[PB008] いじめ場面における傍観者の行動を規定する要因
個人特性を指標とした検討
キーワード:いじめ, 傍観者, 児童生徒
【問題と目的】
ここ数年いじめを起因とする児童生徒の痛ましい事件が後を絶たず,いじめを予防する取り組みは学校現場だけでなく家庭や地域,社会をも巻き込んだ重要な課題となっている。欧米における最近の研究から,いじめの加害者と被害者という二者関係の中だけでいじめが起きるのではなく,その二者とその二者を取り巻く環境との相互作用の中でいじめが引き起こされる可能性について明らかになってきた(Salmivalli, Peets, & Hodges, 2014)。また,いじめ予防に関するメタ分析研究から,いじめ行動が起きる場面での傍観者に焦点を当てた介入がいじめ行動の抑制に効果的であることが示唆された(Polanin, Espelage, & Pigott, 2012)。以上により,本研究ではいじめ場面における傍観者の行動に注目し,傍観者の行動を規定する要因について実証的に検討することを目的とする。
【方 法】
調査の対象および時期 小学4年生~中学3年生を対象に2014年11~12月に実施。
使用尺度 ⑴傍観者行動:Pozzoli & Gini (2010)から新たに作成した8項目(4件法) ⑵自尊感情:西野(2009)で用いた5項目(4件法)⑶ピアプレッシャー:Steinberg & Monahan (2007)から新たに作成した10項目(4件法 ⑷道徳不活性:Bandura, Barbaranelli, Caprara, & Pastorelli (1996)から新たに作成した10項目(3件法) ⑸共感性:鈴木・木野(2008)から10項目(5件法)
【結果と考察】
基礎統計量 新たに作成した各尺度について探索的因子分析を行った結果,傍観者行動について2因子(傍観行動3項目α=.71,仲裁行動4項目α=.82),ピアプレッシャー1因子(8項目α=.77),道徳不活性1因子(10項目α=.73),共感性2因子(視点取得4項目α=.84,共感的関心3項目α=.81)を得た。自尊感情尺度について確認的因子分析の結果,1因子構造(5項目α=.88)を確認した。各因子について学校段階と性による差の検定を行ったところ,仲裁行動,自尊感情,道徳不活性で学校段階による主効果がみられ,自尊感情,道徳不活性,視点取得,共感的関心で性の主効果が確認された。さらに仲裁行動と自尊感情では交互作用が示され,仲裁行動について中学生では男子の得点が有意に高く,女子では小学生の得点が有意に高いことが確認された。自尊感情について小学生で男女の得点に有意差はなく,中学生で男子の得点が女子より有意に高いことが示され,また,男女ともに中学生より小学生の得点が有意に高いことも確認された。
傍観行動を規定する要因 各因子の相関について学校段階別に分析した結果,傍観行動に対して小中学生ともにピアプレッシャーと道徳不活性が正の有意な相関,共感的関心が負の有意な相関を示し,また,小学生のみ自尊感情が負の有意な相関を示した。仲裁行動に対して小中学生ともに自尊感情,視点取得,共感的関心が正の有意な相関を示し,さらに小学生のみピアプレッシャーも有意な正の相関を示した。以上のことから,小中学生ともに個人の自尊感情や共感性を高めることでいじめの仲裁行動を促進する可能性が示唆されたとともに道徳意識の活性化についてあらためて考える必要性も併せて示されたといえよう。
ここ数年いじめを起因とする児童生徒の痛ましい事件が後を絶たず,いじめを予防する取り組みは学校現場だけでなく家庭や地域,社会をも巻き込んだ重要な課題となっている。欧米における最近の研究から,いじめの加害者と被害者という二者関係の中だけでいじめが起きるのではなく,その二者とその二者を取り巻く環境との相互作用の中でいじめが引き起こされる可能性について明らかになってきた(Salmivalli, Peets, & Hodges, 2014)。また,いじめ予防に関するメタ分析研究から,いじめ行動が起きる場面での傍観者に焦点を当てた介入がいじめ行動の抑制に効果的であることが示唆された(Polanin, Espelage, & Pigott, 2012)。以上により,本研究ではいじめ場面における傍観者の行動に注目し,傍観者の行動を規定する要因について実証的に検討することを目的とする。
【方 法】
調査の対象および時期 小学4年生~中学3年生を対象に2014年11~12月に実施。
使用尺度 ⑴傍観者行動:Pozzoli & Gini (2010)から新たに作成した8項目(4件法) ⑵自尊感情:西野(2009)で用いた5項目(4件法)⑶ピアプレッシャー:Steinberg & Monahan (2007)から新たに作成した10項目(4件法 ⑷道徳不活性:Bandura, Barbaranelli, Caprara, & Pastorelli (1996)から新たに作成した10項目(3件法) ⑸共感性:鈴木・木野(2008)から10項目(5件法)
【結果と考察】
基礎統計量 新たに作成した各尺度について探索的因子分析を行った結果,傍観者行動について2因子(傍観行動3項目α=.71,仲裁行動4項目α=.82),ピアプレッシャー1因子(8項目α=.77),道徳不活性1因子(10項目α=.73),共感性2因子(視点取得4項目α=.84,共感的関心3項目α=.81)を得た。自尊感情尺度について確認的因子分析の結果,1因子構造(5項目α=.88)を確認した。各因子について学校段階と性による差の検定を行ったところ,仲裁行動,自尊感情,道徳不活性で学校段階による主効果がみられ,自尊感情,道徳不活性,視点取得,共感的関心で性の主効果が確認された。さらに仲裁行動と自尊感情では交互作用が示され,仲裁行動について中学生では男子の得点が有意に高く,女子では小学生の得点が有意に高いことが確認された。自尊感情について小学生で男女の得点に有意差はなく,中学生で男子の得点が女子より有意に高いことが示され,また,男女ともに中学生より小学生の得点が有意に高いことも確認された。
傍観行動を規定する要因 各因子の相関について学校段階別に分析した結果,傍観行動に対して小中学生ともにピアプレッシャーと道徳不活性が正の有意な相関,共感的関心が負の有意な相関を示し,また,小学生のみ自尊感情が負の有意な相関を示した。仲裁行動に対して小中学生ともに自尊感情,視点取得,共感的関心が正の有意な相関を示し,さらに小学生のみピアプレッシャーも有意な正の相関を示した。以上のことから,小中学生ともに個人の自尊感情や共感性を高めることでいじめの仲裁行動を促進する可能性が示唆されたとともに道徳意識の活性化についてあらためて考える必要性も併せて示されたといえよう。