日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB032] 学習観と算数課題解決の関連(1)

代表値を用いた判断課題における検討

鈴木豪 (東京大学)

キーワード:学習観, 算数

問題と目的
学習観は,“知識の獲得や利用を方向づけ,規定するメタ認知の重要な一側面”であるとされ(藤村, 2008),学習方略使用との関連(e.g., Purdie, Hattie, & Douglas, 1996; 鈴木, 2013; 植木, 2002)や,予習の効果を調整する変数としての働き(篠ヶ谷, 2008)などが検討されてきた。
一方で,学習観と課題解決の関連を直接に検討した研究は多くは見られない。学習を暗記や既習内容の再生によるものと捉えていれば,既習の方法が適切でない場合でも,既習の方法を適用しようとする傾向が強いのではないかと推察される。
方 法
調査対象 静岡県浜松市内の公立A小学校の5年生(N=145),公立B小学校の5年生(N=126),6年生(N=123)の394名のうち,鈴木(2014)の課題に取り組んだ132名(残りの参加者は別課題に取り組んだ)。
調査項目 鈴木(2013)の学習観尺度のうち,意味理解志向と暗記再生志向の両学習観項目の17項目と,算数がどの程度得意であるか(算数得意度)を尋ねる1項目の計18項目(すべて5件法)。
調査課題 鈴木(2014)による外れ値を含むデータから次に得られる値を予想する課題。
結果と考察
鈴木(2014)に倣い調査課題の回答を分類した。その後,学年ごとに切片が異なるランダム切片モデルを想定し,リンク関数をロジット関数とした一般化線形混合モデル分析を行った(Table 1)。まず,調査課題中のデータには外れ値が含まれるため,最も適切な回答である,「最頻値」または外れ値を除いた平均である「調整平均」を用いて回答したか否かについて学習観との関連を検討した(分析1)。ただし,本研究では鈴木(2014)のように事前に多様な代表値に関する介入は行っていないため,外れ値を含めて計算された「平均」以外の,何らかの方法で予想をしようとしたか否かについても分析を行った(分析2)。
その結果,分析2において,暗記再生志向学習観の得点が高いほど,外れ値を含んだ「平均」を用いて回答する確率が高かった。
調査課題には,データの平均があらかじめ記載されていたため,暗記再生志向学習観の得点が高い参加者は,記載されている平均をそのまま適用しようとする傾向が強かったのではないかと推察される。
本研究では,学習方略などの媒介となり得る変数の検討はできていないものの,学習観が課題解決に影響を及ぼしている可能性が示唆された。