[PD002] 社会性と情動のスキルの強化・般化を図るには
「スキル再強化期間」の有効性
キーワード:社会性と情動, 社会的能力, スキル再強化期間
学校では,児童生徒の社会的能力を育成する様々な心理教育プログラムの取り組みが行われ,その成果が実証されてきているが,一方で活動内容の日常場面への般化と維持に関する問題が,多くの実践研究において指摘されている(江村・岡安,2003;藤枝・相川,2001)。
本研究では,「SEL-8S」プログラム実施後,スキルを復習的に強化・般化することをねらいとした「スキル再強化期間」を3週間設定しその有効性を検討した。
方法
調査対象 福岡県内の公立中学校1校の第1学年6学級の生徒(242名)
調査期間 平成26年6月~平成26年12月
調査内容 ⑴中学生版社会性と情動(SEL)尺度Ⅱ(試作版)8因子各5項目計40項目について,4件法(4~1点)で生徒自己評定を求め,因子ごとの得点を対象中学校1学年の平均値・標準偏差から算出される偏差値で示した。⑵中学校用規範行動尺度(山田・小泉・中山・宮原,2013)3因子15項目について,4件法(4~1点)で生徒自己評定を求め,因子ごとの得点を平均値と標準偏差から算出される偏差値で示した。調査は,事前(6月),事後(11月),強化後(12月)の3回おこなった。
実施内容 2014年9月~11月,学校行事(ふれあい合宿,合唱コンクール,定期考査)と関連づけて,短学活を含む5回のSEL-8Sプログラムの授業を実施した。各授業は,SEL-8Sプログラム(小泉・山田,2011)の中から基礎的社会的能力の育成を目指すユニットを選択した。授業は担任教師のみ,もしくは第一著者と担任で行った。授業で学んだスキルは,ポスターを掲示し各行事の取り組みの中で活用するように促した。また,学期末の3週間(2週間+1週間)を,これまでに学習したスキルを復習的に強化・般化を図る「スキル再強化期間」とした。生徒には,これまで学んだスキルを習慣として身に付けることを目標に,毎日の帰りの会でスキルの活用について自己評価を求めた。教師には,朝の会や帰りの会でスキル・態度に関連した道徳的価値を含んだ話を週1回以上する,授業などの日常生活場面での生徒の行動を意識的に観察し,望ましい行動を承認する,スキルが上手く使いこなせていない生徒に助言するなどの行動目標を設定し,教師が生徒のスキル・態度の強化・般化を促す期間とした。
結果と考察
5回のプログラムが全て実施された5学級で,欠席等でデータに欠損のある生徒を除き集計をおこなった。事前の社会性と情動尺度Ⅱの得点の上位1/3を初期高群(63人),下位1/3を初期低群(63人),中間位を初期中群(56人)とした。初期高低群ごとに,3回の調査結果を「基礎的社会的能力」「応用的社会的能力」「規範意識」について偏差値の平均を算出した。初期高低群(高群・中群・低群)×時期(事前・事後・強化後)の分散分析を行った。
低群は,「基礎的社会的能力」において,事前から事後,事前から強化後に有意な上昇が認められ,学習及び「スキル再強化期間」の有効性が示された。高群は,事後に低下しているものの,事後から強化後にかけては有意に上昇していた。対象生徒が中学1年生であることから,学習によってメタ認知が育ち,「スキル再強化期間」を通してスキルを伸ばしたのではないかと推察される(図1a)。「応用的な社会的」についても,同様に低群は事前から強化後に有意に上昇,高群は事後から強化後に有意に上昇していた(図1b)。また,規範意識については,高群・中群・低群ともに,事後に低下し,強化後に上昇する傾向が見られた(図1c)。
初期の社会的能力によって効果の差が異なっていたので,「スキル再強化期間」の在り方を検討する必要がある。
本研究では,「SEL-8S」プログラム実施後,スキルを復習的に強化・般化することをねらいとした「スキル再強化期間」を3週間設定しその有効性を検討した。
方法
調査対象 福岡県内の公立中学校1校の第1学年6学級の生徒(242名)
調査期間 平成26年6月~平成26年12月
調査内容 ⑴中学生版社会性と情動(SEL)尺度Ⅱ(試作版)8因子各5項目計40項目について,4件法(4~1点)で生徒自己評定を求め,因子ごとの得点を対象中学校1学年の平均値・標準偏差から算出される偏差値で示した。⑵中学校用規範行動尺度(山田・小泉・中山・宮原,2013)3因子15項目について,4件法(4~1点)で生徒自己評定を求め,因子ごとの得点を平均値と標準偏差から算出される偏差値で示した。調査は,事前(6月),事後(11月),強化後(12月)の3回おこなった。
実施内容 2014年9月~11月,学校行事(ふれあい合宿,合唱コンクール,定期考査)と関連づけて,短学活を含む5回のSEL-8Sプログラムの授業を実施した。各授業は,SEL-8Sプログラム(小泉・山田,2011)の中から基礎的社会的能力の育成を目指すユニットを選択した。授業は担任教師のみ,もしくは第一著者と担任で行った。授業で学んだスキルは,ポスターを掲示し各行事の取り組みの中で活用するように促した。また,学期末の3週間(2週間+1週間)を,これまでに学習したスキルを復習的に強化・般化を図る「スキル再強化期間」とした。生徒には,これまで学んだスキルを習慣として身に付けることを目標に,毎日の帰りの会でスキルの活用について自己評価を求めた。教師には,朝の会や帰りの会でスキル・態度に関連した道徳的価値を含んだ話を週1回以上する,授業などの日常生活場面での生徒の行動を意識的に観察し,望ましい行動を承認する,スキルが上手く使いこなせていない生徒に助言するなどの行動目標を設定し,教師が生徒のスキル・態度の強化・般化を促す期間とした。
結果と考察
5回のプログラムが全て実施された5学級で,欠席等でデータに欠損のある生徒を除き集計をおこなった。事前の社会性と情動尺度Ⅱの得点の上位1/3を初期高群(63人),下位1/3を初期低群(63人),中間位を初期中群(56人)とした。初期高低群ごとに,3回の調査結果を「基礎的社会的能力」「応用的社会的能力」「規範意識」について偏差値の平均を算出した。初期高低群(高群・中群・低群)×時期(事前・事後・強化後)の分散分析を行った。
低群は,「基礎的社会的能力」において,事前から事後,事前から強化後に有意な上昇が認められ,学習及び「スキル再強化期間」の有効性が示された。高群は,事後に低下しているものの,事後から強化後にかけては有意に上昇していた。対象生徒が中学1年生であることから,学習によってメタ認知が育ち,「スキル再強化期間」を通してスキルを伸ばしたのではないかと推察される(図1a)。「応用的な社会的」についても,同様に低群は事前から強化後に有意に上昇,高群は事後から強化後に有意に上昇していた(図1b)。また,規範意識については,高群・中群・低群ともに,事後に低下し,強化後に上昇する傾向が見られた(図1c)。
初期の社会的能力によって効果の差が異なっていたので,「スキル再強化期間」の在り方を検討する必要がある。