[PA061] 思春期の身体発育の心理的受容度と身体満足度
青年は身体発育をどのように受け止めているのか
Keywords:思春期, 心理的受容
【問題と目的】
思春期の始まりである身体発育の発現は,生殖可能性を示すとともに,青年に心理的動揺をもたらすものであると考えられてきたが,その様相に関する我が国の研究は少なく,知見の蓄積が求められている。そこで,本研究では思春期の身体発育の発現者における心理的受容度の現状と,心理的受容度と身体満足度との関連を検討することを目的とする。
【方 法】
調査対象:熊本県内の中学1年生436名(女子196名,男子240名),中学2年生426名(女子208名,男子218名),中学3年生412名(女子177名,男子235名),計1274名(女子581名,男子693名)を対象とした。
調査内容:
⑴思春期の身体発育:上長(2007)のうち,女子3項目(胸の発育,発毛,初経),男子3項目(声変わり,発毛,ひげ)の思春期の身体発育を測定した。
⑵思春期の身体発育に対する心理的受容感:齊藤(1985)の性的成熟の発現に対する心理的受容度尺度をもとに,思春期の身体発育の発現者に対して5段階評定で回答を求めた。
⑶身体満足度:上長(2007)の身体満足度に関する2項目を用い,5段階で回答を求めた。
【結果および考察】
はじめに,思春期の身体発育の発現者における心理的受容度を検討した(Table 1)。
女子においては,乳房の発達については,「別に何とも思わなかった」「大人になるうえで当たり前だと思った」という反応が多く,否定的な反応を示す中学生は少なかった。また,発毛や初経については否定的な反応を示す生徒が発毛で37.4%,初経で39.2%であり,肯定的な反応を示す生徒の割合よりを上回っていた。男子では,いずれの身体発育に対しても「別に何とも思わなかった」が半数以上であり,否定的な反応を示す生徒は,声変わり7.9%,発毛14.8%,ひげ18.6%であった。これらの結果は,齊藤(1985)や上長(2007)と類似したものであり,否定的な側面のみが強調されるものではなく,多様な反応があるということである。一方で,女子の初経や発毛においては4割近い者が否定的な反応を示しており,思春期に起こる身体発育への戸惑いもあることが示唆された。
次に,身体発育に対する心理的受容感と身体満足度の関連を検討するために,心理的受容度を「否定的反応」「無反応」「肯定的反応」とし,身体満足度を従属変数とする分散分析を行った。その結果,女子の「胸の発育F (2,434)=10.22,p<.01」「発毛F (2,424)=11.67,p<.01」「初経F (2,399)=10.392,p<.01」,男子の「声変わりF (2,426)=4.13,p<.05」「発毛F (2,414)=4.98,p<.01」「ひげF (2,367)=5.77,p<.01」において有意差が認められた。そこで,多重比較(LSD法,5%水準)を行ったところ,いずれの身体発育においても「否定的反応」<「無反応」「肯定的反応」であった。このことから,自己の身体に起こる変化を「否定的」に受け止めることが身体に対する評価の低さと結びつくことが示唆された。
思春期の始まりである身体発育の発現は,生殖可能性を示すとともに,青年に心理的動揺をもたらすものであると考えられてきたが,その様相に関する我が国の研究は少なく,知見の蓄積が求められている。そこで,本研究では思春期の身体発育の発現者における心理的受容度の現状と,心理的受容度と身体満足度との関連を検討することを目的とする。
【方 法】
調査対象:熊本県内の中学1年生436名(女子196名,男子240名),中学2年生426名(女子208名,男子218名),中学3年生412名(女子177名,男子235名),計1274名(女子581名,男子693名)を対象とした。
調査内容:
⑴思春期の身体発育:上長(2007)のうち,女子3項目(胸の発育,発毛,初経),男子3項目(声変わり,発毛,ひげ)の思春期の身体発育を測定した。
⑵思春期の身体発育に対する心理的受容感:齊藤(1985)の性的成熟の発現に対する心理的受容度尺度をもとに,思春期の身体発育の発現者に対して5段階評定で回答を求めた。
⑶身体満足度:上長(2007)の身体満足度に関する2項目を用い,5段階で回答を求めた。
【結果および考察】
はじめに,思春期の身体発育の発現者における心理的受容度を検討した(Table 1)。
女子においては,乳房の発達については,「別に何とも思わなかった」「大人になるうえで当たり前だと思った」という反応が多く,否定的な反応を示す中学生は少なかった。また,発毛や初経については否定的な反応を示す生徒が発毛で37.4%,初経で39.2%であり,肯定的な反応を示す生徒の割合よりを上回っていた。男子では,いずれの身体発育に対しても「別に何とも思わなかった」が半数以上であり,否定的な反応を示す生徒は,声変わり7.9%,発毛14.8%,ひげ18.6%であった。これらの結果は,齊藤(1985)や上長(2007)と類似したものであり,否定的な側面のみが強調されるものではなく,多様な反応があるということである。一方で,女子の初経や発毛においては4割近い者が否定的な反応を示しており,思春期に起こる身体発育への戸惑いもあることが示唆された。
次に,身体発育に対する心理的受容感と身体満足度の関連を検討するために,心理的受容度を「否定的反応」「無反応」「肯定的反応」とし,身体満足度を従属変数とする分散分析を行った。その結果,女子の「胸の発育F (2,434)=10.22,p<.01」「発毛F (2,424)=11.67,p<.01」「初経F (2,399)=10.392,p<.01」,男子の「声変わりF (2,426)=4.13,p<.05」「発毛F (2,414)=4.98,p<.01」「ひげF (2,367)=5.77,p<.01」において有意差が認められた。そこで,多重比較(LSD法,5%水準)を行ったところ,いずれの身体発育においても「否定的反応」<「無反応」「肯定的反応」であった。このことから,自己の身体に起こる変化を「否定的」に受け止めることが身体に対する評価の低さと結びつくことが示唆された。