[PB052] 筆者識別における筆跡の観察方略
Keywords:筆跡鑑定, 注視点解析, 専門家
【目 的】
専門家は,一般の者が持っていない知識や技術を持っているとイメージされる。確かに,医師や弁護士,技術者などの専門職は,一般の者が持っていない知識や技術を持っているし,一般人が経験したことがない経験をしている。筆跡鑑定は,筆者が不明の筆跡と筆者が既知の筆跡の特徴を比較して,筆者が不明の筆跡の筆者が,筆者が既知の筆跡の筆者と同じかどうかを識別する。しかし,専門家以外の人間であっても,自分の身近な人間が書いた文字であれば,その筆跡を見ただけで書き手が誰かを推測できた経験は誰でも持っているし,その結果はあまり誤っていないことも事実である。そうであるとすれば,筆跡鑑定の専門家とは,素人と異なるどのような技術や知識を持っているのだろうか。本報告では,筆跡を観察している時には,観察者が重要と考える箇所が他の箇所より集中して観察されるという前提のもとで,筆跡を観察しているときの観察者の視線の動きを計測し,筆跡鑑定の専門家とそれ以外の者とで比較し,専門家とそれ以外の者に観察方略に違いがあるかどうかを検討した。
【方 法】
被験者に,模擬筆跡鑑定を行わせ,鑑定中の視線の動きと注視点の位置および注視時間を計測した,視線計測には,Eyetech TM3(Eyetech Digital System製)および解析ソフトウェアQG Plus(DITECT製)を使用した。被験者は,筆跡鑑定の専門家(以後,専門家と呼称)8名,一般の成人(以後,一般人と呼称)5名であった。被験者には実験の概要を説明し,実験参加の意思を確認した。一般人には,試行前に筆跡鑑定の概要を説明し,2種類の練習用例題で練習を行った後に本試行を行った。本試行では,最初に,筆者が解っている筆跡(以後,筆者既知の筆跡と呼称)2個がディスプレーに提示され,この筆跡が,以後の試行で筆者既知の筆跡として提示されること,この筆跡をよく観察し,書き方の特徴を把握しておくことが指示された。模擬鑑定では,ディスプレーに,最初に提示された,筆者既知の筆跡2個と,筆者が解らない筆跡(以後筆者未知の筆跡と呼称)1個が同時に提示され,被験者は,筆者未知の筆跡が,筆者既知の筆跡の筆者と同じかどうかを回答した。回答は,不明も可とした。回答後に,判断の根拠を説明するよう求めた。筆跡を観察する時間は,被験者が回答を得るまでの任意の時間とした。試行は全部で18回行った。
【結果および考察】
1試行あたりの観察時間は専門家の平均は62.7秒,一般人は29.7秒であった。回答別では,回答が同一人では,専門家は65.3秒,一般人は18.8秒,別人では,専門家が59.7秒,一般人は31.1秒であった。また,注視位置を比較すると,一般人は字画構成や字画形態に注目しているのに対し,専門家は,字画構成や字画形態のほかに,文字の配置(記載枠中の位置や文字の間隔など)にも注目していた。1試行あたりの観察時間は専門家の平均は62.7秒,一般人は29.7秒であった。回答別では,同一人では,専門家は65.3秒,一般人は18.8秒,別人では,専門家が59.7秒,一般人は31.1秒であった。これらから,専門家は,フォールスポジティブを少なくする方向で結論を出していることが示唆された。また,専門家は,文字の形態上の特徴だけでなく,文字の配置や文字間隔など,形態以外の特徴を多角的に観察して考察していることもわかった。
専門家は,一般の者が持っていない知識や技術を持っているとイメージされる。確かに,医師や弁護士,技術者などの専門職は,一般の者が持っていない知識や技術を持っているし,一般人が経験したことがない経験をしている。筆跡鑑定は,筆者が不明の筆跡と筆者が既知の筆跡の特徴を比較して,筆者が不明の筆跡の筆者が,筆者が既知の筆跡の筆者と同じかどうかを識別する。しかし,専門家以外の人間であっても,自分の身近な人間が書いた文字であれば,その筆跡を見ただけで書き手が誰かを推測できた経験は誰でも持っているし,その結果はあまり誤っていないことも事実である。そうであるとすれば,筆跡鑑定の専門家とは,素人と異なるどのような技術や知識を持っているのだろうか。本報告では,筆跡を観察している時には,観察者が重要と考える箇所が他の箇所より集中して観察されるという前提のもとで,筆跡を観察しているときの観察者の視線の動きを計測し,筆跡鑑定の専門家とそれ以外の者とで比較し,専門家とそれ以外の者に観察方略に違いがあるかどうかを検討した。
【方 法】
被験者に,模擬筆跡鑑定を行わせ,鑑定中の視線の動きと注視点の位置および注視時間を計測した,視線計測には,Eyetech TM3(Eyetech Digital System製)および解析ソフトウェアQG Plus(DITECT製)を使用した。被験者は,筆跡鑑定の専門家(以後,専門家と呼称)8名,一般の成人(以後,一般人と呼称)5名であった。被験者には実験の概要を説明し,実験参加の意思を確認した。一般人には,試行前に筆跡鑑定の概要を説明し,2種類の練習用例題で練習を行った後に本試行を行った。本試行では,最初に,筆者が解っている筆跡(以後,筆者既知の筆跡と呼称)2個がディスプレーに提示され,この筆跡が,以後の試行で筆者既知の筆跡として提示されること,この筆跡をよく観察し,書き方の特徴を把握しておくことが指示された。模擬鑑定では,ディスプレーに,最初に提示された,筆者既知の筆跡2個と,筆者が解らない筆跡(以後筆者未知の筆跡と呼称)1個が同時に提示され,被験者は,筆者未知の筆跡が,筆者既知の筆跡の筆者と同じかどうかを回答した。回答は,不明も可とした。回答後に,判断の根拠を説明するよう求めた。筆跡を観察する時間は,被験者が回答を得るまでの任意の時間とした。試行は全部で18回行った。
【結果および考察】
1試行あたりの観察時間は専門家の平均は62.7秒,一般人は29.7秒であった。回答別では,回答が同一人では,専門家は65.3秒,一般人は18.8秒,別人では,専門家が59.7秒,一般人は31.1秒であった。また,注視位置を比較すると,一般人は字画構成や字画形態に注目しているのに対し,専門家は,字画構成や字画形態のほかに,文字の配置(記載枠中の位置や文字の間隔など)にも注目していた。1試行あたりの観察時間は専門家の平均は62.7秒,一般人は29.7秒であった。回答別では,同一人では,専門家は65.3秒,一般人は18.8秒,別人では,専門家が59.7秒,一般人は31.1秒であった。これらから,専門家は,フォールスポジティブを少なくする方向で結論を出していることが示唆された。また,専門家は,文字の形態上の特徴だけでなく,文字の配置や文字間隔など,形態以外の特徴を多角的に観察して考察していることもわかった。