日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB027] ルーブリック評価による教育効果測定とその妥当性の検討IV

保護者からの評価法に対する評価について

藤田哲也1, 加藤みずき2, 鈴木洋介3, 井手茜4 (1.法政大学, 2.法政大学大学院, 3.法政大学大学院, 4.株式会社ヴィリング)

キーワード:ルーブリック, アクティブ・ラーニング

問題と目的
加藤ら(2014,2015; 鈴木他,2015,いずれも日教心)は,小学生対象のアフタースクールにおける探究型学習プログラムの教育効果をルーブリックによって測定することには,一定の信頼性および妥当性があることを示してきた。プログラム実施前後にルーブリック評価を行った保護者が,この評価法をどのように受け止めているのかを明らかにすることが本研究の目的である。具体的には全4回のプログラム実施後に“事前と事後のルーブリック評価法に対する評価”,“先生による評価および事後に提供される成果物に対する評価”,“学習プログラム自体に対する評価”を求め,その評定値及び評定項目間の相関によって検討する。
方法
調査対象者 学習プログラムに参加していた小学生低学年13名の保護者。このうち回答に同意した9名を分析対象とした。なお,評価項目によっては,さらに回答者が減り,最少で5名となることがあった。本件の対象となっている学習プログラムについては,加藤他(2015; 日教心,前々件発表)および鈴木他(2015; 前件発表)を参照。
評価項目 “事前と事後の評価方法に対する評価”10項目,“先生による評価および事後に提供される成果物に対する評価”10項目,“学習プログラム自体に対する評価(満足度)”8項目で構成された。いずれの項目も“ナビゲーター(先生)の評価は信頼できる”のように単文形式であり,その文の内容に当てはまる程度を6段階で評定するよう保護者に求めた。項目の詳細は図1参照。
評価方法 本研究で用いた評価は,保護者がプログラム全4回実施後に,普段の子どもの活動に基づいた事後評価を行った翌週に依頼した。また,その依頼時には,各子どもに対する先生の評価(4回分)および保護者の行った事前・事後評価の写し,プログラム中に子どもが作成した成果物(実験記録シートなど)も送付し参照可能にした。
結果と考察
評定値 得られた回答に基づき,各項目の評定値平均を算出した(図1)。これらの評定値が肯定的といえるかどうかを確認するために,6段階評定の意味的な中央値である3.5点とのt検定を行ったところ,H3,N1,N2,S4,S5,S6,P1,P2,M2で有意となり,H2で有意傾向となった。ルーブリック評価の際に迷いつつ(H3)も全体的に評価法を肯定的に受け止めていることが示唆される。また,ナビゲーター(先生)の評価に対して,信頼かつ納得していることも示された。
相関 ルーブリック評価が効果的(H9)と有意な正の相関が見られたのは,H1,H10,S6,S8,S9であり,負の相関が有意だったのはH3,H4,H5であった。評価のしやすさが評価の有効性の認知と関連していることが示唆された。このことは,保護者の回答パターンを個別にプロフィール的に見ていった場合にも概ね当てはまった。
全体的考察
評価の際,評価対象が明確かつ評価しやすいことが評価を肯定的に捉える前提と言えそうである。評価を求める前に,評価の趣旨に関する事前の説明を十分にすることも必要だと思われる。