日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB071] 幼児期の協同性の発達過程と支援(3)

5歳児のエピソードにみるメタ認知的活動と協同性への支援

藤谷智子 (武庫川女子大学)

キーワード:メタ認知的活動, 協同性, エピソード

【目 的】
本研究は,公立幼稚園の先生方によるエピソード記録から,幼児期の協同性の発達過程を描き,その支援のポイントを抽出し実践し,その評価を行っていくことを目的としている。これまでの報告では,(1)においては3歳児の,(2)においては5歳児の協同性の発達と支援との関連性を中心に論じた。本報告では,5歳児のメタ認知的活動と協同性への支援のあり方について,意識的に支援を行ったエピソードから検討していく。
メタ認知的活動と協同性への発達的支援としては,特に幼児の「振り返り活動」への支援を重視し,表1のような振り返り活動の発達過程と保育者の支援についての仮説をたてた。振り返り活動とは,一般には,一連の遊びの後に,その遊びについて思い出したり,考えたり,またそこから次の遊びについて考えることを指す。本研究では,遊びの途中での振り返りや,遊びの導入にあたってこれまでの遊びについて思い出すことも含むこととする。また,発達時期を4つに分けているが,これを実態の分類にも用いていく。
なお,当初のエピソードの分類と支援のポイントの抽出は,筆者と記録者の先生方とで話し合いながら行ったが,本報告では表1の仮説に従った分類を行った。既報告における仮説としての発達過程との関連性についても考察していく。
【方 法】
2012~2013年度,阪神間のK市のK公立幼稚園(全5クラス)において,担任に各クラス3名の園児を対象として,1年間ないし2年間,継続的にエピソードを記録していただいた。抽出児は,年度当初対人関係がスムーズに形成できていると思われる幼児と逆に気になる幼児を含んでいる。本報告の対象となるエピソード数は,2013年度の5歳児1クラス,各幼児についてほぼ月に1~2のエピソード数としたので,計42エピソードを分析対象とした。
なお,他児に子どもの考え等を伝える働きかけや共感の言葉を含む保育者の評価的な言葉,計画についての言葉かけ等は,その他として分類する。
【結果及び考察】
表2が分類した結果である。当初の分類である「友だちと関わっている姿の視点」に関しては,例えば同じ「(8)思いや考えを伝え合いながら遊ぶ」であっても,保育者の支援のあり方に対する思いによって,実際の支援はかなり異なることが具体的に示された。5歳児クラスでは,一人の幼児への言葉かけが他児との協同性を培う意図のもとに行われている。特に,保育の時期が進むにつれて,子ども同士の話し合いが活発になると,教師の支援は,振り返り活動そのものに関してではなく,「これからどうするの?」というその他cや,その他dの子ども同士の話し合いを見守ったり,教材や用具の準備という環境構成をしたりという支援が中心となる。
今後の課題は,3・4歳児の分類と付き合わせることにより,Ⅰの水準からの発達過程を明らかにすることと,「振り返り活動」そのものを対象としたエピソードの収集と分析であると考えている。
謝 辞
本研究は,エピソード記録を提供してくださった先生方との共同研究と呼ぶべきものです。ここに感謝の意を表します。