[PB066] 大学生にとっての「居場所」
レジリエンスとの関連において
キーワード:居場所, 大学生, レジリエンス
問題と目的
教育現場における不登校問題から注目されるようになった概念に「居場所」という概念がある。「居場所」については様々な研究がなされているが,まだ明確な定義はない。これまでの研究では,重要な他者に対する居場所感はレジリエンスに直接的に影響を与えないことが示されている。しかし必要とされる「居場所」は発達段階ごとに異なっており,発達段階が進むと「一人で過ごす居場所」が必要になることも示されている。このことから,大学生においては必ずしもすべての「居場所」がレジリエンスと無関係とは言い切れないと考えられる。
本研究では「居場所」を「落ち着いたり,安心したりできる,居心地の良い空間」とし,大学生を対象として,どのような居場所が必要とされており,その居場所がどのような働きを持ちどのようにレジリエンスと関連しているか,自尊心を媒介変数として検討する。
方 法
参加者 大学生174名(男性86名,女性88名)が参加した。年齢は18-24歳で,平均20.30歳(SD=1.32)であった。
装置 フェース・シート,居場所に関する尺度,自尊心尺度,レジリエンス尺度からなる質問紙を用いた。居場所に関する尺度は居場所の心理的機能を参考に質問紙を作成した。自尊心に関する尺度としてはRSES-Jを用いた。レジリエンスに関する尺度としては中学生用レジリエンス尺度を用いて,再度因子分析を行った。
手続き 調査の目的や概念について説明した後,質問紙への記入を求め,その場で回収した。
結 果
居場所と自尊心がレジリエンスに至る過程を検討するために重回帰分析を行った結果,銃決定係数は .309であり,「家族と過ごす居場所」に対する居場所感が自尊心とレジリエンスに影響を与え,「家族以外の人と過ごす居場所」に対する居場所感と自尊心がレジリエンスに影響を与えていることが示された。また男女別に重回帰分析を行った結果,男性ではすべての居場所に対する居場所感が自尊心とは関連がないことが示され,「家族と過ごす居場所」と「家族以外の人と過ごす居場所」に対する居場所感がレジリエンスと正の関連を示した。一方女性においては「家族と過ごす居場所」に対する居場所感が自尊心と正の関連を示した。また「家族以外の人と過ごす居場所」に対する居場所感がレジリエンスと正の関連を示し,自尊心がレジリエンスと強い正の関連を示した。
またそれぞれの居場所につけられた順位を集計
した結果を表1に示した。「一人で過ごす居場所」が1番目に大切であるとした人が最も多く,次いで「家族と過ごす居場所」が大切にされており,この2つの居場所と比較すると,「家族以外の人と過ごす居場所」を大切であると感じている人が少ないことが示された。
考 察
3つの居場所の中で自尊心とレジリエンスに対して最も大きな影響を与えているのは,男女ともに「家族と過ごす居場所」に対する居場所感であることが示された。青年期後期では親子関係が変化し対等な親子関係になることから,より親密な親子関係が築かれ,「家族と過ごす居場所」に対する居場所感が心理的側面に大きく影響を与えているのだと考えられる。
また「家族以外の人と過ごす居場所」についても,男女共にレジリエンスに対して影響を与えていることが示された。よって,大学生にとっては「家族と過ごす居場所」と同じ働きを持っている部分もあると考えられる。
今回,「一人で過ごす居場所」についてはレジリエンスに対する直接的な影響は認められなかったが,居場所の有無に関する質問について,「ある」と回答した参加者が3つの居場所の中で最も多かったことや,居場所の順位に関する質問について「一人で過ごす居場所」が1位であると回答した参加者が最も多かったことから,大学生にとって「一人で過ごす居場所」は重要なものであると考えられ,今後はさらにその役割を明らかにしていくべきであると考える。
教育現場における不登校問題から注目されるようになった概念に「居場所」という概念がある。「居場所」については様々な研究がなされているが,まだ明確な定義はない。これまでの研究では,重要な他者に対する居場所感はレジリエンスに直接的に影響を与えないことが示されている。しかし必要とされる「居場所」は発達段階ごとに異なっており,発達段階が進むと「一人で過ごす居場所」が必要になることも示されている。このことから,大学生においては必ずしもすべての「居場所」がレジリエンスと無関係とは言い切れないと考えられる。
本研究では「居場所」を「落ち着いたり,安心したりできる,居心地の良い空間」とし,大学生を対象として,どのような居場所が必要とされており,その居場所がどのような働きを持ちどのようにレジリエンスと関連しているか,自尊心を媒介変数として検討する。
方 法
参加者 大学生174名(男性86名,女性88名)が参加した。年齢は18-24歳で,平均20.30歳(SD=1.32)であった。
装置 フェース・シート,居場所に関する尺度,自尊心尺度,レジリエンス尺度からなる質問紙を用いた。居場所に関する尺度は居場所の心理的機能を参考に質問紙を作成した。自尊心に関する尺度としてはRSES-Jを用いた。レジリエンスに関する尺度としては中学生用レジリエンス尺度を用いて,再度因子分析を行った。
手続き 調査の目的や概念について説明した後,質問紙への記入を求め,その場で回収した。
結 果
居場所と自尊心がレジリエンスに至る過程を検討するために重回帰分析を行った結果,銃決定係数は .309であり,「家族と過ごす居場所」に対する居場所感が自尊心とレジリエンスに影響を与え,「家族以外の人と過ごす居場所」に対する居場所感と自尊心がレジリエンスに影響を与えていることが示された。また男女別に重回帰分析を行った結果,男性ではすべての居場所に対する居場所感が自尊心とは関連がないことが示され,「家族と過ごす居場所」と「家族以外の人と過ごす居場所」に対する居場所感がレジリエンスと正の関連を示した。一方女性においては「家族と過ごす居場所」に対する居場所感が自尊心と正の関連を示した。また「家族以外の人と過ごす居場所」に対する居場所感がレジリエンスと正の関連を示し,自尊心がレジリエンスと強い正の関連を示した。
またそれぞれの居場所につけられた順位を集計
した結果を表1に示した。「一人で過ごす居場所」が1番目に大切であるとした人が最も多く,次いで「家族と過ごす居場所」が大切にされており,この2つの居場所と比較すると,「家族以外の人と過ごす居場所」を大切であると感じている人が少ないことが示された。
考 察
3つの居場所の中で自尊心とレジリエンスに対して最も大きな影響を与えているのは,男女ともに「家族と過ごす居場所」に対する居場所感であることが示された。青年期後期では親子関係が変化し対等な親子関係になることから,より親密な親子関係が築かれ,「家族と過ごす居場所」に対する居場所感が心理的側面に大きく影響を与えているのだと考えられる。
また「家族以外の人と過ごす居場所」についても,男女共にレジリエンスに対して影響を与えていることが示された。よって,大学生にとっては「家族と過ごす居場所」と同じ働きを持っている部分もあると考えられる。
今回,「一人で過ごす居場所」についてはレジリエンスに対する直接的な影響は認められなかったが,居場所の有無に関する質問について,「ある」と回答した参加者が3つの居場所の中で最も多かったことや,居場所の順位に関する質問について「一人で過ごす居場所」が1位であると回答した参加者が最も多かったことから,大学生にとって「一人で過ごす居場所」は重要なものであると考えられ,今後はさらにその役割を明らかにしていくべきであると考える。