The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PB

Wed. Aug 26, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PB073] 児童期中期における喜び,悲しみ,怒りの感情解釈能力(感情的視点取得能力)と 規則および対人場面の役割取得能力,クラス内行動の関係

本間優子1, 内山伊知郎2 (1.新潟青陵大学, 2.同志社大学)

Keywords:感情解釈能力, 役割取得能力, クラス内行動

目 的
感情解釈能力(感情的視点取得能力)とは,「他者の内的状態である感情を推測する能力」と定義され,役割取得能力の下位要素と考えられる(伊藤,1999)。役割取得能力とは,他者の立場に立って心情を推し量り,自分の考えや気持ちと同等に,他者の考えや気持ちを受け入れ,調整し,対人交渉に生かす能力であり(荒木,1991),児童期後期を対象とした本間・内山(2002a,2005a)の検討により役割取得能力と児童のクラス内行動との関連が検討されている。
本研究では役割取得能力の低い児童へのクラス内行動改善のための介入プログラムを作成するにあたり,まずは感情推測能力(感情的視点取得能力)と役割取得能力の関連を明らかにし,その上でクラス内行動との関連について検討することを目的とした。
方 法
対象者
調査対象は公立小学校の3,4年生に在籍する児童であった。欠損値を含むデータを省いた129名のデータを分析対象とした。内訳は,3年生65名(男子32名,女子33名),4年生64名(男子34名,女子30名)であった。
調査内容
感情解釈能力(感情的視点取得能力)測定課題について
感情解釈能力(感情的視点取得能力)測定課題として,山田(2010)の状況課題を各感情(喜び,悲しみ,怒り)につき,それぞれ1題ずつ使用した。課題は主人公の表情のない4コマ漫画であり,それぞれの感情に基づくストーリー展開となっている。回答方法として,主人公の感じた感情について①どんな感情を感じているか②どうしてそう思ったか の2点について自由記述で回答を求めた。評定方法は0点(設定した感情を理解していない),1点(ある程度理解している,類似の感情は述べているがうまく言語化できていない),2点(良く理解している)の3件法であった(山田,2010)。
役割取得能力測定課題について
本間・内山(2002b)で作成された課題を使用した。課題は荒木(1988)の木のぼり課題に準じているが,物語の内容は規則場面と対人場面の2種類で作成されている。発達段階の評定方法は荒木(1988)に従い,1点(段階0B),2点(段階1),3点(段階2),4点(段階3)であった。
クラス内行動測定尺度について
教師評定によるクラス内行動測定課題として,本間・内山(2002a)で作成された教師によるクラス内行動評定尺度より,授業不参加行動(3項目),規則遵守行動(3項目)を用いた。さらに,Interpersonal Competence Scale-Teacher(Cairns, Leung, Gest, & Cairns, 1995)より,他者配慮行動(4項目)を用いた。 両尺度とも回答方法は5件法であった。
倫理的配慮
調査は対象校の各校長に事前に説明を行い,同意書に署名を得た上で行われた。なお,本研究は新潟青陵大学倫理審査委員会において審査を受け,承認を得ている。
結 果
感情解釈能力(感情的視点取得能力)課題について,喜び,悲しみ,怒りについて各々得点の分布を示す(Table1)。
感情解釈能力得点(感情的視点取得能力;喜び,悲しみ,怒り)と役割取得能力(規則および対人場面)の発達段階の関連について検討を行うため,Kruskal-Wallis検定を行った。その結果,「怒り」に対する感情解釈能力(感情的視点取得能力)のみ,規則場面の役割取得能力の発達段階と有意差が認められた(χ2=6.72, df=2, p<.05)。対人場面の役割取得能力については,有意差は認められなかった(χ2=1.01, df=2, n.s.)
次に,クラス内行動との関連について検討を行った。喜び,悲しみの感情解釈能力(感情的視点取得能力)については,授業不参加行動(χ2=7.09, df=2, p<.05, χ2=7.40, df=2, p<.05)および規則遵守行動について関連が認められた(χ2=5.02, df=2, p<.10, χ2=6.86, df=2, p<.05)。他方,規則および対人場面の役割取得能力とクラス内行動の関連について検討するためKruskal-Wallis検定を行ったが,両者の関連は認められなかった。
考 察
本研究から役割取得能力の向上には子どもの「怒り」に対する理解に焦点を当てたプログラム作成の有用性の可能性を示唆した。クラス内行動については,先行研究(本間・内山;2003,2005a)とは異なり,児童期中期では役割取得能力ではなく感情解釈能力がクラス内行動と関連することが明らかとなった。今後はこの知見を参考に介入プログラムを開発し,実践に生かしていきたい。
謝 辞
本研究はJSPS科研費26780505の助成を受けた。