[PC027] 非教育学部における教職志望学生の教職意識に関する研究(2)
教師からの被教育体験の認知と授業・教師・子どもイメージとの関連,教職志望度に着目して
Keywords:非教育学部の教職志望学生, 教職意識
問題と目的
本研究の目的は非教育学部における教職志望学生の教師からの被教育体験の認知と授業・教師・子どもイメージとの関連を教職志望度に着目して検討することである。
教員養成の質の向上や質保証が一層求められる昨今,教育学部以外の学生における教職志望者や教員免許取得者においても同様にその質保証が求められている。そして,全学教職課程の質保証に関する知見や,全学教職課程履修学生を対象としたプログラムの効果を検討した知見が,高旗ほか(2013),三島ほか(2014)などにおいて見られる。
一方,教員養成を行っていく際,着目すべき重要なことの一つとして教職意識が考えられる。すなわち,教職に対しての理解や例えば授業や教師といったことをどのように捉えているかといったことも重要だと考えられる。この点に関して,例えば,教育実習参加群と非参加群の学生の学校イメージや高校の先生イメージなどの教職に対する意識や教員についてのイメージを検討している研究(甲村,2012)も見られるが,多くはない。また,学生の教職意識の影響要因を検討していく事も必要であろう。影響要因の一つとして,彼らの被教育体験が考えられ,三島(2013)により,非教育学部生の教職意識と教師からの被教育体験の認知との関連について検討されている。そして,教師に対する安心感を抱けるほど授業を作り手の立場でイメージできることなどが示唆されている。しかし,ここでは対象を一括りにして検討しており,その教職志望度の差異には着目していない。教職志望が高い学生もいれば低い学生もいるだろうし,志望度の高低によって非教育体験の認知と授業・教師・子どもイメージの関連も異なる可能性が考えられる。そこで,本研究はその点に関して検討することとした。
方 法
調査時期・協力者:国立大学法人X大学に所属する教育学部以外の学生で教員免許取得を希望している学生を対象に2013年9,10月に調査を行い,有効回答が得られた136名が分析対象であった。
調査手続き:まず過去の教師で最も印象に残っている教師を小学校,中学校,高校の中から1名想起してもらい,その教師を選んだ理由について自由に記述してもらった。その後,被教育体験の認知に関すること並びに教職意識として授業・教師・子どもイメージへの回答を求めた。
結果と考察
まず教職志望度への回答を基に,教職志望高群(66名)・低群(70名)に分類した。そして,「教師のサポート」「信頼感」それぞれに対して,各因子を独立変数とし,「授業イメージ尺度」「教師イメージ尺度」「子どもイメージ尺度」それぞれの各因子を従属変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
1.授業イメージとの関連 影響のあった点に着目すると,低群は教師の信頼感の「不信」が授業イメージの「マンネリズム」に正の影響,同じく信頼感の「役割遂行評価」が「マンネリズム」に負の影響を及ぼしていた。一方,高群では教師のサポートの「学習指導」が「楽しさ」「臨機応変」「不透明」に,「生徒指導」が「組み立て」にそれぞれ正の影響を及ぼしていた。また,信頼感の「安心感」が「組み立て」に正の影響を及ぼしていた。これらの結果から,高群の学生は低群に比べ被教育体験の認知と授業イメージとの関連が強く,サポートを受けたかどうかが重要である一方で,低群の学生は信頼感が低いと授業をネガティブにイメージするといったことが示唆された。
2.教師イメージとの関連 まず,低群は信頼感の「不信」が「権力者」に正の影響を及ぼしていた。一方,高群は教師のサポートの「学習指導」が「知識の伝達者」に,「生徒指導」が「努力家・サポーター」「リーダー」にそれぞれ正の影響を与えていた。また,信頼感の「不信」が「権力者」に,「安心感」が「リーダー」「知識の伝達者」に正の影響を与えていた。ここから,教師への信頼感の不信は低群高群共に権力者としての教師イメージに影響することが示唆された。また,高群においては,学習指導や生徒指導に関するサポートを受けたことや教師への安心感を感じられることが様々な教師イメージに影響していることが示唆された。
3.子どもイメージとの関連 まず,低群においては,教師のサポートのうち「生徒指導」が「純粋性」に正の影響を与えていた。また,信頼感の「不信」が「批判性」「成長性」「自己中心性・二面性」「愛らしさ」「悲観的・不信」にそれぞれ正の影響を与えていた。一方,高群においては,教師のサポートのうち「学習指導」が「批判性」「自己中心性・二面性」「創造性」に正の影響を与え,「生徒指導」が「純粋性」「繊細さ」に正の影響を与えていた。また,信頼感の「安心感」が「成長性」に,「不信」が「愛らしさ」に影響を与えていた。これの結果から,高群にとってはサポートを受けたことが子どもイメージの多様な側面と関連し,低群では教師への信頼感,とりわけ不信が多様な子どもイメージの側面と関連があることが示唆された。
