[PB047] 人間心理をリズムと揺らぎから探究する
指尖脈波によるリアルタイムアプローチ
キーワード:リズムとゆらぎ, 指尖脈波, リアルタイムアプローチ
生体は、リズムをもっている(蔵本,2014)。バクテリアなどの単細胞生物から哺乳類まで多くの生物が、概日リズムと呼ばれる約24時間周期の体内時計をもっている。生体の心臓にしても、拍動リズムが存在する。神経細胞は心筋細胞と似た電気的活動を行い、神経細胞集団のネットワークである脳でもリズムは大きな役割を担っている。
従来、生体のリズム研究は、安定性を焦点にしてきた。しかしながら、そのリズムは揺らぎをともなっている。概日リズムは揺らぎがあるからこそ約24時間であり、心拍にも揺らぎがある。実際、心臓は自律神経の強い影響を受けており、自律神経の交感神経と副交感神経は、神経伝達物質を放出することで、心や体の状態に応じて心拍数を変えている。
本研究では、交感神経・副交感神経の作用を含み(LF/(HF+LF))、人間の心理を反映すると考えられる生体信号-指尖脈波を指標としながら、(1)人間心理にはどのようなリズムならびに揺らぎがあるのか、(2)心理とリズム・揺らぎの関係は、(3)そのリズムとゆらぎの意味、を検討する。
<方 法>
被験者:大学生 31名
指尖脈波測定場面(各3分間):①安静、②加算作業、③図形問題、④楽しい会話、⑤悔しい会話
指尖脈波解析:Lyspect 3.5(Chaos Technology Research Laboratory)を使用。3分間(180sec. 36000ドットデータ長)、0.005秒に1ドットの精度でデータ収集。リアプノフスペクトルを計算し、リアプノフ指数(Lyapunov exponent)を求める。ターケンス埋め込み定理を使用。遅延時間50.0msec.位相空間上に埋め込み次元数4でアトラクタの振る舞いを示す(ε=0.05)。
<結果と考察>
1.各場面におけるリズムと揺らぎ
各被験者のアトラクタの振る舞いが、リズムと揺らぎを示している(Fig. 1)。全被験者、どの場面でも1.8sec段階までは揺らぎを伴いながらも伸びのあるリズムを刻んでいるが、18sec~60secで分岐が生じ、棒状の縮んだリズムに向かう被験者と伸びのあるリズムを繰り返しながら移っていく被験者に分かれる。また、繰り返し作業では徐々にリズムが縮み、問題を解くことをあきらめた被験者のリズムは縮んでくる。それに対して、会話場面でのリズムは伸びやかである。
2.リアプノフ指数(LE)
LEは、力学系において軌道が離れていく度合いを表わし、揺らぎに通じる。LEは、繰り返し作業だと少ないが、会話場面だと多くなる。
<まとめ>
人間には生体信号としてのリズムと揺らぎがあり、副交感神経優位(LF/(HF+LF)<5)の際、リズムは安定から縮む傾向にあり、交感神経優位の際は伸びやかなリズムで揺らぎが強い。その振る舞いは、心理状態を反映する。揺らぎは単なる誤差ではなく、変化の方向を示すダイナミカルな指標である。心理は、安定性と応答性という視点から非平衡系として考える必要がある。
従来、生体のリズム研究は、安定性を焦点にしてきた。しかしながら、そのリズムは揺らぎをともなっている。概日リズムは揺らぎがあるからこそ約24時間であり、心拍にも揺らぎがある。実際、心臓は自律神経の強い影響を受けており、自律神経の交感神経と副交感神経は、神経伝達物質を放出することで、心や体の状態に応じて心拍数を変えている。
本研究では、交感神経・副交感神経の作用を含み(LF/(HF+LF))、人間の心理を反映すると考えられる生体信号-指尖脈波を指標としながら、(1)人間心理にはどのようなリズムならびに揺らぎがあるのか、(2)心理とリズム・揺らぎの関係は、(3)そのリズムとゆらぎの意味、を検討する。
<方 法>
被験者:大学生 31名
指尖脈波測定場面(各3分間):①安静、②加算作業、③図形問題、④楽しい会話、⑤悔しい会話
指尖脈波解析:Lyspect 3.5(Chaos Technology Research Laboratory)を使用。3分間(180sec. 36000ドットデータ長)、0.005秒に1ドットの精度でデータ収集。リアプノフスペクトルを計算し、リアプノフ指数(Lyapunov exponent)を求める。ターケンス埋め込み定理を使用。遅延時間50.0msec.位相空間上に埋め込み次元数4でアトラクタの振る舞いを示す(ε=0.05)。
<結果と考察>
1.各場面におけるリズムと揺らぎ
各被験者のアトラクタの振る舞いが、リズムと揺らぎを示している(Fig. 1)。全被験者、どの場面でも1.8sec段階までは揺らぎを伴いながらも伸びのあるリズムを刻んでいるが、18sec~60secで分岐が生じ、棒状の縮んだリズムに向かう被験者と伸びのあるリズムを繰り返しながら移っていく被験者に分かれる。また、繰り返し作業では徐々にリズムが縮み、問題を解くことをあきらめた被験者のリズムは縮んでくる。それに対して、会話場面でのリズムは伸びやかである。
2.リアプノフ指数(LE)
LEは、力学系において軌道が離れていく度合いを表わし、揺らぎに通じる。LEは、繰り返し作業だと少ないが、会話場面だと多くなる。
<まとめ>
人間には生体信号としてのリズムと揺らぎがあり、副交感神経優位(LF/(HF+LF)<5)の際、リズムは安定から縮む傾向にあり、交感神経優位の際は伸びやかなリズムで揺らぎが強い。その振る舞いは、心理状態を反映する。揺らぎは単なる誤差ではなく、変化の方向を示すダイナミカルな指標である。心理は、安定性と応答性という視点から非平衡系として考える必要がある。