The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB013] コラージュ療法を用いた心の教育の効果

藤井義久 (岩手大学)

Keywords:コラージュ療法, 心の教育, 児童

1.目的
コラ-ジュ療法は,芸術療法の1つとして主に臨床場面において主にトラウマなど何らかの問題を抱えているクライエントに対して実施されることが多く,一般の集団を対象としたコラ-ジュ療法はまだあまり行われていない状況にある。そこで,予防・開発的教育相談活動の視点から,児童を対象にして,コラージュ療法を用いた心の教育を試み,その心理的効果について検討することにした。
2.方法
被験者 公立小学校に通う児童(4年~6年),計135名(男子64名,女子71名)
手続き まず授業前に「児童状況調査」と「小学生用ストレス反応尺度」を配布し,回答を求めた。その後,各クラスごとに,1コマ45分のコラージュを用いた心の授業を同一の形で行った。授業ではコラージュ制作の他,「コラージュふりかえりシート」による記述調査を行った。授業後には,再度「小学生用ストレス反応尺度」を配布し,回答を求めた。なお倫理的配慮から,「自分の回答が他の人に漏れる心配のないこと」,「学校の成績には全く関係ないこと」などを,口頭及び文書によって対象者に伝えた。
材料 ①児童状況調査:「学校嫌いの有無」,「勉強嫌いの有無」,「図画工作嫌いの有無」,「学校での悩みの有無」,「家庭での悩みの有無」,「会話嫌いの有無」,「発表の不得意の有無」という7つの質問から成り,それぞれ4件法で回答を求めた。
②小学生版ストレス反応尺度:嶋田ら(1994)が開発した4つの下位尺度(身体反応,抑うつ・不安感情,不機嫌・怒り感情,無気力),計20項目を用いた。なお,回答方法は,4件法である。
③コラージュふりかえりシート:「コラージュ制作時の気分状態と理由」,「コラージュの印象評定とその理由」,「友達のコラージュを見ての感想」,「授業の感想」という質問から成り,「コラージュの印象評定」のみ4件法で,その他は自由記述方式で回答を求めた。
3.結果と考察
①心の授業前後のストレス反応得点の変化 心の授業前後のストレス反応得点の変化に基づき,コラージュ療法を用いた心の授業の効果について検討した。対応のあるt検定を行った結果,男女とも,Table 1の通り,ストレス反応得点が男女とも,授業後,有意に低下していることがわかった。さらに「小学生版ストレス反応尺度」のすべての下位尺度においても同様に,授業後,ストレス反応得点が有意に低下していることがわかった。
これらのことから,コラージュ療法を用いた心の授業は,児童のストレス症状を低減させる効果があると言える。
②心の授業前後の悩み傾向の変化
ax 個の特性に応じて心の授業の効果がどのように異なるか検討するために,児童状況調査によって対象者を2群に分け,それぞれの群ごとにストレス反応得点の変化について検討した。分散分析の結果,「学校嫌い」,「学校での悩み」,「家庭での悩み」においてのみストレス反応得点が有意に低下していることがわかった。このことから,コラージュ療法を用いた心の授業は,特に学校や家庭において悩みを抱えている児童にとって効果が高いと考えられる。従って,こうした心の授業は,児童の問題行動を未然に予防していくために極めて有効であると言えよう。