[PC054] 大学生の障害者に対する意識3
Keywords:障害者, 意識, 大学生
【問題意識と目的】
一昨年の報告において,それ以前から継続していた障害者に対する大学生の一連の研究の結果をある程度まとめた。そこでは対障害者と対健常者に対する意識は,多少の項目を除けば全体としてはあまり差がないという結果が得られた。この理由の一つとして障害者との共生において重要な項目(危険性がないことや性格の良さなど)は,同時に健常者との共生においても重要であるため,障害者との共生の特性が十分に表れないと考えた。そこで,質問項目を再度検討する必要性があると考え,先行研究の項目を元にリッカート法およびコンジョイント分析(全概念法)用の項目を作成した。豊村(2014)においてコンジョイント分析(全概念法)の結果の一部を報告したが,今回はこれら2つの方法による結果の違いについて報告する。
【方 法】
被験者:被験者は同じ講義内で同じ質問紙を1ヶ月間隔で3回行った大学生。最終的に分析をした被験者は1回目は135名,2回目は126名,3回目は118名であった。なお,1~3回目まで全てに回答した者は96名であった。
手続き:質問紙の構成は以下の通りである。
性別,学籍番号,学年,年齢の基本属性の他に予備的調査で作成したリッカート尺度23項目×2(対障害者,対健常者)およびコンジョィント分析用尺度(全概念尺度)11項目×2(同上),記入時に想起した障害,障害者との接触に関する内容であった。なお,リッカート尺度は4因子(人当たり,人付き合い,社会適応力,見た目)で7件法合計23項目であり,コンジョイント分析用尺度はこれらの因子を内容とする各3水準の合計11項目であった。以上の質問紙を大学の講義時間内で配布回収した。
なお,調査実施の際に,参加は任意であること,得られた結果は研究の目的以外で使用されないこと,個人のデータが開示されることはないことを説明し了承を得ていた。
【結果と考察】
調査は同じ被験者に対して一ヶ月の期間を空け3回実施した。
リッカート尺度について
因子分析の結果,対健常者についてはどの回数においても4因子構造が得られほぼ安定していた。対障害者についてはどの回数においても3因子構造が得られ安定していた。「人付き合い」因子,「見た目」因子は双方に共通であった。対健常者の「人当り」因子と「社会適応力」因子の項目が,対障害者では混合した構造になっていた。これらに比較的共通する要因は他者に対しての心配りであったため,障害者における残りの因子は「他者配慮」因子とした。
全概念尺度の結果について
平均相対重要度(関係する項目の重要視している程度を相対的に示す指標)について算出した。対障害者,対健常者ともに重要視されていた要因は順に「人当り」,「社会適応力」,「人付き合い」,「見た目」であった。最も好まれる各要因の水準の組み合わせについては対健常者では「人当り」では「良い」,「社会適応力」では「高い」,「見た目」では「良い」,「人付き合い」では「積極的」であったが,対障害者の最も好まれる各要因の水準の組み合わせについては,1回目は対健常者と同じであったが,2回目は「見た目」が「良い」から「普通」に,3回目は,それに加えて「人付き合い」が「積極的」から「普通」へと変化した。
リッカート尺度と全概念尺度の結果の比較
対健常者と対障害者ではリッカート尺度は因子構造が異なる。全概念尺度では,重視する要因の順位は同じであるが,水準には多少違いがみられた。即ち共生に関する意識は一部異なっていた。
またリッカート尺度は個々の項目について再検査信頼性は高いが天井効果がでやすい。一方全概念尺度は再検査信頼性はやや低いが,重視する要因の順位は一貫していた。ここからニーズ調査として考える場合は全概念尺度の方がより妥当な結果となった。
なお,本報告は非会員の西舘裕子氏および樋口花美氏との共同研究である。
【引用文献】
豊村和真 2014 大学生の障害者に対する意識2日本教育心理学会第55回発表論文集
一昨年の報告において,それ以前から継続していた障害者に対する大学生の一連の研究の結果をある程度まとめた。そこでは対障害者と対健常者に対する意識は,多少の項目を除けば全体としてはあまり差がないという結果が得られた。この理由の一つとして障害者との共生において重要な項目(危険性がないことや性格の良さなど)は,同時に健常者との共生においても重要であるため,障害者との共生の特性が十分に表れないと考えた。そこで,質問項目を再度検討する必要性があると考え,先行研究の項目を元にリッカート法およびコンジョイント分析(全概念法)用の項目を作成した。豊村(2014)においてコンジョイント分析(全概念法)の結果の一部を報告したが,今回はこれら2つの方法による結果の違いについて報告する。
【方 法】
被験者:被験者は同じ講義内で同じ質問紙を1ヶ月間隔で3回行った大学生。最終的に分析をした被験者は1回目は135名,2回目は126名,3回目は118名であった。なお,1~3回目まで全てに回答した者は96名であった。
手続き:質問紙の構成は以下の通りである。
性別,学籍番号,学年,年齢の基本属性の他に予備的調査で作成したリッカート尺度23項目×2(対障害者,対健常者)およびコンジョィント分析用尺度(全概念尺度)11項目×2(同上),記入時に想起した障害,障害者との接触に関する内容であった。なお,リッカート尺度は4因子(人当たり,人付き合い,社会適応力,見た目)で7件法合計23項目であり,コンジョイント分析用尺度はこれらの因子を内容とする各3水準の合計11項目であった。以上の質問紙を大学の講義時間内で配布回収した。
なお,調査実施の際に,参加は任意であること,得られた結果は研究の目的以外で使用されないこと,個人のデータが開示されることはないことを説明し了承を得ていた。
【結果と考察】
調査は同じ被験者に対して一ヶ月の期間を空け3回実施した。
リッカート尺度について
因子分析の結果,対健常者についてはどの回数においても4因子構造が得られほぼ安定していた。対障害者についてはどの回数においても3因子構造が得られ安定していた。「人付き合い」因子,「見た目」因子は双方に共通であった。対健常者の「人当り」因子と「社会適応力」因子の項目が,対障害者では混合した構造になっていた。これらに比較的共通する要因は他者に対しての心配りであったため,障害者における残りの因子は「他者配慮」因子とした。
全概念尺度の結果について
平均相対重要度(関係する項目の重要視している程度を相対的に示す指標)について算出した。対障害者,対健常者ともに重要視されていた要因は順に「人当り」,「社会適応力」,「人付き合い」,「見た目」であった。最も好まれる各要因の水準の組み合わせについては対健常者では「人当り」では「良い」,「社会適応力」では「高い」,「見た目」では「良い」,「人付き合い」では「積極的」であったが,対障害者の最も好まれる各要因の水準の組み合わせについては,1回目は対健常者と同じであったが,2回目は「見た目」が「良い」から「普通」に,3回目は,それに加えて「人付き合い」が「積極的」から「普通」へと変化した。
リッカート尺度と全概念尺度の結果の比較
対健常者と対障害者ではリッカート尺度は因子構造が異なる。全概念尺度では,重視する要因の順位は同じであるが,水準には多少違いがみられた。即ち共生に関する意識は一部異なっていた。
またリッカート尺度は個々の項目について再検査信頼性は高いが天井効果がでやすい。一方全概念尺度は再検査信頼性はやや低いが,重視する要因の順位は一貫していた。ここからニーズ調査として考える場合は全概念尺度の方がより妥当な結果となった。
なお,本報告は非会員の西舘裕子氏および樋口花美氏との共同研究である。
【引用文献】
豊村和真 2014 大学生の障害者に対する意識2日本教育心理学会第55回発表論文集