[PB001] 中学生における自己制御を行動選択基準から捉える試み
Keywords:中学生, 自己制御, 行動選択基準
【問題と目的】
自己制御の捉え方として,これまで「主張―抑制」(柏木,1988),「個人的―社会的」(塚本,2010),「調和型―改良型」(Rosenbaum,1989),「行動―認知」(Rothbart & Rueda,2005),「内的基準―外的基準」(庄司,1993)といった捉え方が用いられてきた。そのうち,「内的基準―外的基準」という行動選択基準から自己制御を捉えた検討は庄司(1993)の自己制御行動の理由を問う方法しか行われていない。そこで本研究では,「内的基準」は主体性と,「外的基準」は被影響性と関連する自己制御であると定義し,社会的な規範を内面化し始める段階である中学生(山岸,1999)を対象に,行動選択基準の視点から自己制御行動を捉えることを目的とする。
【方 法】
調査時期・対象:2013年8月から12月にかけて,中学生431名(男子184名,女子180名,1年生97名,2年生122名,3年生145名)を対象に質問紙調査を行い,回答に欠損のない364名を分析対象とした(有効回答率:84.45%)。回答は任意で求めた。
質問紙の構成: 質問紙は性別と学年に加えて,中学生用自己制御行動尺度(塚本,2010),主体性・被影響性尺度(岩城,2011)を用いた。
【結 果】
主体性,被影響性と関連のある自己制御について検討するため,性別,学年,主体性または被影響性の一方を統制した上で,自己制御と主体性・被影響性の偏相関係数を算出した。その結果,「個人的促進」,「個人的抑制」,「対人的抑制」と「主体性」との間に正の相関が示され(partial r= .55, .32, .53 ),「対人的促進」と「被影響性」との間に負の相関が示された(partial r=-.40)。次に,「主体性」と関連が示された自己制御を「内的基準による自己制御」,「被影響性」と関連が示された自己制御を「外的基準による自己制御」とするモデル(Figure1)を生成し,共分散構造分析を行った。適合度の指標はいずれも充分な値であり,「内的基準による自己制御」と「外的基準による自己制御」との間に負の相関が示された(r =-.49, p<.001)。なお,性別ごと,学年ごとにパス係数と共分散に等値制約をかけたモデルとかけないモデルを比較したところ,いずれも等値制約をかけたモデルの方が良好な適合度であった(等値制約なし:AIC=89,38 / 137.05,等値制約あり:AIC=84.01 / 122.56。※性別 / 学年)。
【考 察】
主体性や被影響性と自己制御との関連を基に,行動選択基準の視点から自己制御を捉える適合度の高いモデルが示された。このモデルは性別や学年による違いがないと仮定した方が良好な適合度であったため,中学生全般に当てはまるモデルであると言えよう。さらに,「内的基準による自己制御」と「外的基準による自己制御」に中程度の関連が示されたことから,中学生という発達段階において行動選択基準が明確に分化していないと推察される。
自己制御の捉え方として,これまで「主張―抑制」(柏木,1988),「個人的―社会的」(塚本,2010),「調和型―改良型」(Rosenbaum,1989),「行動―認知」(Rothbart & Rueda,2005),「内的基準―外的基準」(庄司,1993)といった捉え方が用いられてきた。そのうち,「内的基準―外的基準」という行動選択基準から自己制御を捉えた検討は庄司(1993)の自己制御行動の理由を問う方法しか行われていない。そこで本研究では,「内的基準」は主体性と,「外的基準」は被影響性と関連する自己制御であると定義し,社会的な規範を内面化し始める段階である中学生(山岸,1999)を対象に,行動選択基準の視点から自己制御行動を捉えることを目的とする。
【方 法】
調査時期・対象:2013年8月から12月にかけて,中学生431名(男子184名,女子180名,1年生97名,2年生122名,3年生145名)を対象に質問紙調査を行い,回答に欠損のない364名を分析対象とした(有効回答率:84.45%)。回答は任意で求めた。
質問紙の構成: 質問紙は性別と学年に加えて,中学生用自己制御行動尺度(塚本,2010),主体性・被影響性尺度(岩城,2011)を用いた。
【結 果】
主体性,被影響性と関連のある自己制御について検討するため,性別,学年,主体性または被影響性の一方を統制した上で,自己制御と主体性・被影響性の偏相関係数を算出した。その結果,「個人的促進」,「個人的抑制」,「対人的抑制」と「主体性」との間に正の相関が示され(partial r= .55, .32, .53 ),「対人的促進」と「被影響性」との間に負の相関が示された(partial r=-.40)。次に,「主体性」と関連が示された自己制御を「内的基準による自己制御」,「被影響性」と関連が示された自己制御を「外的基準による自己制御」とするモデル(Figure1)を生成し,共分散構造分析を行った。適合度の指標はいずれも充分な値であり,「内的基準による自己制御」と「外的基準による自己制御」との間に負の相関が示された(r =-.49, p<.001)。なお,性別ごと,学年ごとにパス係数と共分散に等値制約をかけたモデルとかけないモデルを比較したところ,いずれも等値制約をかけたモデルの方が良好な適合度であった(等値制約なし:AIC=89,38 / 137.05,等値制約あり:AIC=84.01 / 122.56。※性別 / 学年)。
【考 察】
主体性や被影響性と自己制御との関連を基に,行動選択基準の視点から自己制御を捉える適合度の高いモデルが示された。このモデルは性別や学年による違いがないと仮定した方が良好な適合度であったため,中学生全般に当てはまるモデルであると言えよう。さらに,「内的基準による自己制御」と「外的基準による自己制御」に中程度の関連が示されたことから,中学生という発達段階において行動選択基準が明確に分化していないと推察される。