[PB043] 読書や理科への意欲及び新聞を読むことの意義
中学生の論理的思考力との関連から
Keywords:学習意欲, 新聞を読む, 論理的思考力
問題と目的
本研究では,読書への意欲と理科への学習意欲が高いこと,また普段新聞を読む機会が多いことが,子どもの論理的思考力の高さと関連するのか検討する。論理的思考力を高めるために,国語や理科では教材及び指導方法の改善(e.g., 澤本,1985;臼井・松原・堀,2003)などが試みられている。こうした授業での様々な工夫が,子どもの意欲や習慣に変化を及ぼし,さらに論理的思考力が高まることが推察される。そこで,日常の生活態度の中でも特に,多様な情報と接触し読解力を必要とする読書への意欲や新聞を読むこと,また科学的知識に基づき客観的に思考する理科への学習意欲が論理的思考力と関連があるのかについて検討したい。
方 法
調査方法 質問紙調査を実施(回収率90.00%)。
調査対象者 茨城県内の公立中学校1年生214名(男子103名,女子111名),2年生206名(男子100名,女子106名)の計420名。
調査時期 2014年12月に実施した。
調査内容 理科への学習意欲:谷島・新井(1996) の理科の動機づけ尺度から6項目に,「理科が好きだ」1項目を加えた計7項目。読書への意欲:秋田(1992)の子どもの読書行動に関する項目から2項目に,「自分の生活の中で本を読む時間は大切だ」1項目を加えた計3項目。論理的思考力:平山・楠見(2004)の批判的思考態度尺度のうち,論理的思考への自覚因子から5項目。新聞を読む:吉田・川島(2004)の読書に関する質問項目から1項目。
結 果
「理科への学習意欲」(α=.92),「読書への意欲」(α=.85),「論理的思考力」(α=.85)について因子分析(最尤法・Promax回転)を行った結果,1因子性が確認された。各因子得点をそれぞれ単純加算平均した合成変数を作成した。各変数のMとSDをTable1,各変数間の相関係数をTable 2に記す。男子では「理科への学習意欲」と「読書への意欲」間でのみ正の相関が見られた。女子では全ての合成変数及び項目間で正の相関が見られた。女子の各変数間の因果関係を検討するため,「読書への意欲」,「新聞を読む」,「理科への学習意欲」を独立変数,「論理的思考力」を従属変数として重回帰分析を行った(Table 3)。その結果「論理的思考力」に対して「新聞を読む」(β=.17,p<.05)と,「理科への学習意欲」(β=.25,p<.01)が有意な値を示した。
考 察
女子では「新聞を読む」,「理科への学習意欲」が高いことが「論理的思考力」の高さを生む可能性が示された。一方「読書への意欲」が高いことが「論理的思考力」の高さを生むことを明らかにできなかった。本の種類によって読者の読む態度が変化し,その態度として内容について推理する「思索専念傾向」がある(中野・佐藤・深谷,2014)ことから,このような態度の生じる本を読むことが論理的思考力向上に繋がるのかもしれない。棚田・伊藤(2006)は,様々な分野の情報が掲載されている新聞記事から,読者は情報を選び取っていることを明らかにした。よって,子どもが新聞を読む際,必要な情報と不必要な情報を取捨選択するという行為が発生し,その結果論理的思考力が高まることも考えられる。「理科への学習意欲」が高いことが「論理的思考力」の高さを生む可能性が示されたが,科学的根拠に基づき考え,解を導出することが元々得意,あるいは普段から積極的に科学的知識に触れることで思考力が向上した可能性がある。男子では「論理的思考力」と有意な相関はみられず,今後のさらなる検討が求められる。
本研究では,読書への意欲と理科への学習意欲が高いこと,また普段新聞を読む機会が多いことが,子どもの論理的思考力の高さと関連するのか検討する。論理的思考力を高めるために,国語や理科では教材及び指導方法の改善(e.g., 澤本,1985;臼井・松原・堀,2003)などが試みられている。こうした授業での様々な工夫が,子どもの意欲や習慣に変化を及ぼし,さらに論理的思考力が高まることが推察される。そこで,日常の生活態度の中でも特に,多様な情報と接触し読解力を必要とする読書への意欲や新聞を読むこと,また科学的知識に基づき客観的に思考する理科への学習意欲が論理的思考力と関連があるのかについて検討したい。
方 法
調査方法 質問紙調査を実施(回収率90.00%)。
調査対象者 茨城県内の公立中学校1年生214名(男子103名,女子111名),2年生206名(男子100名,女子106名)の計420名。
調査時期 2014年12月に実施した。
調査内容 理科への学習意欲:谷島・新井(1996) の理科の動機づけ尺度から6項目に,「理科が好きだ」1項目を加えた計7項目。読書への意欲:秋田(1992)の子どもの読書行動に関する項目から2項目に,「自分の生活の中で本を読む時間は大切だ」1項目を加えた計3項目。論理的思考力:平山・楠見(2004)の批判的思考態度尺度のうち,論理的思考への自覚因子から5項目。新聞を読む:吉田・川島(2004)の読書に関する質問項目から1項目。
結 果
「理科への学習意欲」(α=.92),「読書への意欲」(α=.85),「論理的思考力」(α=.85)について因子分析(最尤法・Promax回転)を行った結果,1因子性が確認された。各因子得点をそれぞれ単純加算平均した合成変数を作成した。各変数のMとSDをTable1,各変数間の相関係数をTable 2に記す。男子では「理科への学習意欲」と「読書への意欲」間でのみ正の相関が見られた。女子では全ての合成変数及び項目間で正の相関が見られた。女子の各変数間の因果関係を検討するため,「読書への意欲」,「新聞を読む」,「理科への学習意欲」を独立変数,「論理的思考力」を従属変数として重回帰分析を行った(Table 3)。その結果「論理的思考力」に対して「新聞を読む」(β=.17,p<.05)と,「理科への学習意欲」(β=.25,p<.01)が有意な値を示した。
考 察
女子では「新聞を読む」,「理科への学習意欲」が高いことが「論理的思考力」の高さを生む可能性が示された。一方「読書への意欲」が高いことが「論理的思考力」の高さを生むことを明らかにできなかった。本の種類によって読者の読む態度が変化し,その態度として内容について推理する「思索専念傾向」がある(中野・佐藤・深谷,2014)ことから,このような態度の生じる本を読むことが論理的思考力向上に繋がるのかもしれない。棚田・伊藤(2006)は,様々な分野の情報が掲載されている新聞記事から,読者は情報を選び取っていることを明らかにした。よって,子どもが新聞を読む際,必要な情報と不必要な情報を取捨選択するという行為が発生し,その結果論理的思考力が高まることも考えられる。「理科への学習意欲」が高いことが「論理的思考力」の高さを生む可能性が示されたが,科学的根拠に基づき考え,解を導出することが元々得意,あるいは普段から積極的に科学的知識に触れることで思考力が向上した可能性がある。男子では「論理的思考力」と有意な相関はみられず,今後のさらなる検討が求められる。