[PC045] 友人からの言葉かけと友人の親密度との関係
動機づけの観点から
Keywords:友人, 言葉かけ, 親密度
問題と目的
言葉かけに関する研究において,ほめ言葉や叱り言葉は受け手の動機づけや自己効力感へ影響を及ぼすことが知られている(青木 2004,竹内 1995など)。また,言葉の送り手は教師や親など,立場が上の人からのものが多い(杉森 1999,石橋 2003 など)。
そこで吉岡・森(2014)は,言葉の送り手として友人を取りあげ,友人からの言葉かけの効果を,自己効力感の観点から検討している。その結果,送り手が教師や親ではなく友人であっても,言葉かけによる自己効力感への効果がみられた。また,叱り言葉において,親密度が高い友人の言葉は低い友人の言葉に比べ,授業場面で自己効力感を下げていることを示している。
本研究は,吉岡・森(2014)の研究を継続し,友人からの言葉かけの効果を,動機づけの観点から検討することを目的とする。友人からの言葉かけは動機づけに影響を及ぼすこと,親密度が高い友人の言葉は,低い友人よりも動機づけへの影響力が大きいことが考えられる。
方法
参加者 大学生56名(男性28名,女性28名)。
親密度操作 いつも一緒にいる友人を親密度が高い友人,いつもは一緒におらず,互いをあまり知らない友人を親密度が低い友人として,送り手である友人の親密度を操作している。
場面設定 言葉かけの内容に関しては,以下のように設定した。ほめ言葉は,授業場面で“あ,解けた!さすがB!頭いいね。”,掃除場面で“Bすごい!ピカピカになってるね!みんながいやなことをやってくれてありがとう。”。叱り言葉は,授業場面で“今はプリントをする時間だよ。ちゃんとしなよ。”,掃除場面で“きれいになってないじゃん。さぼらないでちゃんとやりなよ。”。
質問項目 小川内ら(2013)による動機づけ尺度(5件法),岡田ら(2006)による大学生用学習動機づけ尺度(5件法)。なお,掃除場面においては,以上の動機づけ尺度をもとに,掃除場面において適当な質問項目となるように修正をおこなった。
結果と考察
動機づけとの関係 言葉かけ(ほめ・叱り)×場面(掃除・授業)×親密度(高・低)の3要因分散分析を行なった。その結果,言葉かけの主効果(F(1, 54)=70.164, p<.001)および場面の主効果(F(1, 54)=26.003, p<.001),言葉かけと場面における交互作用(F(1, 54)=5.126,p<.05)が有意であった。親密度の高低に関わらず,ほめ言葉群では,授業場面の方が掃除場面より得点が高いが,叱り言葉群では,このような差はみられなかった。したがって,ほめ言葉に関しては,場面によって効果が異なり,叱り言葉に関しては,場面に関わらず効果がないことがわかった。
本研究は,友人からの言葉かけの効果を,動機づけの観点から検討した。動機づけにおいては,親密度の高低による言葉かけの効果には差がなく,親密度が高い友人の言葉は,低い友人よりも動機づけへの影響力が大きいという予想は支持されなかった。親密度に関係なく,ほめられるとやる気が高まり,叱られるとやる気が下がるといえる。
また,友人からの言葉かけの効果に場面の影響がみられた。青木(2012)では,子どもは価値のあることをほめられた方が,動機づけが向上すると示唆している。本研究では,友人の言葉かけについても,同様の傾向がみられることが明らかになったといえよう。友人からの言葉かけは,多様な場面でみられるため,今後は友人からの言葉かけがどのような場面においてみられるのかを収集し,その効果を詳細に検討する必要があろう。
言葉かけに関する研究において,ほめ言葉や叱り言葉は受け手の動機づけや自己効力感へ影響を及ぼすことが知られている(青木 2004,竹内 1995など)。また,言葉の送り手は教師や親など,立場が上の人からのものが多い(杉森 1999,石橋 2003 など)。
そこで吉岡・森(2014)は,言葉の送り手として友人を取りあげ,友人からの言葉かけの効果を,自己効力感の観点から検討している。その結果,送り手が教師や親ではなく友人であっても,言葉かけによる自己効力感への効果がみられた。また,叱り言葉において,親密度が高い友人の言葉は低い友人の言葉に比べ,授業場面で自己効力感を下げていることを示している。
本研究は,吉岡・森(2014)の研究を継続し,友人からの言葉かけの効果を,動機づけの観点から検討することを目的とする。友人からの言葉かけは動機づけに影響を及ぼすこと,親密度が高い友人の言葉は,低い友人よりも動機づけへの影響力が大きいことが考えられる。
方法
参加者 大学生56名(男性28名,女性28名)。
親密度操作 いつも一緒にいる友人を親密度が高い友人,いつもは一緒におらず,互いをあまり知らない友人を親密度が低い友人として,送り手である友人の親密度を操作している。
場面設定 言葉かけの内容に関しては,以下のように設定した。ほめ言葉は,授業場面で“あ,解けた!さすがB!頭いいね。”,掃除場面で“Bすごい!ピカピカになってるね!みんながいやなことをやってくれてありがとう。”。叱り言葉は,授業場面で“今はプリントをする時間だよ。ちゃんとしなよ。”,掃除場面で“きれいになってないじゃん。さぼらないでちゃんとやりなよ。”。
質問項目 小川内ら(2013)による動機づけ尺度(5件法),岡田ら(2006)による大学生用学習動機づけ尺度(5件法)。なお,掃除場面においては,以上の動機づけ尺度をもとに,掃除場面において適当な質問項目となるように修正をおこなった。
結果と考察
動機づけとの関係 言葉かけ(ほめ・叱り)×場面(掃除・授業)×親密度(高・低)の3要因分散分析を行なった。その結果,言葉かけの主効果(F(1, 54)=70.164, p<.001)および場面の主効果(F(1, 54)=26.003, p<.001),言葉かけと場面における交互作用(F(1, 54)=5.126,p<.05)が有意であった。親密度の高低に関わらず,ほめ言葉群では,授業場面の方が掃除場面より得点が高いが,叱り言葉群では,このような差はみられなかった。したがって,ほめ言葉に関しては,場面によって効果が異なり,叱り言葉に関しては,場面に関わらず効果がないことがわかった。
本研究は,友人からの言葉かけの効果を,動機づけの観点から検討した。動機づけにおいては,親密度の高低による言葉かけの効果には差がなく,親密度が高い友人の言葉は,低い友人よりも動機づけへの影響力が大きいという予想は支持されなかった。親密度に関係なく,ほめられるとやる気が高まり,叱られるとやる気が下がるといえる。
また,友人からの言葉かけの効果に場面の影響がみられた。青木(2012)では,子どもは価値のあることをほめられた方が,動機づけが向上すると示唆している。本研究では,友人の言葉かけについても,同様の傾向がみられることが明らかになったといえよう。友人からの言葉かけは,多様な場面でみられるため,今後は友人からの言葉かけがどのような場面においてみられるのかを収集し,その効果を詳細に検討する必要があろう。