[PA070] 保育士養成課程における乳幼児の発達理解に及ぼすグループ学習の効果
Keywords:保育士養成, 発達理解, グループ学習
問 題
保育士養成課程における心理学関連科目では,心理学の理論的知識を教授するだけではなく,より実践的な保育場面における子どもの発達や発達援助の理解を促すことが目的となっている。そのため,授業では他者の様々な考えを聞き,意見を交換することで自分の考えを相対視,客観視し,正しい発達観や保育観を形成することが必要になる。本研究では,保育士養成課程に在籍する学生を対象に,子どもの発達や発達援助の理解に学習者同士で行うグループ学習がどれほど有効かを検証することを目的とする。特に,グループ学習前の学生の理解度別の効果に焦点を当て検討する。
方 法
⑴対象者:保育士養成課程における「保育の心理学」の授業を受講している93名の大学1年生(男子11名,女子82名)⑵グループ構成:既に履修している心理学関連科目の学業成績を基に授業担当者が1グループ4人を目安にメンバーを調整した。⑶授業の展開:1回目の試行(グループ学習前);乳幼児の発達理解及び保育者の発達援助の理解を問う3つの課題に単独で解答(20分),グループ学習;グループを作り,課題内容についての協議,相互教授(20分)。2回目の試行(グループ学習後);1回目の試行と同じ課題に単独で解答(20分)⑷課題内容:[課題1]乳幼児の発達段階別の特徴を選択する課題,[課題2]3歳児同士のいざこざ場面の事例から子どもの発達段階の特徴と保育者の発達援助について読み取る課題,[課題3]保育者の発達援助を事例から読み取り,適切な発達援助を考える課題
結果と考察
1.グループ学習前後における課題別の得点比較
3つの課題それぞれにおけるグループ学習前後の得点をt検定で比較した。その結果,3つ全ての課題得点及び総合得点でグループ学習後の方がグループ学習前よりも有意に高かった。各課題のグループ学習前後の得点の平均値及び標準偏差とt検定の結果を表1に示す。
2.学生の理解度別におけるグループ学習前後の得点の比較
グループ学習前の得点を基に群分けした理解度別の3群とグループ学習の前後の課題得点(合計得点)の差を検討するために混合計画による分散分析を行った。その結果,有意な交互作用がみられた(F(2,89)=32.25, p<.001)。そこで,3群それぞれにおけるグループ学習前後の得点の単純主効果の検定を行った。その結果,理解度中群と理解度低群ではグループ学習前と比べてグループ学習後の得点が有意に高かった。一方,理解度高群ではグループ学習の前後で得点に有意な差はみられなかった。結果のグラフを図1に示す。
以上の結果より,本研究では乳幼児の発達や発達援助の理解を促すためには学生同士の教え合いや話し合いといったグループ学習が有効であり,この傾向はもともと理解度の低い学生に対して特に顕著であることが示された。
保育士養成課程における心理学関連科目では,心理学の理論的知識を教授するだけではなく,より実践的な保育場面における子どもの発達や発達援助の理解を促すことが目的となっている。そのため,授業では他者の様々な考えを聞き,意見を交換することで自分の考えを相対視,客観視し,正しい発達観や保育観を形成することが必要になる。本研究では,保育士養成課程に在籍する学生を対象に,子どもの発達や発達援助の理解に学習者同士で行うグループ学習がどれほど有効かを検証することを目的とする。特に,グループ学習前の学生の理解度別の効果に焦点を当て検討する。
方 法
⑴対象者:保育士養成課程における「保育の心理学」の授業を受講している93名の大学1年生(男子11名,女子82名)⑵グループ構成:既に履修している心理学関連科目の学業成績を基に授業担当者が1グループ4人を目安にメンバーを調整した。⑶授業の展開:1回目の試行(グループ学習前);乳幼児の発達理解及び保育者の発達援助の理解を問う3つの課題に単独で解答(20分),グループ学習;グループを作り,課題内容についての協議,相互教授(20分)。2回目の試行(グループ学習後);1回目の試行と同じ課題に単独で解答(20分)⑷課題内容:[課題1]乳幼児の発達段階別の特徴を選択する課題,[課題2]3歳児同士のいざこざ場面の事例から子どもの発達段階の特徴と保育者の発達援助について読み取る課題,[課題3]保育者の発達援助を事例から読み取り,適切な発達援助を考える課題
結果と考察
1.グループ学習前後における課題別の得点比較
3つの課題それぞれにおけるグループ学習前後の得点をt検定で比較した。その結果,3つ全ての課題得点及び総合得点でグループ学習後の方がグループ学習前よりも有意に高かった。各課題のグループ学習前後の得点の平均値及び標準偏差とt検定の結果を表1に示す。
2.学生の理解度別におけるグループ学習前後の得点の比較
グループ学習前の得点を基に群分けした理解度別の3群とグループ学習の前後の課題得点(合計得点)の差を検討するために混合計画による分散分析を行った。その結果,有意な交互作用がみられた(F(2,89)=32.25, p<.001)。そこで,3群それぞれにおけるグループ学習前後の得点の単純主効果の検定を行った。その結果,理解度中群と理解度低群ではグループ学習前と比べてグループ学習後の得点が有意に高かった。一方,理解度高群ではグループ学習の前後で得点に有意な差はみられなかった。結果のグラフを図1に示す。
以上の結果より,本研究では乳幼児の発達や発達援助の理解を促すためには学生同士の教え合いや話し合いといったグループ学習が有効であり,この傾向はもともと理解度の低い学生に対して特に顕著であることが示された。