The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PC

Wed. Aug 26, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PC049] 通常学級に在籍する特別な教育的支援が必要であると思われる生徒の現状の検討Ⅰ

中学校教員へのアンケート調査から

石井恵子1, 山田淳子2, 芳賀明子3, 佐々木葉子4 (1.三鷹市立第六中学校, 2.小金井市立小金井第一中学校, 3.公立学校スクールカウンセラー, 4.公立学校スクールカウンセラー)

Keywords:特別支援教育, 通常学級での支援

Ⅰ 目 的
文部科学省が平成24年2~3月に実施した「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」の結果では,学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒6.5%のうち,校内委員会で特別な教育的支援が必要と判断された児童生徒は18.4%にとどまった。また,個別の配慮・支援について担任教員の回答では,授業時間内に教室内で「行っている」は44.6%,授業時間内に教室以外での「行っている」は9.3,授業時間以外で「行っている」が26.3%であった。本研究では,通常の学級に在籍する特別な教育的支援の必要があると思われる生徒が支援を受けるに至っていない現状の把握と課題の検討を行い,今後の支援の在り方を検討することを目的とした。
Ⅱ 方 法
1.対象:公立中学校教員12名。そのうち9名は 通常学級の担任と副担任,3名は通級制支援学級の担任で部活動顧問として通常学級の生徒にかかわっている。
2.実施期間:2014年1~3月
3.分析方法:質問紙により支援の必要があるが支援を受けるに至っていない生徒について①生徒のエピソード,②教師の関わり方,③周囲の子どもたちの関わり,④保護者の考え方,⑤校内の組織的な援助についてアンケート調査を実施した。 その結果から,トランスクリプトを作成し,KJ法によって分類し,質的研究法を用いて分析を行った。
Ⅲ 結果
アンケート調査をKJ法によって分類した結,事例にみられる課題として,コミュニケーションの課題8項目,学習の課題5項目,その他5項という結果が得られた。
①コミュニケーションの課題:「特定の友人へのこだわり」「対人関係」「他者への理解困難」「偏り・こだわり」という認知にかかわる課題,「理解困難な行動」「攻撃的な行動」という行動面の課題のほか,「自傷逃避」「泣く」
②学習の課題:「書字」「書く力の問題」という書きの課題のほか,授業についていけない」「学習のアンバランス」「低学力」
③その他:「不注意・衝動性」「整理整頓」「性格」「親子関係」「悩み・自己肯定感の低さ」が主な課題として挙げられている。
また,支援を受けるに至っていない背景として,保護者の考え方8項目,教師のかかわり5項目,関係機関との連携5項目という結果が得られた。保護者の考え方には,「子どもの集団生活の現状を認識することが難しい」「関心を持てていないように思われる」,「言いなり・かばう」,「細やかに見ているが過干渉」「ことを大きくしたくない消極的」などがあげられた。
Ⅳ 考 察
事例に見られるコミュニケーションの課題では,こだわりの強さが新たな支援につながるのに時間を要する一因となっている。学習面の課題では,書きが大きな割合を占める中学校の学習において,支援に繋がっていない生徒に書きが苦手な生徒が多いことが分かった。
支援を受けるに至っていない背景として,保護者が子どもの現状を支援につなげることを視野に検討するには至っていない様子が見られた。また,子どもの現状を客観的に捉えている保護者も,適切な支援につなげるまでには至っていなかった。教員は,保護者の意見を尊重するあまり,支援につなげる働きかけを躊躇する傾向が見られた。
調査協力者は,全員が通常学級に在籍する特別な教育的支援が必要であると思われる生徒とのかかわりを持っている。調査協力者は,特定の条件によって選定したものではなく,通常学級の生徒の担任あるいは指導にかかわる教員であって,一般的な教員であるといえる。このことから,多くの教員が特別な教育的支援が必要であると思われる生徒の指導に当たっており,それぞれに課題を感じながら指導に当たっていることがうかがわれる。
文 献
文部科学省(2004).小・中学校におけるLD, ADHD, 高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
文部科学省(2012).通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について