[PB025] ルーブリック評価における教育効果とその妥当性の検討II
保護者と先生評価における評価方法の信頼性
Keywords:ルーブリック, 教育効果, アクティブ・ラーニング
問題と目的
学習者の主体的な活動を中心とするアクティブ・ラーニングの導入が進められている。そのような学習における評価法の一つとして,ルーブリック評価をあげることができる(松下, 2012, 2014)。
加藤・藤田・鈴木・井手(2014)は,小学生対象のアフタースクールにおける探究型学習プログラムについて,保護者による,プログラム実施前後の子どもの日常活動のルーブリック評価と,プログラム実施時の先生による評価の相関から妥当性を検討したが,評価の信頼性については未検討であった。そこで本研究では,複数回のプログラムにおけるルーブリック評価項目を用いて,評価方法の信頼性について検討することを目的とする。全4回の保護者によるプログラム実施前後の事前・事後評価,および先生によるプログラム中の評価項目のうち,それぞれ,“選択行動”および“理由導出”の活動を評価する評定値を各回から算出し,評定の信頼性について検討した。
方 法
調査対象者 小学生低学年13名とその保護者。このうち,保護者による評価は,すべての項目に完全に回答した7名を,先生評価は評価可能であった11名を分析対象とした。
プログラムの概要 全4回の授業で構成される。ピアジェの保存の概念をベースにした課題を設定し,第1回から第3回にかけて6種類の課題に取り組み,第4回で,第3回目の課題についての発表を行った。提示された課題に対して,言葉で論理的に理由を述べられるようになることを目的とした。
ルーブリック評価 各回の学習活動で評価される観点(図1)について,プログラムが目標としている状態から初期状態の5段階で評価するように設定された。保護者による子どもの事前・事後評価と先生による子どもの評価項目は同一だった。
評価方法 事前評価は,保護者がプログラム実施前に全4回分について,家庭などで目にする,普段の子どもの活動に基づいて,学習活動をイメージした上で評価した。事後評価は,各回のプログラム終了時点で,その回の学習活動に含まれる行動について家庭での子どもの活動に基づき,保護者が評価した。先生評価は,各回の子どものプログラム中の活動を見てそのつど評価した。
結果と考察
評価項目のうち,“選択行動”の6項目,および“理由導出”の8項目を分析対象とした。
事前評価 選択行動,理由導出のいずれの係数も高かった(α=.96, 97)。また,項目の種類を被験者内要因とした1要因分散分析の結果,主効果はいずれも有意にならなかった(Fs<1.1)。すなわち,プログラム実施前に一度に評定を求めた保護者事前評価では,評価項目が同じであれば評定値も一貫して,変わらないといえる。
事後評価 選択行動,理由導出のいずれの係数も高かった(α=.88, 95)。分散分析の結果,選択行動(F (5,30)=2.14, p<.10),理由導出(F (7,42)=2.22, p<.10)のいずれも主効果が有意傾向だった。多重比較の結果,選択行動,理由導出ともに,いくつかの項目間に5%水準で有意差がみられた。以上のことから,プログラム実施後に評定を求めた保護者事後評価では,評価項目は同じでも評価対象となる活動が異なれば,評価の絶対値が異なり,教育効果を適切に反映していることが示唆された。
先生評価 選択行動,理由導出のいずれの 係数も高かった(α=.94, 98)。分散分析の結果,選択行動において主効果が有意(F (5, 50)=2.58, p<.05),理由導出においては主効果が有意傾向だった(F (7, 70)=2.04, p<.10)。先生評価についても一部の項目間に有意差がみられ,保護者の事後評価と同様に,教育効果を適切に反映する結果となった。
全体的考察
保護者による事前・事後評価および先生評価は,それぞれで内的整合性が高く,信頼性があることが確認された。ただし,単に同じ値の評価をしているというわけではなく,事後評価と先生評価については,評価得点が学習活動によって異なり,プログラムの教育効果を適切に反映していた。
学習者の主体的な活動を中心とするアクティブ・ラーニングの導入が進められている。そのような学習における評価法の一つとして,ルーブリック評価をあげることができる(松下, 2012, 2014)。
加藤・藤田・鈴木・井手(2014)は,小学生対象のアフタースクールにおける探究型学習プログラムについて,保護者による,プログラム実施前後の子どもの日常活動のルーブリック評価と,プログラム実施時の先生による評価の相関から妥当性を検討したが,評価の信頼性については未検討であった。そこで本研究では,複数回のプログラムにおけるルーブリック評価項目を用いて,評価方法の信頼性について検討することを目的とする。全4回の保護者によるプログラム実施前後の事前・事後評価,および先生によるプログラム中の評価項目のうち,それぞれ,“選択行動”および“理由導出”の活動を評価する評定値を各回から算出し,評定の信頼性について検討した。
方 法
調査対象者 小学生低学年13名とその保護者。このうち,保護者による評価は,すべての項目に完全に回答した7名を,先生評価は評価可能であった11名を分析対象とした。
プログラムの概要 全4回の授業で構成される。ピアジェの保存の概念をベースにした課題を設定し,第1回から第3回にかけて6種類の課題に取り組み,第4回で,第3回目の課題についての発表を行った。提示された課題に対して,言葉で論理的に理由を述べられるようになることを目的とした。
ルーブリック評価 各回の学習活動で評価される観点(図1)について,プログラムが目標としている状態から初期状態の5段階で評価するように設定された。保護者による子どもの事前・事後評価と先生による子どもの評価項目は同一だった。
評価方法 事前評価は,保護者がプログラム実施前に全4回分について,家庭などで目にする,普段の子どもの活動に基づいて,学習活動をイメージした上で評価した。事後評価は,各回のプログラム終了時点で,その回の学習活動に含まれる行動について家庭での子どもの活動に基づき,保護者が評価した。先生評価は,各回の子どものプログラム中の活動を見てそのつど評価した。
結果と考察
評価項目のうち,“選択行動”の6項目,および“理由導出”の8項目を分析対象とした。
事前評価 選択行動,理由導出のいずれの係数も高かった(α=.96, 97)。また,項目の種類を被験者内要因とした1要因分散分析の結果,主効果はいずれも有意にならなかった(Fs<1.1)。すなわち,プログラム実施前に一度に評定を求めた保護者事前評価では,評価項目が同じであれば評定値も一貫して,変わらないといえる。
事後評価 選択行動,理由導出のいずれの係数も高かった(α=.88, 95)。分散分析の結果,選択行動(F (5,30)=2.14, p<.10),理由導出(F (7,42)=2.22, p<.10)のいずれも主効果が有意傾向だった。多重比較の結果,選択行動,理由導出ともに,いくつかの項目間に5%水準で有意差がみられた。以上のことから,プログラム実施後に評定を求めた保護者事後評価では,評価項目は同じでも評価対象となる活動が異なれば,評価の絶対値が異なり,教育効果を適切に反映していることが示唆された。
先生評価 選択行動,理由導出のいずれの 係数も高かった(α=.94, 98)。分散分析の結果,選択行動において主効果が有意(F (5, 50)=2.58, p<.05),理由導出においては主効果が有意傾向だった(F (7, 70)=2.04, p<.10)。先生評価についても一部の項目間に有意差がみられ,保護者の事後評価と同様に,教育効果を適切に反映する結果となった。
全体的考察
保護者による事前・事後評価および先生評価は,それぞれで内的整合性が高く,信頼性があることが確認された。ただし,単に同じ値の評価をしているというわけではなく,事後評価と先生評価については,評価得点が学習活動によって異なり,プログラムの教育効果を適切に反映していた。