日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB053] モチベーションに着目したSIEMによる基礎英語のCS分析

基礎英語のモチベーションの向上を目指すために

土肥紳一1, 宮川治2, 今野紀子3, 相羽千州子#4 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学, 3.東京電機大学, 4.東京電機大学)

キーワード:基礎英語, モチベーション, CS分析

目 的
プログラミング入門教育を対象に開発したモチベーション志向情報教育システム(SIEM)を基に,英語版のSIEMアセスメント尺度を開発し,英語教育で実践している[1]。2013年に英語科目の見直しがあり,春期は「基礎英語Ⅰ」(「基英Ⅰ」と略)を,秋期は「基礎英語Ⅱ」(「基英Ⅱ」と略)を開講している。2013年と2014年の授業で,CS(Customer Satisfaction)分析を行った[1]。分析結果からSIEMの効果について述べる。
方 法
「基英Ⅰ」は主に新入生を対象に開講しており,受講者は入学時のプレースメントテストでクラス分割される。「基英Ⅱ」は,「基英Ⅰ」に続く科目として開講している。分析対象のクラスは,SIEMを実践しているA先生のクラスである。A先生は,春期と秋期に各2クラスを担当しており,各クラスは「基英Ⅰ-1」,「基英Ⅰ-2」,「基英Ⅱ-1」,「基英Ⅱ-2」として区別した。CS分析の方法は,目的変数をモチベーション,説明変数をSIEMアセスメント項目とし,目的変数と説明変数との単相関係数を関連度,説明変数の評価値を満足度とする。各々を偏差値化し,関連度偏差値(RLD: Related Level Deviation score),満足度偏差値(SLD: Satisfaction Level Deviation score)をCSグラフとして表示する[2]。モチベーションの測定は,授業の前期,中期,後期の3回実施する。前期は,モチベーション評価項目の3項目をアンケート調査し,中期と後期は20項目を調査する。英語版のSIEMアセスメント尺度の各項目に対して,5段階で評価する。アンケート用紙はスキャネットシート(SN-0007)でマークシートを作成し,「カンマくん2」で数値化した。各クラスのモチベーションは,「重要度」と「期待度」の積の平均値で算出する。
結 果
モチベーションの推移を,表1に示す。一般的にモチベーションは前期から中期にかけて低下し,中期から後期にかけてさらに低下する傾向がある。前期と後期に着目すると,全体的には後期に向け低下する一般的な傾向が窺えた。しかし,2014年の「基英Ⅱ-2」は前期から後期に向け上昇する結果となった。
CS分析結果を基に,英語版SIEMアセスメント尺度の項目が過去2年間,どの象限に出現しているかをクラス毎に探った。この結果を表2に示す。4回,すなわち恒常的に同じ象限に出現する項目は,以下の通りであった。「基英Ⅰ-1」は「将来への有用度」が第1象限に,「自主学習度」と「新奇度」が第3象限に出現した。「基英Ⅰ-2」は「意義の明確度」と「将来への有用度」が第1象限に,「自主学習度」が第3象限に出現した。「基英Ⅱ-1」は「意義の明確度」が第1象限に,「自主学習度」と「参加積極度」が第3象限に出現した。「基英Ⅱ-2」は「意義の明確度」と「将来への有用度」が第1象限に,「新奇度」と「興味関心度」が第3象限に出現した。全クラスをまとめた出現頻度を図1に示す。第1象限に着目すると,「将来への有用度」が最も多く,「意義の明確度」がこれに続いた。第3象限は,「自主学習度」が最も多く,「新奇度」,「参加積極度」の順に続いた。
考 察
表1の2013年と2014年のモチベーションの推移を比較すると,2014年は前期から後期にかけて低下が抑えられていることが窺える。このことはSIEMの実践によって,授業自体にフィードバックが掛かり,モチベーションの向上に効果が出ていると考えられる。図1の第1象限(重点維持分野)に着目すると「将来への有用度」と「意義の明確度」の頻度が多く,英語を学習することの有用性と意義が受講者に理解されていることが現れており,モチベーションの向上に寄与していると考えられる。第3象限(改善分野)に着目すると,「自主学習度」の頻度が最も多く,今後,受講者が自主的に学習する機会を増やすことによって,モチベーションをさらに向上できることが期待できる。
参考文献
⑴ モチベーション志向英語教育システムの活用,今野紀子,土肥紳一,宮川 治,井上行雄,相羽千州子,日本教育心理学会,第52回総会発表論文集,p621,2010
⑵ 南 学,学生による授業評価へのCS分析の適用,三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要,pp.29-34,2007