[PB069] 児童期から思春期の母子間の葛藤
葛藤の類型と子どもの心理的適応との関連
Keywords:親子間葛藤, 思春期, 児童期
【問題と目的】
児童期後期から思春期にかけ子どもの自我や自律性(autonomy)は急速に発達するため,親の権威に対する反発や自己主張が増大し,その結果として親との対立や葛藤が生じやすくなるとされている。海外においてはこの親子間葛藤に関する研究が盛んに行われているが,わが国においては,未だ十分に研究が行われていない。また,子どもの反抗に関する研究は見られるが,親自身がどのように受けとめているのか,親子間葛藤に関する親子双方の認知をとらえる研究は少ない。そこで本研究においては,児童期後期から思春期年代の子どもと主たる養育者である母親を対象とし,関係性の観点から母子の親子間葛藤の様相を明らかにすることを目的とする。また,親子間葛藤と子どもの心理的適応の関連についても検討する。
【方 法】
1.調査対象者:東海地区の公立小学校5年生から中学校3年生までとその母親1612組(男子761名,女子850名,不明1名)
2.調査時期:2013年10月~11月
3.調査手続き:担任教諭が児童生徒に質問紙が封入された封筒を配付し,家庭に持ち帰り同意の上で回答後,担任教諭に提出するよう求めた。
4.調査内容:母子双方に対して,親子間葛藤尺度(CBQ parallel version)(Sturge-Apple, Gondoli, Bonds, & Salem, 2003)22項目(4件法,1-4点)の日本語翻訳版を実施した。この尺度は親用と子ども用に分かれているが同一概念を測定する平行尺度である。本研究では開発者の許可を得て翻訳版を作成した。また,子どもに対しては,心理的適応の指標をして,精神的健康尺度(WHO-Five Well-Being Index)(岩佐他,2007)5項目(6件法,0-3点)を実施した。
【結果と考察】
1.クラスター分析による親子間葛藤の類型化
親子間葛藤の様相の個人差を明らかにするために,母子双方の親子間葛藤得点(z得点)に基づき非階層的クラスター分析(k-means法)を行った。そして,各クラスターの特徴の解釈可能性の観点から,5つのクラスターを抽出した。各クラスターの命名と最終クラスター中心の数値はTable 1とFig.1に示す通りである。この結果,母子が親子間葛藤の程度について同じような水準で認知している親子と認知の不一致が見られる親子が存在することが示された。
2.親子間葛藤と子どものwell-beingとの関連
親子間葛藤と子どもの心理的適応との関連を検討するために,変数間の相関係数と偏相関係数を算出した。その結果,母子の親子間葛藤得点間の相関係数は.51(p<.001)であり,子どものwell-being得点との相関は母親が-.27(p<.001),子どもが-.47(p<.001)であった。偏相関は母親が-.04(ns),子どもが,-.40(p<.001)であった。
続いて親子間葛藤の類型と心理的適応との関連を検討するために,5つの群のwell-being得点に対して一要因分散分析を行った(Table1)。その結果,群の主効果は有意(F (4,1356)=72.85,p<.001,偏イータ2乗=.18)であった。多重比較(TukeyHSD)の結果では,葛藤中得点群と母親葛藤優位群,母子高葛藤群と子ども葛藤優位群の間に有意な得点差が見られなかった以外には,すべての群間において有意なwell-beingの得点差が見られた。
これらの結果より母子の葛藤の様相には様々な類型が存在するが,子どもが報告するwell-beingの程度は子ども自身が認知している親子間葛藤の程度と関連し,母親の認知している親子間葛藤の程度とは関連していないことが示唆された。
児童期後期から思春期にかけ子どもの自我や自律性(autonomy)は急速に発達するため,親の権威に対する反発や自己主張が増大し,その結果として親との対立や葛藤が生じやすくなるとされている。海外においてはこの親子間葛藤に関する研究が盛んに行われているが,わが国においては,未だ十分に研究が行われていない。また,子どもの反抗に関する研究は見られるが,親自身がどのように受けとめているのか,親子間葛藤に関する親子双方の認知をとらえる研究は少ない。そこで本研究においては,児童期後期から思春期年代の子どもと主たる養育者である母親を対象とし,関係性の観点から母子の親子間葛藤の様相を明らかにすることを目的とする。また,親子間葛藤と子どもの心理的適応の関連についても検討する。
【方 法】
1.調査対象者:東海地区の公立小学校5年生から中学校3年生までとその母親1612組(男子761名,女子850名,不明1名)
2.調査時期:2013年10月~11月
3.調査手続き:担任教諭が児童生徒に質問紙が封入された封筒を配付し,家庭に持ち帰り同意の上で回答後,担任教諭に提出するよう求めた。
4.調査内容:母子双方に対して,親子間葛藤尺度(CBQ parallel version)(Sturge-Apple, Gondoli, Bonds, & Salem, 2003)22項目(4件法,1-4点)の日本語翻訳版を実施した。この尺度は親用と子ども用に分かれているが同一概念を測定する平行尺度である。本研究では開発者の許可を得て翻訳版を作成した。また,子どもに対しては,心理的適応の指標をして,精神的健康尺度(WHO-Five Well-Being Index)(岩佐他,2007)5項目(6件法,0-3点)を実施した。
【結果と考察】
1.クラスター分析による親子間葛藤の類型化
親子間葛藤の様相の個人差を明らかにするために,母子双方の親子間葛藤得点(z得点)に基づき非階層的クラスター分析(k-means法)を行った。そして,各クラスターの特徴の解釈可能性の観点から,5つのクラスターを抽出した。各クラスターの命名と最終クラスター中心の数値はTable 1とFig.1に示す通りである。この結果,母子が親子間葛藤の程度について同じような水準で認知している親子と認知の不一致が見られる親子が存在することが示された。
2.親子間葛藤と子どものwell-beingとの関連
親子間葛藤と子どもの心理的適応との関連を検討するために,変数間の相関係数と偏相関係数を算出した。その結果,母子の親子間葛藤得点間の相関係数は.51(p<.001)であり,子どものwell-being得点との相関は母親が-.27(p<.001),子どもが-.47(p<.001)であった。偏相関は母親が-.04(ns),子どもが,-.40(p<.001)であった。
続いて親子間葛藤の類型と心理的適応との関連を検討するために,5つの群のwell-being得点に対して一要因分散分析を行った(Table1)。その結果,群の主効果は有意(F (4,1356)=72.85,p<.001,偏イータ2乗=.18)であった。多重比較(TukeyHSD)の結果では,葛藤中得点群と母親葛藤優位群,母子高葛藤群と子ども葛藤優位群の間に有意な得点差が見られなかった以外には,すべての群間において有意なwell-beingの得点差が見られた。
これらの結果より母子の葛藤の様相には様々な類型が存在するが,子どもが報告するwell-beingの程度は子ども自身が認知している親子間葛藤の程度と関連し,母親の認知している親子間葛藤の程度とは関連していないことが示唆された。