自称詞を口にしない2名(内緘黙児1名)を除いた644名(男子343名,女子301名)のデータを分析した。
自称詞を複数使用する幼児がいるために,優先して使用する自称詞と使用される総自称詞に分けて分析した。使用する自称詞の種類の割合は,優先して使用する自称詞でも総数でもほぼ同様であったので,本論では使用される自称詞の総数での割合を男女別に表1,2と図1~4に示した。
2001年と2011年の女子学生の変化では,自称詞の複数使用の増加が認められている(小嶋2012日教心)ので,一人当たりの平均自称詞使用の数を調べ,併せて表1,2に示した。年長児は使用する自称詞が,少しだが,増加傾向にあった。
2001年と2013年で各種自称詞の使用の割合に差があるかχ2検定を行った結果を表3に示した。残差分析の結果の有意差は,図1~4内に*p<。05,**p<。001で示す。
2013年男子は,年中で「名前」の使用が増加,「愛称」の使用が減少し,年長で「ぼく」の使用が減少し,「おれ」の使用が増加している。
2013年女子は,年中年長ともに「わたし」の使用が減少し,「あたし」,「愛称」の使用が(加えて年長では「うち」の使用も)増加している。
考 察
「一人称(のみ)」「名前・愛称(のみ)」「一人称と名前・愛称の混合」「その他」に分類し, 2001年と2013年の比較を行った小嶋(2014)では,年中児は男女とも有意差が認められなかったが,今回は男女ともに有意差が認められた。つまり,同じ「一人称」使用や「名前・愛称」使用でもその中身が2001年と2013年では異なっていると理解できる。年長児の一人称使用において, 2001年は半数前後の子どもが「ぼく(65.3%)」「わたし(49.1%)」を使用しているが,2013年は男子「ぼく(36.0%)」「おれ(23.5%)」,女子「わたし(20.5%)」「あたし(7.0%)」「うち(うちら)(7.0%)」と異なる一人称も使っている。
以前より「ぼく」「わたし」使用の指導が減少し,各種自称詞についての社会的容認度が増していると考えられる。特に年中児は,自分が親や周りから呼ばれている呼び名をそのまま自称詞として使用している様子が伺えるため,親の子どもを呼ぶときの呼称調査も今後必要である。
筆者は, 2001年にA市の公立幼稚園(2年保育)の11園の園児810名(男子413名,女子397名)の自称詞使用の調査を行い報告した。(小嶋2003, 2004,2005日教心)。そして,2013年に同様の調査を行い,使用される自称詞を「一人称(のみ)」「名前・愛称(のみ)」「一人称と名前・愛称の混合」「その他」に分類し, 2001年と2013年の比較を行い報告した(小嶋2014日教心)。本論では使用される自称詞の種類に着目して比較する。
方 法
調査対象者:A市公立幼稚園(2年保育)13園の園児647名(男子345名 女子302名)
調査期間:2013年12月 回収率:100%
調査方法:担任が把握している自称詞を記入する。
結 果
回収されたデータの内,日本語を話さない1名と自称詞を口にしない2名(内緘黙児1名)を除いた644名(男子343名,女子301名)のデータを分析した。
自称詞を複数使用する幼児がいるために,優先して使用する自称詞と使用される総自称詞に分けて分析した。使用する自称詞の種類の割合は,優先して使用する自称詞でも総数でもほぼ同様であったので,本論では使用される自称詞の総数での割合を男女別に表1,2と図1~4に示した。
2001年と2011年の女子学生の変化では,自称詞の複数使用の増加が認められている(小嶋2012日教心)ので,一人当たりの平均自称詞使用の数を調べ,併せて表1,2に示した。年長児は使用する自称詞が,少しだが,増加傾向にあった。
2001年と2013年で各種自称詞の使用の割合に差があるかχ2検定を行った結果を表3に示した。残差分析の結果の有意差は,図1~4内に*p<。05,**p<。001で示す。
2013年男子は,年中で「名前」の使用が増加,「愛称」の使用が減少し,年長で「ぼく」の使用が減少し,「おれ」の使用が増加している。
2013年女子は,年中年長ともに「わたし」の使用が減少し,「あたし」,「愛称」の使用が(加えて年長では「うち」の使用も)増加している。
考 察
「一人称(のみ)」「名前・愛称(のみ)」「一人称と名前・愛称の混合」「その他」に分類し, 2001年と2013年の比較を行った小嶋(2014)では,年中児は男女とも有意差が認められなかったが,今回は男女ともに有意差が認められた。つまり,同じ「一人称」使用や「名前・愛称」使用でもその中身が2001年と2013年では異なっていると理解できる。年長児の一人称使用において, 2001年は半数前後の子どもが「ぼく(65.3%)」「わたし(49.1%)」を使用しているが,2013年は男子「ぼく(36.0%)」「おれ(23.5%)」,女子「わたし(20.5%)」「あたし(7.0%)」「うち(うちら)(7.0%)」と異なる一人称も使っている。
以前より「ぼく」「わたし」使用の指導が減少し,各種自称詞についての社会的容認度が増していると考えられる。特に年中児は,自分が親や周りから呼ばれている呼び名をそのまま自称詞として使用している様子が伺えるため,親の子どもを呼ぶときの呼称調査も今後必要である。