日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB070] 幼児の仲間との相互作用のきっかけ

仲間入りと仲間入れに着目して

藤田文 (大分県立芸術文化短期大学)

キーワード:仲間入り, 幼児, 相互作用

【問題と目的】
本研究では,幼児の仲間との相互作用のきっかけについて,相手の遊びに入り込む仲間入りと相手を自分の遊びに引き込む仲間入れに着目して研究する。松井ら(2001)では,幼児は相手の活動へ仲間入りするだけではなく,相手を引き込むことや新たな活動を一緒に開始していること,また直接的,明示的な方略により相互作用のきっかけをつかんでいることが見出された。
しかし従来,仲間入りと仲間入れのどちらの出現が多いのか,用いられる方略が異なるのかについて直接検討されていない。従って本研究では,この二つを直接比較する。どちらが多く出現するのか,方略がそれぞれで異なるのか検討する。また,従来の研究(松井, 2001)と同様,遊び場面の特徴によって方略が異なるかどうかも再検討する。
【方 法】
対象者:保育園の園児57名(2歳から6歳)。
手続き:一人15分程度の自由遊び場面をビデオ観察した。総観察時間は20時間だった。
【結果と考察】
(1)仲間入りと仲間入れの出現:抽出した事例数は仲間入りが91事例,仲間入れが78事例で,仲間入り事例数の方が仲間入れよりもやや多いが,大きな違いはなかった。
(2)仲間入りと仲間入れの方略の違い:松井ら(2001)を参考に,仲間入りと仲間入れの各分類を表1と表2に示した。最も多かったのは,仲間入り,仲間入れでどちらも「暗黙」方略(直接的でない間接的・婉曲的な表現。非言語的に身振りで表されているものを含む)だった。また二番目に多かったのは,仲間入りでは「模倣・追従」方略で,仲間入れでは「呼びかけ」方略だった。
次に各方略を成功と失敗で分類した。仲間入りでは「明示」方略,「模倣・追従」方略が成功しやすいことが示された。仲間入れでは「暗黙」方略が成功しやすいことが示された。「質問」方略は仲間入りと仲間入れの両方で成功しやすかった。その一方で,「攻撃」方略,「呼びかけ」方略は,仲間入りと仲間入れの両方で失敗しやすいことが示された。
(3)遊び場面による方略の違い:オープンスペースと区画スペースという空間的な違いによって,仲間入りと仲間入れで使用された方略が異なるのかどうか検討した。
分析の結果,オープンスペースの仲間入りで「明示」「質問」「呼びかけ」方略,区画スペースの仲間入りで「暗黙」方略の成功率が高かった。またオープンスペースの仲間入れで「質問」方略,区画スペースの仲間入れで「暗黙」方略の成功率が高かった。区画スペースでは「明示」「質問」が失敗率が高かった。区画スペースでは,遊びのメンバーが決まっていてそれ以上仲間に入れたくない場合も多く,明確な方略がむしろ失敗し,暗黙のうちに仲間に入ってしまう方が成功しやすい場合があると考えられる。
(本研究は,科学研究費基盤研究課題番号2638091の補助を受けた)