The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB006] 小学校における友人サポート,学級機能と学級適応の関係

久米瑛莉乃1, 田中宏二2 (1.広島文化学園大学大学院, 2.広島文化学園大学)

Keywords:友人サポート, 学級機能, 学級適応

【目 的】
本研究の目的は,友人からのソーシャルサポート受領と学級機能が学級満足度やいじめ加害傾向と関連があることを個人単位と学級集団単位で検証することである。
本研究の分析枠組みをFigure1に示す。
【方 法】
⑴ 調査対象者と調査時期 本調査はH市内の公立小学校2校の第5・6年生,合計242名(男134名,女108名),10学級を対象に2015年1月上旬~1月中旬にかけて実施した。
⑵ 調査項目 ①級友からのサポート受領尺度:細田・田嶌(2009)の中学生を対象としたSS尺度に一部修正を加え,13項目で構成し,4件法で評定。②学級機能尺度:松崎(2006)の小学生を対象とした,学級機能尺度,20項目を4件法で評定。③学級満足度尺度:江村・大久保(2012)の小学生を対象とした学級満足度尺度に一部修正を加え,13項目で構成し,4件法で評定。④いじめ加害傾向尺度:大西・吉田(2010)が中学生を対象としたいじめ加害傾向尺度に一部修正を加え,4項目で構成し,4件法で評定。
⑶ 分析方法 個人単位の分析は,男女別のピアソンの積率相関値を基に分析する。学級集団単位の分析は,情緒的サポートの高・低学級別に学級機能,学級満足度及びいじめ加害傾向の下位尺度毎の比較を行う。さらに,集団凝集性の高・低学級別に,学級満足度といじめ加害傾向の下位尺度毎の比較を行う。
【結果と考察】
⑴ 個人単位の分析
1)SS受領と学級機能の関係 男女全体で「共行動サポート」は,0.316~ 0.577(p<.01)の範囲で,「道具的サポート」は,0.288~0.524(p<.01)の範囲で,「情緒的サポート」は,0.361~0.599(p<.01)の範囲で学級機能の3下位尺度と中程度の相関がみられた。2)SS受領と学級満足度の関係 「共行動サポート」は,0.326~0.574(p<.01)の範囲で,「道具的サポート」は,0.339~0.540(p<.01)の範囲で,「情緒的サポート」は,0.508~0.653(p<.01)の範囲で学級満足度の3下位尺度と中程度の相関がみられた。3)SS受領といじめ加害傾向の関係 女子では,「共行動サポート」は,-0.271~-0.267(p<.01)の範囲でいじめ加害傾向の両下位尺度と低い負の相関がみられ,「道具的サポート」及び「情緒的サポート」は「直接的いじめ加害傾向」(r=-0.193,p<.05,r=-0.372,p<.01)と低い負の相関がみられた。男子ではいずれも有意な相関がみられなかった。4)学級機能と学級満足度 男女全体で「教師のかかわり」機能は, 0.329~0.659(p<.01)の範囲で,「所属感・有能感」機能は,0.490~0.686(p<.01)の範囲で,「集団凝集性」機能は,0.532~0.785(p<.01)の範囲で学級満足度の3下位尺度と高い相関がみられた。5)学級機能といじめ加害傾向 女子では,「教師のかかわり」は,-0.282~-0.264(p<.01)の範囲で,「所属感・有能感」は,-0.308~-0.264(p<.01)の範囲で,「集団凝集性」は,-0.320~-0.308(p<.01)の範囲でいじめ加害傾向の両下位尺度と低い負の相関がみられた。一方,男子では,「教師のかかわり」及び「所属感・有能感」は,「直接的いじめ加害傾向」(r=-0.232,p<.01,r=-0.217,p<.01)と低い負の相関がみられた。「集団凝集性」は,-0.216~-0.203(p<.01)の範囲でいじめ加害傾向の両下位尺度と低い負の相関がみられた。
したがって,個人単位では男女とも友人サポートは学級機能及び学級満足度にポジティブな相関があり,直接的ないじめ加害傾向には女子においてのみポジティブな関連が示された。また,学級機能は男子における直接的いじめ加害傾向に,女子における直接的いじめ加害傾向と関係性いじめ加害傾向の両方にポジティブな関連が示された。
よって,いじめ加害傾向は,友人サポートに比べ,学級機能と関連が高いことが示された。
⑵ 学級集団単位の分析
いじめ加害傾向との関連を除き,個人の場合と同様の結果がみられた。
今後の課題として,学級単位の分析に耐え得る程度に,調査対象とする学級数を増やし,更なる検討が必要であると考える。