[PB059] 4歳児クラス女児間の仲間遊びにおける感情調整
1人の子どもの葛藤状況に仲間はどのように対処するか
キーワード:感情調整, 感情言及, 仲間遊び
【問題と目的】
幼児期における自他の感情理解や感情調整は良好な社会的関係を構築する上で重要といえる。幼児の感情言及はそうした発達過程を捉える一つの指標となり得るものであり,これまで幼児の感情言及がみられやすい場面としてふり遊び場面に焦点があてられてきた(Hughes & Dunn,1997,等)。しかし,ふり遊びを含む仲間遊びのやりとりの中で,幼児たちがどのように自他の葛藤を含むネガティブ感情に言及し,感情調整に関わるやりとりを行っているかについては未だ検討の余地があるといえる。本報告では,ふり遊びの準備製作からふり遊びに展開する中でみられた,一人の女児(A)の葛藤に対する仲間同士のやりとりに着目し,仲間遊びにおける4歳児クラス女児間の感情言及を含む感情調整に関わるやりとりについて事例的検討を行った。
【方 法】
観察手続き:首都圏の大学附属幼稚園において,2010年度より継続して月に2回程度,朝の自由遊び時間(約2時間)の3~5歳児の仲間同士のやりとりについて参与観察(傍観者的立場)を行った。幼児同士の自然な発話を記録するため,室内及び屋外(一部の遊具等)での2名以上の仲間同士の遊び場面を中心とする言語的やりとりの筆記記録を行った(一組15分間目安)。
分析:トランスクリプトを作成し,自他の感情(楽しい,怒った,等)への言及(岩田,1999,2013)を含むやりとりを抽出した。本報告は,感情調整に関わるやりとりという観点から,2013年度6月に観察された4歳児クラスの1事例を抽出し事例的検討を行った。
【結果と考察】
Table1にやりとりの事例を示した。女児たちは初め,ふり遊びに使う材料(ペットフードなど)を色紙等で製作していたが,Aが自分の赤のクレヨンがないことに気づき,葛藤を抱える状況となった(①,②)。こうした状況のAに対し,Bはいち早く自分のクレヨンを差し出すことで対処しようとしたが(③),Aは納得せず,そのままやりとりはふり遊びの様相を帯びていった(⑦以降)。その後はふりの世界の中で,おさまらないAの感情をCが母役のBに代弁することや(⑪「ネコちゃん怒ってる」),ネコ役のAにやさしく尋ねることがみられていく(⑪「赤がないと,ダメなの?嫌なの?」)。しかしそれでもAの葛藤はおさまらず(⑬),CとBはそうしたAに状況を変え得る『引っ越し』を提案する(⑭,⑮)。さらに,CがAに「楽しいことを思い出して(⑳)」「すっきりした気持ちで(⑳)」とポジティブな気持ちへの切り替えを促すような言及を行っていく。
ここでのやりとりは,ふり遊びの準備製作がふり遊びに展開していく中で,いわゆる「心の理論」能力の変換期にある4歳児クラスの女児たちが現実世界とふりの世界の境界線を行き来しながら,Aの感情に言及し,またAの気持ちを立て直すべく,洗練された自律的な対処を行っていることが窺われるものといえ,同時期の感情調整を窺い知る上で興味深いやりとりといえる。今後は他の事例も含め,さらに詳細に検討を進めていきたい。
幼児期における自他の感情理解や感情調整は良好な社会的関係を構築する上で重要といえる。幼児の感情言及はそうした発達過程を捉える一つの指標となり得るものであり,これまで幼児の感情言及がみられやすい場面としてふり遊び場面に焦点があてられてきた(Hughes & Dunn,1997,等)。しかし,ふり遊びを含む仲間遊びのやりとりの中で,幼児たちがどのように自他の葛藤を含むネガティブ感情に言及し,感情調整に関わるやりとりを行っているかについては未だ検討の余地があるといえる。本報告では,ふり遊びの準備製作からふり遊びに展開する中でみられた,一人の女児(A)の葛藤に対する仲間同士のやりとりに着目し,仲間遊びにおける4歳児クラス女児間の感情言及を含む感情調整に関わるやりとりについて事例的検討を行った。
【方 法】
観察手続き:首都圏の大学附属幼稚園において,2010年度より継続して月に2回程度,朝の自由遊び時間(約2時間)の3~5歳児の仲間同士のやりとりについて参与観察(傍観者的立場)を行った。幼児同士の自然な発話を記録するため,室内及び屋外(一部の遊具等)での2名以上の仲間同士の遊び場面を中心とする言語的やりとりの筆記記録を行った(一組15分間目安)。
分析:トランスクリプトを作成し,自他の感情(楽しい,怒った,等)への言及(岩田,1999,2013)を含むやりとりを抽出した。本報告は,感情調整に関わるやりとりという観点から,2013年度6月に観察された4歳児クラスの1事例を抽出し事例的検討を行った。
【結果と考察】
Table1にやりとりの事例を示した。女児たちは初め,ふり遊びに使う材料(ペットフードなど)を色紙等で製作していたが,Aが自分の赤のクレヨンがないことに気づき,葛藤を抱える状況となった(①,②)。こうした状況のAに対し,Bはいち早く自分のクレヨンを差し出すことで対処しようとしたが(③),Aは納得せず,そのままやりとりはふり遊びの様相を帯びていった(⑦以降)。その後はふりの世界の中で,おさまらないAの感情をCが母役のBに代弁することや(⑪「ネコちゃん怒ってる」),ネコ役のAにやさしく尋ねることがみられていく(⑪「赤がないと,ダメなの?嫌なの?」)。しかしそれでもAの葛藤はおさまらず(⑬),CとBはそうしたAに状況を変え得る『引っ越し』を提案する(⑭,⑮)。さらに,CがAに「楽しいことを思い出して(⑳)」「すっきりした気持ちで(⑳)」とポジティブな気持ちへの切り替えを促すような言及を行っていく。
ここでのやりとりは,ふり遊びの準備製作がふり遊びに展開していく中で,いわゆる「心の理論」能力の変換期にある4歳児クラスの女児たちが現実世界とふりの世界の境界線を行き来しながら,Aの感情に言及し,またAの気持ちを立て直すべく,洗練された自律的な対処を行っていることが窺われるものといえ,同時期の感情調整を窺い知る上で興味深いやりとりといえる。今後は他の事例も含め,さらに詳細に検討を進めていきたい。