The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB041] 大学主催のカフェイベントにおける参加者の学びの様相

参加動機とその変容に着目して

森玲奈1, 宮田舞2, 青木翔子#3, 杉山昂平#4, 中野啓太#5, 池尻良平#6, 佐藤優香#7 (1.帝京大学, 2.東京大学大学院, 3.東京大学, 4.東京大学, 5.(株)三菱総合研究所, 6.東京大学, 7.東京大学)

Keywords:生涯学習, カフェ, 学習動機

1.背景と目的
生涯学習社会の構築に向けた成人の学習に注目が集まる中,大学はこれまで以上に生涯学習の機関として期待されている(中村・三輪,2012)。大学での生涯学習機会を,学習者評価を行う主体とその方法の観点から見れば,通信教育やオンライン大学のような(1)大学側が学習者に成績をつける正課型と,一般公開やサイエンスカフェのような(2)それを行わない非正課型があると考えられる。(1)については研究が蓄積されつつあり,浅野(2002)は,放送大学の受講生に対して学習動機に着目した調査を実施し,学習への「積極的関与」と「継続意志」の促進要因を明らかにしている。また関ら(2014)は,オンライン大学を卒業した社会人の入学動機,学業の継続要因と阻害要因の分類,学習活動を通した意識変容について質的に分析している。一方で(2)については,実践の意義を評価するための実践研究が行われているものの,成人の生涯学習という文脈で参加者の様相を捉える実証研究は行われていない。そこで本研究では,大学主催の非正課型市民向けプログラムとしてカフェイベントを取り上げ,参加者の学習動機とその変容を明らかにすることを目的とする。カフェイベントは,継続的に同じ形式で実践されており調査対象者数が一定数確保できること,また,扱われるテーマが多様であり参加者の関心領域の多様性が確保できることから,本研究の対象として妥当であると考えられる。
2.方法
2-1.対象の選定
調査対象実践:東京大学大学院情報学環が主催するカフェイベント「UTalk」(2015年2月時点で83回開催・高校生以上を対象とし各回定員15名・前半30分で東京大学に所属する研究者が自らの研究に関する話題提供を行い後半30分で質疑応答が行われる)。調査対象者:2008年3月から2014年9月までに実施された本実践への参加者。
2-2.量的データの取得方法
手続き:ウェブを使った質問紙調査を実施。参加申込者700名のうちメールアドレスの記録がなかった申込者と,エラーや無効なアドレスを除いた595名に質問紙への回答URLをメールで送付した。メールは平成26年8月中旬に送信し,約1か月間を回答期間とした。回答のあった125名のうち偏った回答をしていると考えられる1名を除いた124名を分析対象者とした。調査内容:①フェイスシート(性別,年齢,UTalkへの参加回数等) ②浅野(2002)で作成された25項目からなる学習動機尺度(4件法) ③UTalkで学習した内容に関する自由記述(任意)。
2-3.質的データの取得方法
手続き:ウェブアンケート回答者のうちインタビューの承諾を得られ,日程の調整のついた46名に対して,平成26年9月中旬~11月初旬を調査期間として1人あたり約1時間の半構造化インタビューを実施した。インタビューは第1著者以下7名が分担して実施した。調査内容:①カフェイベントに参加する動機②UTalk以外の学校外学習活動③参加したUTalkへの記憶
3.結果および今後の課題
3-1.分析1 参加者の学習動機の因子分析
分析1として,ウェブアンケートの調査内容②で用いた浅野(2002)の学習動機尺度25項目への回答結果をもとに,参加者らの学習動機を明らかにする目的で因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った。その結果,17項目からなる4因子構造が得られた。項目内容から,第一因子を「交友志向」,第二因子を「拡張的教養志向」,第三因子を「職業・専門性志向」,第四因子を「日常的課題志向」と命名した。それぞれの因子について各質問項目への回答傾向を見てみると,「拡張的教養志向」因子に該当する項目の平均値が最も高い値をとっており(M=3.19),対して「交友志向」の平均値が最も低い結果となった(M=2.28)。以上の結果から,参加者らは多様なものの見方や知識の獲得を目指す一方で,実践の枠の内外における継続的な人間関係を重視していないことが示された。
3-2.分析2 参加者の学習動機の変容
3-1.の結果のみでは参加者の学習動機の変容を明らかにすることはできない。そこでインタビュー協力者46名分の発話データを文字化し,面接調査の分析に適した方法である修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下,M-GTA)(e.g., 木下,2007)を用いることで,データに密着した学習動機の変容過程の解明を行う。現在分析は進行中であり発表ではその結果を中心に報告する。
なお,本稿の一部は,平成26年12月13日開催の日本教育工学会研究会(於:椙山女学園大学)にて,「大学主催のカフェイベントにおける参加者の学習動機」(宮田ら,2014)として発表を行った。