本研究の目的は非教育学部における教職志望学生の教師からの被教育体験の認知と授業・教師・子どもイメージとの関連を教職志望度に着目して検討することである。
教員養成の質の向上や質保証が一層求められる昨今,教育学部以外の学生における教職志望者や教員免許取得者においても同様にその質保証が求められている。そして,全学教職課程の質保証に関する知見や,全学教職課程履修学生を対象としたプログラムの効果を検討した知見が,高旗ほか(2013),三島ほか(2014)などにおいて見られる。
一方,教員養成を行っていく際,着目すべき重要なことの一つとして教職意識が考えられる。すなわち,教職に対しての理解や例えば授業や教師といったことをどのように捉えているかといったことも重要だと考えられる。この点に関して,例えば,教育実習参加群と非参加群の学生の学校イメージや高校の先生イメージなどの教職に対する意識や教員についてのイメージを検討している研究(甲村,2012)も見られるが,多くはない。また,学生の教職意識の影響要因を検討していく事も必要であろう。影響要因の一つとして,彼らの被教育体験が考えられ,三島(2013)により,非教育学部生の教職意識と教師からの被教育体験の認知との関連について検討されている。そして,教師に対する安心感を抱けるほど授業を作り手の立場でイメージできることなどが示唆されている。しかし,ここでは対象を一括りにして検討しており,その教職志望度の差異には着目していない。教職志望が高い学生もいれば低い学生もいるだろうし,志望度の高低によって非教育体験の認知と授業・教師・子どもイメージの関連も異なる可能性が考えられる。そこで,本研究はその点に関して検討することとした。
方 法
調査時期・協力者:国立大学法人X大学に所属する教育学部以外の学生で教員免許取得を希望している学生を対象に2013年9,10月に調査を行い,有効回答が得られた136名が分析対象であった。
調査手続き:まず過去の教師で最も印象に残っている教師を小学校,中学校,高校の中から1名想起してもらい,その教師を選んだ理由について自由に記述してもらった。その後,被教育体験の認知に関すること並びに教職意識として授業・教師・子どもイメージへの回答を求めた。
結果と考察
まず教職志望度への回答を基に,教職志望高群(66名)・低群(70名)に分類した。そして,「教師のサポート」「信頼感」それぞれに対して,各因子を独立変数とし,「授業イメージ尺度」「教師イメージ尺度」「子どもイメージ尺度」それぞれの各因子を従属変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。
1.授業イメージとの関連 影響のあった点に着目すると,低群は教師の信頼感の「不信」が授業イメージの「マンネリズム」に正の影響,同じく信頼感の「役割遂行評価」が「マンネリズム」に負の影響を及ぼしていた。一方,高群では教師のサポートの「学習指導」が「楽しさ」「臨機応変」「不透明」に,「生徒指導」が「組み立て」にそれぞれ正の影響を及ぼしていた。また,信頼感の「安心感」が「組み立て」に正の影響を及ぼしていた。これらの結果から,高群の学生は低群に比べ被教育体験の認知と授業イメージとの関連が強く,サポートを受けたかどうかが重要である一方で,低群の学生は信頼感が低いと授業をネガティブにイメージするといったことが示唆された。
2.教師イメージとの関連 まず,低群は信頼感の「不信」が「権力者」に正の影響を及ぼしていた。一方,高群は教師のサポートの「学習指導」が「知識の伝達者」に,「生徒指導」が「努力家・サポーター」「リーダー」にそれぞれ正の影響を与えていた。また,信頼感の「不信」が「権力者」に,「安心感」が「リーダー」「知識の伝達者」に正の影響を与えていた。ここから,教師への信頼感の不信は低群高群共に権力者としての教師イメージに影響することが示唆された。また,高群においては,学習指導や生徒指導に関するサポートを受けたことや教師への安心感を感じられることが様々な教師イメージに影響していることが示唆された。
3.子どもイメージとの関連 まず,低群においては,教師のサポートのうち「生徒指導」が「純粋性」に正の影響を与えていた。また,信頼感の「不信」が「批判性」「成長性」「自己中心性・二面性」「愛らしさ」「悲観的・不信」にそれぞれ正の影響を与えていた。一方,高群においては,教師のサポートのうち「学習指導」が「批判性」「自己中心性・二面性」「創造性」に正の影響を与え,「生徒指導」が「純粋性」「繊細さ」に正の影響を与えていた。また,信頼感の「安心感」が「成長性」に,「不信」が「愛らしさ」に影響を与えていた。これの結果から,高群にとってはサポートを受けたことが子どもイメージの多様な側面と関連し,低群では教師への信頼感,とりわけ不信が多様な子どもイメージの側面と関連があることが示唆された。