日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA071] 遡及的自我同一性地位面接の妥当性を検討する試み

尺度得点と協力者の社会適応状態からの検討

眞鍋一水 (京都教育大学大学院)

キーワード:アイデンティティ, 同一性地位面接, 青年期

Ⅰ.問題と目的
Erikson(1950)のアイデンティティを捉える方法に,Marcia(1966)による自我同一性地位面接が挙げる事ができる。これは職業選択や価値観について,危機と傾倒を経ているかを確認し,4つの自我同一性地位(Status)(同一性達成,モラトリアム,フォークロージャー,同一性拡散)に類型化するものである。その後の追跡調査(Marica,1977)で,自我同一性地位は変化する事が明らかになった。その変化は信頼性の低さではなく,自我同一性の発達として解釈されている(岡本,1997)。眞鍋(2013,2014)は,自我同一性地位は一時の状態を捉えるものだが,より人格的な特性を捉える為に過去と現在の自我同一性地位の変化の経路を求める遡及的な方法(REISI)を考案した。再検査法を用いた信頼性の検討の結果,現状がモラトリアムの場合は過去の語りも不安定になり信頼性に検討の余地が生まれるが,それ以外の場合は信頼性に問題はない事が示唆された。本研究では,質問紙の得点と協力者の社会適応状態の報告から妥当性を検討する事を目的とする。
Ⅱ.方法
調査:遡及的自我同一性地位面接(眞鍋,2013)を実施した。time1は2012年8月から11月,time 2は2013年10月,time3は2015年2月に行われた。質問紙:中西・佐方(1993)のEPSIを用いた。協力者:3名の男女であった。女性2名は大学院生,男性1名は会社員であった。倫理的配慮:プライバシーを確保し,面接への同意を署名で得た。結果の整理:面接は逐語化し,協同評定者と別に自我同一性地位を評定した。
Ⅲ.結果
自我同一性地位の評定者間一致率は80%であった。一致しなかったEISは協議し,それでも一致しない場合は筆者の評定を採用した。各協力者のEISの移行をTable.1に示す。尺度得点を卒後2年(現在)の行に記した。
Ⅳ.考察
移行経路が流動的であるほど尺度得点は高かった。またCさんは過去に職場での過労から入院されたが,その事を「気づいたら病院のベッドで寝てた」,「(生活を)見直すきっかけになった」と振り返っておられた。また。Aさんは過去に心理士になるかどうか悩んだ事を「できるかなあ,という不安は常にある」「勉強すればなんとかなると思う」と振り返っておられた。どちらも丁度time2の調査時期であり,time2時の移行経路との関係からも一定の妥当性が示された。以上の結果からREISIの妥当性が示唆されたと考えられる。今後はより多くの協力者の尺度得点との統計的検定が必要だと考えられる。