日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB057] プログラミング演習でのつまずきに関する分析

宮川治1, 土肥紳一2, 今野紀子3, 高野辰之#4, 小濱隆司#5 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学, 3.東京電機大学, 4.関東学院大学, 5.東京電機大学)

キーワード:演習, つまずき

1.目的
近年,情報化社会の発展とともに,情報教育の必要性が唱えられ,特にプログラミング学習が情報の理解に通じると提案されている1)。プログラミング演習では,コンピュータ上で「プログラムの入力」と「実行」の手順を繰り返す。この過程で,学習者はプログラミング言語の理解やコンピュータの操作など,さまざまな問題を乗り越える必要がある。
著者らは高等教育でのプログラミング教育に携わっている。学習者はJava言語を学び,約8割は初学者である。実際のプログラミング演習では,「プログラムの入力」,「外部記憶装置への保存」,「コンパイル」と「実行」の手順が必要となる。この演習で,大半の学習者はつまずきを避けられず,援助が必要となる。このため演習には教員の他に授業補助者(TA:Teaching Assistant,SA:Student Assistant)が担当する。
本研究では,学習者のつまずきを学習過程での理解不足の表出と捕らえ,分析し報告する。つまずきは,演習中に 授業補助者が学習者を補助した記録とする。
2.調査対象演習と演習内容
2014年度の後期に本学で開講されたコンピュータプログラミングA(Java言語入門)を対象とし,プログラムの入力から実行までの手順を経験する初回の演習を調査した。学習者は「プログラムの入力」,「外部記憶装置への保存」,「コンパイル」と「実行」の一連の手順や,「プログラムの修正」を加えた「実行」までの手順を経験する。ただし,プログラムはメソッドが1つの簡単なものであり,修正に関しても出力する文字列の追加である。
3.調査結果
プログラミングの演習を受講したのは99名であった。演習中につまずきが起きた総数は22件となり,その内容を表1に示す。 ただし,手順の番号はⅠ:「環境構築」,Ⅱ:「プログラムの入力/修正」,Ⅲ:「外部記憶装置への保存」,Ⅳ:「コンパイル」,Ⅴ:「実行」である。
つまずきがどの手順で起きたかを割合で図1に示す。つまずきの総数22件の内,Ⅱ:「プログラムの入力/修正」の手順で起きた割合が27%となっている。
4.考察
このつまずきは「授業補助者が判断し援助した」あるいは「学習者が判断し挙手などにより援助を要請した」記録である。よって,学習者が自ら乗り越えた間違いなどは含まれていない。つまり,表出しているつまずきは,手順との関係で,その原因を選別できていないことや,理解不足な事柄が含まれていることが考えられる。
特に,手順のⅢ:「外部記憶装置への保存」ではⅡ:「プログラムの入力/修正」後の保存忘れは,学習者が自ら,その間違いに気が付くのは大変難しい。また,机間巡視から気が付いた点として,学習者は手順のⅡ以外に間違いが有ってもⅡに間違いがあると考える傾向がある。
手順のⅢ,Ⅳ:「コンパイル」とⅤ:「実行」でのつまずきが起こった割合が合計64%であることから,学習者がコンピュータに関して理解不足であることや,操作に慣れていないことが考えられる。
これらのことから,22件/99名≒22%(22件は学習者の特定を行っていない)は授業補助者の援助がなければつまずきを乗り越えられない可能性が高いと推察される。
5.まとめ
プログラミング演習でのつまずきに関して,授業補助者の記録から,分析・考察した。この結果,つまずきが起こるのは「プログラムの入力/修正」の手順以外が約7割であり,コンピュータの操作が絡んでいることがわかった。今後は講義の進捗でのつまずきの推移を分析することが課題である。
参考文献
1)久野靖,「情報教育におけるプログラミング利用の可能性」,情報処理学会誌,Vol.48,No.6,pp.594-597,(2007).
追 記
本研究は,科学研究費補助金(基盤研究(C) 課題番号24501214)として行なっているものである。