日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB076] 成人生成期の子の親との関係

「親からの精神的自立」「親への親密性」からみた父息子・父娘・母息子・母娘間差

水本深喜 (国立成育医療研究センター)

キーワード:親子関係, 精神的自立, 親密性

問 題
母娘関係は,一卵性母娘といわれるほどに互いの距離が近いとされる。それは,特に自立期である成人生成期(Arnett, 2000)の娘の自立不全へと繋がると懸念される。それでは,母娘関係は,本当に他の組み合わせの親子関係と比較して,距離が近く,自立的ではない関係なのだろうか。これを明らかにするために,本研究ではまず,母娘関係測定のために作成した「親からの精神的自立尺度」(水本・山根,2011)「母親への親密性尺度」(水本,2013)が,父息子,父娘,母息子といった親子関係にも適用できるのかどうかを確認する。次いで,全組み合わせの親子関係間での「親からの精神的自立」「親への親密性」の差を検討する。
方 法
「親からの精神的自立尺度」「母親への親密性尺度」を用い,これにこれらの尺度の「母親」という部分を「父親」に変えた尺度を加え,「父親」「母親」との関係について,3大学における18歳から24歳の男女大学生(平均年齢18.9歳)を対象に調査した。これらの尺度はいずれも5件法で,母娘関係について信頼性・妥当性が確認されている。
結果と考察
「親からの精神的自立尺度」「母親への親密性尺度」について,「父息子」「父娘」「母息子」「母娘」合算データおよび4種の親子関係別データについて因子分析を行った。その結果,「親への親密性尺度」の2項目が削除され,「親からの精神的自立尺度」「親への親密性尺度」が新たに作成された。各下位尺度についてα係数による信頼性,確認的因子分析による因子的妥当性を検討し,各尺度が,4種の親子関係を測定できることを確認した。
次いで,息子・娘(被験者間要因)×対父親・対母親(被験者内要因)の混合二要因分散分析を行った(Table1)。その結果,「親からの精神的自立」では,娘は息子よりも親からの精神的自立度が高く,双方とも,対父母間に差はなかった。「親への親密性」では,各下位尺度で交互作用が見られた。総じて親密性は息子より娘で高く,対父親より対母親で高かった。しかし,息子の「親の価値観への捉われ」のみで,対父母間で差がなかった。「親への心づかい」は,対母親のみで息子より娘が高かった。「親への絶対的安心感」は,娘が母親に対して抱くものが最も大きかった。母娘関係について考察すると,娘は,息子よりも両親からより精神的に自立している一方で,母親への親密性をより抱いており,「親の価値観への捉われ」の高さは母娘関係特有であると考えられた。