The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB030] 現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(2)

現職教員と教員志望学生間の比較検討

藤田正1, 林龍平2, 崎濱秀行3 (1.奈良教育大学名誉教授, 2.大阪教育大学, 3.阪南大学)

Keywords:児童・生徒観, 学習指導行動, 現職教員と教員志望学生

【問題と目的】
研究(1)では,学習者の主体性(学習者中心的指導)を意識する学生や教員を育成することの一環として,現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および指導行動の様相を検討するための尺度を作成し,調査を行った。その結果,児童・生徒観は「学習指導観」「自律性」「自己統制性」の3因子で,学習指導行動については「学習指導行動」の1因子で構成されていた。教員養成のための教育を進めるためには,現職教員と教員を目指す学生との間でこれらの側面にどのような違いが見られるのかを検討する必要があろう。そこで,本研究では,研究(1)の下位尺度について,現職教員と教員志望学生との間にどのような違いが見られるのかを検討することを目的とした。
【方 法】
調査参加者 近畿地方の大学生・大学院生340名(男性166名,女性174名,平均年齢20.06歳)と現職教員30名(男性14名,女性16名,平均年齢40.97歳)であった。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きと同じであった。
【結果と考察】
参加者から得られたデータについて,PASW Ver.18.0を用いて以下の事項に関するt検定を行った。
1)児童・生徒観の比較検討
研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,現職教員と学生間の児童・生徒観について比較検討を行った。その結果,第1因子(「学
習指導観」)および第3因子(「統制性」)で評定値に有意差が見られた。第1因子(学習指導観)では現職教員<学生となっていたが,第3因子(自己統制性)では現職教員>学生となっていた。また,第1因子では,現職教員<学生という結果であったが,学生の評定値においても1.42という値になっており,現職教員と学生ともに,どちらかと言えば児童生徒中心的な学習指導観を有しているが,現職教員の方がより児童・生徒中心的な学習指導観を有しているといえる。
一方,自己統制性においては,評定値が低かった学生においても,値は2.60となっており,中央値である2.50を上回っている。このことから,現職教員,学生ともに,自己統制性においてはどちらかといえば教師中心的な評定を行っているが,現職教員の方がより教師中心的な評定を行っていることが明らかになった。
2)学習指導行動の比較検討
自分が教員としてどのような学習指導行動を重視するかについて回答を求めた。評定値の比較検討を行ったが,下位尺度全体としては評定の違いには有意差はなかった。しかしながら,項目13「授業はできる限り生徒のペースで進める―授業はできる限り教師のペースで進める」においてのみ現職教員―学生間の評定値の違いが有意であり,現職教員の方が評定値2.40(中央値は2.50)と高く,児童・生徒中心的でも教師中心的でもないという判断に近い値を示していた。
以上の結果を踏まえると,現職教員の場合,児童・生徒中心の学習指導が大切であると考えつつも,状況に応じて,実際の指導行動となると児童・生徒中心とも教師中心とも言えないと捉えていることが考えられる。