The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB016] 社会的な学習環境の分析(2)

学生の動機づけを高める学習環境デザイン

榎加代子1, 有元典文2 (1.横浜国立大学大学院, 2.横浜国立大学)

Keywords:学習環境, 動機づけ, 社会的な学習

1.問題と目的
看護教育に携わる教員は,臨床から教育現場において授業をする立場に立った時,実践に活きる知識・技術をどのように学生に教えれば良いか戸惑う者が多い(藤岡1999)。特に母性看護学という教科は,妊娠・出産経験のない若い学生達にとってはイメージしにくく,覚えなければならない語句や数字が多いと敬遠されがちな教科である。
堀(1999)は,思いつきの授業や教科書を読むだけの授業では,学生の学習意欲を引き出すことはできないと述べている。意味の分からない言葉を一方的に講義されることは学習意欲が低下すると共に,実践で役立つ知識の習得に悪影響となる。
学生達が(1)学習内容をイメージしやすい授業構成と教材の工夫,そして(2)学生との関わり方の工夫することで,魅力的で学習意欲が促進される授業づくりができるのではないかと考える。
本研究は,学生達の授業評価を参考にし,学習意欲を引き出す学習環境デザインを検討することを目的とする。
2.方法
A県内の看護学生2年生37名に対し,平成24年9月~11月にかけて15時間の母性看護学の授業を行った。授業においては,分娩経過や新生児の観察方法,授乳の方法等,DVDを視聴後に説明を加える構成とした。
中でも授乳方法の授業の際は,学生達に教員の作成した手作りの乳房模型を装着した授乳方法の体験を行ってもらった。授乳困難を生じやすい硬めの乳頭を柔軟にするためのマッサージ方法を説明時,学生からの「硬さがイメージしにくい」との発言を受け,硬度の異なる模型を作成した。
また,妊娠のメカニズムについて,教員の手作りの子宮模型を用いて,教員とともに学生が教壇に立ち,説明する授業展開とした。
最終授業終了後に,受講した学生に対して無記名で11の授業評価項目について5件法で回答を求めた。採点は5~1点で,点数が高いほど内容が良いことを示す。また,自由記載欄を設け記載を求めた。
3.結果と考察
36名から授業評価アンケートの提出があり,回収率は97.3%であった。
授業評価アンケート結果(表1)に示す通り,教師の熱意を感じた項目,学生の質問や討議の時間を設けていた項目,授業への興味・関心がもてた項目の得点が高かった。
自由記載の中に,「授業のたびに教材やビデオがあり,ビデオの後の説明がとても分かりやすかった。」との記述があった。妊娠・出産経験のない若い学生達にとってイメージできることが,授業への興味・関心が持てる第一歩となる。更に,ビデオ視聴後に学生の反応を見ながら解説を加えることで内容の理解が深まり,知識の定着につながる。
また,「小道具があり面白く,印象に残った」との記述より,単に一方的に授業を聞くだけでなく,道具を活用しながら活動をすることで,より活きた授業となる。手作りの教材は学生にとって教員の熱意を感じ,学生達からの意見を基に教材を改良する。そのやり取りは,教員―学生間の信頼関係を深め,相互に学習意欲を高め合う刺激になるのではないだろうか。そして,その教材を用いて学生が教壇に立ち説明することで,学生と教員が一体となり,授業を創り上げているという実感をともに持つことができる。
堀(1999)は,講義は教材を仲立ちにしながら,教師と学生の協同作業でつくっていくものであると述べている。学生の学習意欲を引き出す授業はどうあるべきか。今後は,授業前後の比較及び母性看護学実習への効果など,更に詳細な調査を行い,より良い学習環境デザインを考えていきたい。