日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB026] ルーブリック評価による教育効果測定とその妥当性の検討III

“選択行動”と“理由導出”の評価得点間の相関から

鈴木洋介1, 加藤みずき2, 藤田哲也3, 井手茜4 (1.法政大学大学院, 2.法政大学大学院, 3.法政大学, 4.株式会社ヴィリング)

キーワード:ルーブリック, 妥当性, 学習活動

問題と目的
加藤・鈴木・藤田・井手(2015; 日教心,前件発表)はアクティブ・ラーニングの評価法の一つであるルーブリック評価(松下, 2012, 2014)の信頼性について,“選択行動”“理由導出”の2項目を対象に検討した。本研究では,加藤・藤田・鈴木・井手(2014)と同様に,これら2項目について第1回目から第3回目の評価得点を用いて,保護者の事後評価と先生評価間の相関を求め,ルーブリック評価の妥当性について検討することを目的とする。保護者の事後評価と先生評価に有意な正の相関がみられれば,日常生活場面とプログラム内での学習活動という異なる場面でも同様の学習活動をルーブリックによって評価できているとみなせるので,評価項目が妥当であるといえる。
方 法
小学生低学年13名とその保護者を調査対象者とした。このうち,全項目に完全に回答した7名を分析対象とした。その他の方法は加藤他(2015)と同一。
結果と考察
第1回目から第3回目の“選択行動”6項目, “理由導出”7項目について保護者によるプログラムの事前・事後評価,先生によるプログラム中の評価間の相関係数を算出した。“選択行動”(表1)では,保護者の事後評価と先生評価間において2-1-1,3-2-1で有意な強い正の相関がみられ,3-1-1では有意傾向の正の相関がみられた。一方で,事前評価と先生評価間のみで有意な正の相関がみられた項目もあった。それに対して“理由導出”(表2)では,事後評価と先生評価間に少なくとも有意傾向以上の正の相関が全ての項目でみられた。
“選択行動”に全ての項目において事後評価と先生評価に有意な相関がみられたわけではなかった。その理由として,選択行動のパフォーマンスは個々の課題に影響を受けやすいため,活動を直接評価する先生に比べて保護者が妥当に評価しづらかったと考えられる。一方,“理由導出”の項目で有意な正の相関が多くみられた理由として,“選択行動”とは異なり課題依存度が低いため,個人差が一貫し安定して結果に表れやすかったことが挙げられる。
全体的考察
課題依存が高い評価の観点では活動を直接見ずに妥当な評価をすることは難しいが,個人差が安定して表れるような評価の観点ではルーブリック評価が妥当になることが示唆された。ルーブリック評価項目を作成する際には,課題依存度にも注意を払う必要性があるといえる。