[PB075] 幼稚園4歳児における他児の対人葛藤場面への介入
3歳児との比較を中心に
キーワード:対人葛藤, 介入, 4歳児
問題と目的
幼児は,幼稚園で対人葛藤を起こすようになるが,並行して他児の対人葛藤に介入するようにもなり,その経験は幼児の社会性の発達を考えるうえで重要であろう。そこで,本研究では,3歳児からの縦断的調査を通して,幼稚園4歳児は,他児が起こしている対人葛藤にどのように介入するのか,その変化を明らかにしたい。それにあたって,4歳児の介入は3歳児と比較して,状況変化や解決にどのように機能,貢献するようになるのかを検討する。
方 法
関西圏にある公立幼稚園の4歳児クラスに在籍する園児29名及び教師を調査協力者とした。観察回数は当該年度の4月から3月まで計33回であった。なお,このクラスは3歳児クラスより同一のコホートの幼児を縦断的に観察した。3歳児クラスでは,園児30名及び教師を協力者とした。観察回数は,前年度の6月から3月まで計38回であった。記録は,園児と教師の言動を筆記及び音声記録と静止画記録によって採取した。調査時の記録をもとに,詳細な文字記録を作成し,それを分析資料とした。分析は,カテゴリーのコーディング及び事例の解釈的分析を行った。
結果と考察
1. 4歳児の介入の全体的傾向
オープンコーディングの結果,3,4歳児の介入の行為については,〈阻害〉,〈注視〉,〈声掛け〉,〈提案〉,〈抑制〉,〈教師への伝達〉,〈代弁〉,〈注意〉,〈加勢〉,〈仲裁〉が見られた。介入件数は,4歳児においては76件,3歳児においては,96件見られた。
4歳児では,3歳児よりも,教師のみの介入が減少し,幼児による介入が増加した。4歳児クラスの担任教師は,対人葛藤場面の解決を期待して,葛藤場面に積極的に介入することを控えており,実際に教師のみの介入が減少し,介入者は幼児のみが増加した。
3歳児で見られた〈阻害〉が,4歳児では全く見られなくなった。〈注視〉,〈声掛け〉は,3歳児よりも4歳児のほうが減少した。〈提案〉は,3歳児では介入児だけでなされることはなかったが,4歳児では半数以上が介入児だけでなされていた。
2.状況の変化への関与
3歳児においては,〈阻害〉のように葛藤場面の解決と関連付けられない行動が見られたが,4歳児では全く見られなくなった。また,3歳児では,〈注視〉や〈声掛け〉のように葛藤場面に関心は見られるが,間接的な働きかけに留まることがしばしば見られたが,4歳児では減少していた。このように,4歳児においては,消極的,間接的な介入が減少し,当事者に積極的に働きかける介入が多く起こるようになり,介入が状況の変化や解決に向けて機能し始めた。
3.対人葛藤の当事者の幼児の「介入」への反応
3歳児では提案を受けても,当事者はそれに対して反応を示していなかった。また,加勢があれば当事者は従順に従って,解決への意志が示されにくかった。他方,4歳児では,当事者は介入児による提案を実行したり,加勢にも諾否の別を示すようになり,当事者も自らの問題への解決に意思を示していた。
4.対人葛藤の当事者の内的状態への言及
⑴ なぐさめの出現
3歳児における〈加勢〉では,介入児は葛藤場面を味方する幼児にとって有利な方向へと動かそうとしていた。他方,4歳児における〈加勢〉では,葛藤場面を一方の幼児にとって有利な方向へと導こうとする言動だけではなく,「さみしいよね」というように,不利な状況にある幼児の内的状態に言及してなぐさめる行動が見られるようになった。なぐさめは当事者を有利な方向へと導くことにはならなかったが,なぐさめが生じたことは介入者の状況理解が進んでいることを示唆している。
⑵ 〈仲裁〉における当事者の意図や内的状態への言及
3歳児では,教師が当事者に対応している場面で,教師が示唆した解決法を,介入児が当事者に代わって行っている場合が多かった。それに対して,4歳児になると,教師に解決法を示唆されなくても,当事者の内的状態に言及しつつ当事者同士の関係をとりなす行動を示せるようになった。
5.対人葛藤の当事者の行動の方向付け
3歳児が〈注意〉するときは,「喧嘩しちゃだめだよ」,「やめなさい」といったように教師の対応を模倣しているような発言が多かった。4歳児においてもその傾向が強かったが,「聞いてて嫌になる」等と介入児が自ら自分の印象を示し,やめさせることに方向付ける行動が見られるようになった。
総合的考察
以上より,4歳児の介入は,3歳児よりも,状況変化や解決への関与や貢献が強まっていたことが示唆される。それは,当事者自身も介入に対して意志を持って反応するようになったことと連動しているためであろう。また,介入児は教師の模倣や型通りの介入をするだけではなく,自らの印象を語るようになり,介入が実質的に機能し始めたと言える。
