[PB014] メタ認知と学業有能感および学業成績の関係
理学療法士を目指す学生を対象とした検討
キーワード:メタ認知, 有能感, 学業成績
問題と目的
高齢化社会が進み社会保障が大きな問題となるなか,質の高い理学療法士を養成することは喫緊の課題である。しかしながら養成課程において学力面での問題を抱える学生も少なくなく,学業不振者に対する学習支援は養成校の大きな課題となっている。
学力を考えるとき,Roebers, Cimeli, Rothlisberge, & Neuenschwander(2012)は自己概念,メタ認知および国語成績の関連の検討で,自己概念とメタ認知(コントロールとモニタリング)間には相互に関連がみられ,コントロールのみが国語成績を予測することを示し,メタ認知の中でも学業成績に結びつくものとそうでないものがある可能性が示唆された。
そこで本研究では,理学療法士を目指す学生を対象にメタ認知の構成要素としてあげられるメタ認知的知識とメタ認知的活動(モニタリングとコントロール)の3つの因子と自己概念の一側面である学業有能感および学業成績の関係を検討することを目的とした。
方 法
理学療法学科3年生38名(男性23名,女性15名;平均年齢21.4歳,SD3.0歳)を対象として,2014年7月に質問紙調査,8月に筆記試験を実施。
使用尺度 成人用メタ認知尺度(阿部・井田,2010)28項目(6件法)と学業有能感尺度(Marsh, 1992を参考に新たに作成)6項目(6件法)。
学業成績 理学療法士国家試験科目のうち未履修の科目を除いて作成した多肢選択式問題160問(190点満点)。
結果と考察
基礎統計量
成人用メタ認知尺度 先行研究の知見に従い「モニタリング」「コントロール」「知識」の3因子とし各項目の合計を各因子得点とした。α係数はそれぞれ.74,.74,.73であった。
学業有能感尺度 主成分分析を行い,すべての項目が第1成分に対し .60以上の負荷量を示したため項目の合計を学業有能感得点とした。α係数は .90であった。
因子間相関
メタ認知,学業有能感および学業成績の相関と平均およびSDをTable 1に示す。学業有能感とモニタリング,学業有能感と知識および学業有能感と学業成績との間に正の相関が見られたが,メタ認知の各因子と学業成績の間に相関はみられず,メタ認知が学業成績を予測するというRoebers et al(2012)の報告とは異なる結果となった。
これは,Roebers et al(2012)の対象者が小学1,2年生であるのに対し,本研究の対象者は成人であり,これまでの社会経験や学習経験の中でメタ認知能力の差をうめる他の学習方略を用いることが学力に反映されている可能性が考えられる。
今回は相関研究に基づく検討であったが,今後は縦断データを用いることにより因果の流れの中で,メタ認知と学業有能感および学業成績がどのように関連しているのかを確認したい。
高齢化社会が進み社会保障が大きな問題となるなか,質の高い理学療法士を養成することは喫緊の課題である。しかしながら養成課程において学力面での問題を抱える学生も少なくなく,学業不振者に対する学習支援は養成校の大きな課題となっている。
学力を考えるとき,Roebers, Cimeli, Rothlisberge, & Neuenschwander(2012)は自己概念,メタ認知および国語成績の関連の検討で,自己概念とメタ認知(コントロールとモニタリング)間には相互に関連がみられ,コントロールのみが国語成績を予測することを示し,メタ認知の中でも学業成績に結びつくものとそうでないものがある可能性が示唆された。
そこで本研究では,理学療法士を目指す学生を対象にメタ認知の構成要素としてあげられるメタ認知的知識とメタ認知的活動(モニタリングとコントロール)の3つの因子と自己概念の一側面である学業有能感および学業成績の関係を検討することを目的とした。
方 法
理学療法学科3年生38名(男性23名,女性15名;平均年齢21.4歳,SD3.0歳)を対象として,2014年7月に質問紙調査,8月に筆記試験を実施。
使用尺度 成人用メタ認知尺度(阿部・井田,2010)28項目(6件法)と学業有能感尺度(Marsh, 1992を参考に新たに作成)6項目(6件法)。
学業成績 理学療法士国家試験科目のうち未履修の科目を除いて作成した多肢選択式問題160問(190点満点)。
結果と考察
基礎統計量
成人用メタ認知尺度 先行研究の知見に従い「モニタリング」「コントロール」「知識」の3因子とし各項目の合計を各因子得点とした。α係数はそれぞれ.74,.74,.73であった。
学業有能感尺度 主成分分析を行い,すべての項目が第1成分に対し .60以上の負荷量を示したため項目の合計を学業有能感得点とした。α係数は .90であった。
因子間相関
メタ認知,学業有能感および学業成績の相関と平均およびSDをTable 1に示す。学業有能感とモニタリング,学業有能感と知識および学業有能感と学業成績との間に正の相関が見られたが,メタ認知の各因子と学業成績の間に相関はみられず,メタ認知が学業成績を予測するというRoebers et al(2012)の報告とは異なる結果となった。
これは,Roebers et al(2012)の対象者が小学1,2年生であるのに対し,本研究の対象者は成人であり,これまでの社会経験や学習経験の中でメタ認知能力の差をうめる他の学習方略を用いることが学力に反映されている可能性が考えられる。
今回は相関研究に基づく検討であったが,今後は縦断データを用いることにより因果の流れの中で,メタ認知と学業有能感および学業成績がどのように関連しているのかを確認したい。