The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB050] モチベーション向上のための教室環境づくり

色彩照明による検討2

今野紀子1, 土肥紳一2, 宮川治3 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学, 3.東京電機大学)

Keywords:モチベーション, 教室環境, 色彩照明

1.目的
近年,モチベーションは教育のアウトカム指標としても注目されており,筆者らはモチベーション(学習意欲)を高める教育に関する研究を進めている。すでにモチベーション向上のための教育システム=SIEM(ジーム:School of Information Environment Method)を構築し,情報教育分野(プログラミング入門教育),英語基礎教育,数学基礎教育への対応システムを完成させ,教育現場において継続的利用を行っている。こうした教育システムに加え,モチベーションを向上させるための教室環境を模索している。2014年度は,色彩照明(紫・黄・青・桃・赤・緑・橙の7色)を用い,モチベーションを向上させる教室環境づくりを検討した1)。その結果,学習者の疲労感や混乱が少なく,活気が高まり,適度な緊張感が保たれる環境づくりに橙色間接照明が有用である可能性が示唆された。本研究では,通常の教室照明環境(蛍光灯による直接照明)と比較し,橙色間接照明がモチベーションに関連した気分に与える影響について報告する。
2.方法
⑴対象:2014年11月上旬,大学生84名(男性77名,女性7名[平均年齢20.6±1.2歳])を対象者とした。
⑵照明条件:条件1:通常の教室照明環境を想定し,蛍光灯による直接照明(最大照度706lx,最小照度401lx,x:0.38,y:0.39)とした。条件2:間接照明による教室環境づくりを想定し,プロジェクタ(Panasonic PT-D5700 XGA6000)2台を用いて,壁面のスクリーン(120インチと100インチスクリーンを並列設置)にノートPCで調光した橙色光(33.8lx,x:0.51,y:0.45)を投影した。数値はともに3回計測した平均値である。照度・色度は色彩照度計(KONICA MINOLTA CL-200A)を用いた。呈示時間は前回同様1分間とした。
⑶評価指標:一時的気分尺度(徳田,2011)2)の6下位尺度中,学習環境に関係する緊張・混乱・疲労・活気の4下位尺度を使用した。各質問項目をTable 1に示す。
下位尺度はそれぞれ3質問項目で構成されている。各質問項目についてVisual Analog Scale(0-100%)により評価し,3項目の平均値を緊張・混乱・疲労・活気の各得点とした。
3.結果と考察
蛍光灯による直接照明環境と,橙色間接照明環境の一時的気分の各項目の結果(平均値)をFig. 1に示す。
t検定の結果をFig. 2に示す。緊張(蛍光灯:31.2±19.0,橙色間接照明:40.5±19.2,t(83)=-3.99,p<0.01),活気(蛍光灯:33.3±18.3,橙色間接照明:49.0±22.0,t(83)=-6.17,p<0.01),疲労(蛍光灯:40.9±22.3,橙色間接照明:33.7±22.1,t(83)=3.43,p<0.01)の各気分に1%水準で有意差が認められた。
今回の結果から1分間という短時間にもかかわらず,橙色間接照明は緊張感と活気を高め,疲労感を低下させることが判明した。橙色間接照明環境を短時間でも取り入れることでモチベーションの向上が期待される。教室内外の一部コーナーに橙色間接照明を設置し,休憩時間帯などに学習者の気分をリフレッシュさせる活用方法も考えられる。今後は,実際の授業場面や休憩時間帯での活用を想定した検証を行う必要がある。
参考文献
1)今野紀子,土肥紳一,宮川治:モチベーション向上のための教室環境づくり-色彩照明による検討,日本教育心理学会第56回総会発表(2014)
2)徳田完二:一時的気分尺度(TMS)の妥当性,立命館人間科学研究 22, pp.1-6(2011)
追 記
本研究は,科学研究費補助金(基盤研究(C) 課題番号24501214)として行なっているものである。