幼児は,幼稚園で対人葛藤を起こすようになるが,並行して他児の対人葛藤に介入するようにもなり,その経験は幼児の社会性の発達を考えるうえで重要であろう。そこで,本研究では,3歳児からの縦断的調査を通して,幼稚園4歳児は,他児が起こしている対人葛藤にどのように介入するのか,その変化を明らかにしたい。それにあたって,4歳児の介入は3歳児と比較して,状況変化や解決にどのように機能,貢献するようになるのかを検討する。
方 法
関西圏にある公立幼稚園の4歳児クラスに在籍する園児29名及び教師を調査協力者とした。観察回数は当該年度の4月から3月まで計33回であった。なお,このクラスは3歳児クラスより同一のコホートの幼児を縦断的に観察した。3歳児クラスでは,園児30名及び教師を協力者とした。観察回数は,前年度の6月から3月まで計38回であった。記録は,園児と教師の言動を筆記及び音声記録と静止画記録によって採取した。調査時の記録をもとに,詳細な文字記録を作成し,それを分析資料とした。分析は,カテゴリーのコーディング及び事例の解釈的分析を行った。
結果と考察
1. 4歳児の介入の全体的傾向
オープンコーディングの結果,3,4歳児の介入の行為については,〈阻害〉,〈注視〉,〈声掛け〉,〈提案〉,〈抑制〉,〈教師への伝達〉,〈代弁〉,〈注意〉,〈加勢〉,〈仲裁〉が見られた。介入件数は,4歳児においては76件,3歳児においては,96件見られた。
4歳児では,3歳児よりも,教師のみの介入が減少し,幼児による介入が増加した。4歳児クラスの担任教師は,対人葛藤場面の解決を期待して,葛藤場面に積極的に介入することを控えており,実際に教師のみの介入が減少し,介入者は幼児のみが増加した。
3歳児で見られた〈阻害〉が,4歳児では全く見られなくなった。〈注視〉,〈声掛け〉は,3歳児よりも4歳児のほうが減少した。〈提案〉は,3歳児では介入児だけでなされることはなかったが,4歳児では半数以上が介入児だけでなされていた。
2.状況の変化への関与
3歳児においては,〈阻害〉のように葛藤場面の解決と関連付けられない行動が見られたが,4歳児では全く見られなくなった。また,3歳児では,〈注視〉や〈声掛け〉のように葛藤場面に関心は見られるが,間接的な働きかけに留まることがしばしば見られたが,4歳児では減少していた。このように,4歳児においては,消極的,間接的な介入が減少し,当事者に積極的に働きかける介入が多く起こるようになり,介入が状況の変化や解決に向けて機能し始めた。
3.対人葛藤の当事者の幼児の「介入」への反応
3歳児では提案を受けても,当事者はそれに対して反応を示していなかった。また,加勢があれば当事者は従順に従って,解決への意志が示されにくかった。他方,4歳児では,当事者は介入児による提案を実行したり,加勢にも諾否の別を示すようになり,当事者も自らの問題への解決に意思を示していた。
4.対人葛藤の当事者の内的状態への言及
⑴ なぐさめの出現
3歳児における〈加勢〉では,介入児は葛藤場面を味方する幼児にとって有利な方向へと動かそうとしていた。他方,4歳児における〈加勢〉では,葛藤場面を一方の幼児にとって有利な方向へと導こうとする言動だけではなく,「さみしいよね」というように,不利な状況にある幼児の内的状態に言及してなぐさめる行動が見られるようになった。なぐさめは当事者を有利な方向へと導くことにはならなかったが,なぐさめが生じたことは介入者の状況理解が進んでいることを示唆している。
⑵ 〈仲裁〉における当事者の意図や内的状態への言及
3歳児では,教師が当事者に対応している場面で,教師が示唆した解決法を,介入児が当事者に代わって行っている場合が多かった。それに対して,4歳児になると,教師に解決法を示唆されなくても,当事者の内的状態に言及しつつ当事者同士の関係をとりなす行動を示せるようになった。
5.対人葛藤の当事者の行動の方向付け
3歳児が〈注意〉するときは,「喧嘩しちゃだめだよ」,「やめなさい」といったように教師の対応を模倣しているような発言が多かった。4歳児においてもその傾向が強かったが,「聞いてて嫌になる」等と介入児が自ら自分の印象を示し,やめさせることに方向付ける行動が見られるようになった。
総合的考察
以上より,4歳児の介入は,3歳児よりも,状況変化や解決への関与や貢献が強まっていたことが示唆される。それは,当事者自身も介入に対して意志を持って反応するようになったことと連動しているためであろう。また,介入児は教師の模倣や型通りの介入をするだけではなく,自らの印象を語るようになり,介入が実質的に機能し始めたと言える。