[PD004] 妻の就労形態が夫婦間の子育て葛藤に与える影響①
中学生の父母ペアデータによる子育て葛藤の差の検討
Keywords:中学生の父母, ワークライフバランス, 子育て葛藤
問題
18~34歳の未婚女性の理想とするライフコースは,「再就職コース」(35.2%)「両立コース」(30.6%)となっており,結婚後も就業することを想定している者が多いことが報告されている(国立社会保障・人口問題研究所,平成22年)。また,未婚男性も,女性に対して「再就職コース」(39.1%)の割合が最も高く,次いで「両立コース」(32.7%)を望んでおり,男性の共働き思考が高いことが報告されている(同報告)。しかし,結婚,出産,就学前育児などの理由より継続就労が難しい状況は,改善されておらず就業率と潜在的労働力率の差は「35~39歳」では15.0%,「30~34歳」で14.8%となっており,働く意欲はあるものの就業できない母親の存在がうかがえる。
仕事と家庭生活をバランスよく送り,その中で精神的にゆとりを保つためには仕事に従事する一方で,夫婦の相互理解に基づくゆとりある関わりが子育てを含めて重要である。このことは,ワークライフバランスと子育ての関連性についての研究が主に就学前の子育てに主注していることからも明らかであるが,M字型就労が顕著な日本においては,妻の再就職後特に思春期の子育て期においても重要な課題であるといえよう。太田ら(2013)では,中学生の父母ペアデータにより,夫婦の関係満足度(夫>妻),子育て葛藤(妻>夫)についてその夫婦間の差異を検討した結果を報告している。本報告は,特に母親の就労形態による影響に注目し差異を検討したものである。
対象者と調査方法
三重県A中学校の全校生徒572名の両親を対象とし,夫婦ペアでの回収数は288であった(回収率50.35%)。
質問項目;年齢,婚姻期間,父母各々の就労形態。関係満足度:諸井(1996)の夫婦関係満足尺度を使用した(6項目,4件法)。・中学生の親の子育てストレス:小武内(2011)のしつけの悩み・葛藤尺度の一部を抜粋し因子分析の結果得た4因子を下位尺度として使用した(15項目,5件法。夫:「家庭教育不安6項目」「両価性葛藤3項目」「対応の硬直3項目」「指針の不一致3項目」,妻: 家庭教育不安6項目」「両価性葛藤3項目」「対応の硬直3項目」「指針の不一致3項目」)。
結果と考察
本研究では夫が常勤職(277名,全データの95%)で,かつ妻の就労形態が常勤(50名17%),パート(160名56%),専業主婦(70名24%)のデータのみを使用し,妻の職業形態×夫婦の混合計画の二要因分散分析を行った。
まず関係満足については, 夫のほうが高いこと(p < .05)に加えて職業形態との交互作用が見られた(p < .10)。 単純効果を検討すると,妻がパート就労である場合のみ, 夫の満足度が高くなっていた。他国に比べて,就労時間が長く家事関連時間が短い日本の夫(ベネッセ,2010)にとって家事育児に柔軟に対応するために比較的タイムバインドの影響の受けにくく,かつ収入の補助を得られるパートタイムで就労する妻との関係性についての満足度が高い結果であると考えられる。
子育てストレスについて, 家庭教育不安,両価性葛藤,対応の硬直,指針の不一致のいずれも妻のほうが高く(指針の不一致のみp < .05,他はps < .001),特に,対応の硬直で職業形態の主効果(p < .10)がみられ, 妻が常勤の場合のみ,対応の硬直が低くなることが認められた。
就学前のこどもをもつ夫婦データに基づく木田(1985)では,妻がパートの場合,夫婦相互の理解は低く,双方常勤の場合は,相互理解が高いことが報告されており本調査の結果から,その傾向は子どもが思春期に達する段階でも同様の傾向であることを示唆するものといえよう。
18~34歳の未婚女性の理想とするライフコースは,「再就職コース」(35.2%)「両立コース」(30.6%)となっており,結婚後も就業することを想定している者が多いことが報告されている(国立社会保障・人口問題研究所,平成22年)。また,未婚男性も,女性に対して「再就職コース」(39.1%)の割合が最も高く,次いで「両立コース」(32.7%)を望んでおり,男性の共働き思考が高いことが報告されている(同報告)。しかし,結婚,出産,就学前育児などの理由より継続就労が難しい状況は,改善されておらず就業率と潜在的労働力率の差は「35~39歳」では15.0%,「30~34歳」で14.8%となっており,働く意欲はあるものの就業できない母親の存在がうかがえる。
仕事と家庭生活をバランスよく送り,その中で精神的にゆとりを保つためには仕事に従事する一方で,夫婦の相互理解に基づくゆとりある関わりが子育てを含めて重要である。このことは,ワークライフバランスと子育ての関連性についての研究が主に就学前の子育てに主注していることからも明らかであるが,M字型就労が顕著な日本においては,妻の再就職後特に思春期の子育て期においても重要な課題であるといえよう。太田ら(2013)では,中学生の父母ペアデータにより,夫婦の関係満足度(夫>妻),子育て葛藤(妻>夫)についてその夫婦間の差異を検討した結果を報告している。本報告は,特に母親の就労形態による影響に注目し差異を検討したものである。
対象者と調査方法
三重県A中学校の全校生徒572名の両親を対象とし,夫婦ペアでの回収数は288であった(回収率50.35%)。
質問項目;年齢,婚姻期間,父母各々の就労形態。関係満足度:諸井(1996)の夫婦関係満足尺度を使用した(6項目,4件法)。・中学生の親の子育てストレス:小武内(2011)のしつけの悩み・葛藤尺度の一部を抜粋し因子分析の結果得た4因子を下位尺度として使用した(15項目,5件法。夫:「家庭教育不安6項目」「両価性葛藤3項目」「対応の硬直3項目」「指針の不一致3項目」,妻: 家庭教育不安6項目」「両価性葛藤3項目」「対応の硬直3項目」「指針の不一致3項目」)。
結果と考察
本研究では夫が常勤職(277名,全データの95%)で,かつ妻の就労形態が常勤(50名17%),パート(160名56%),専業主婦(70名24%)のデータのみを使用し,妻の職業形態×夫婦の混合計画の二要因分散分析を行った。
まず関係満足については, 夫のほうが高いこと(p < .05)に加えて職業形態との交互作用が見られた(p < .10)。 単純効果を検討すると,妻がパート就労である場合のみ, 夫の満足度が高くなっていた。他国に比べて,就労時間が長く家事関連時間が短い日本の夫(ベネッセ,2010)にとって家事育児に柔軟に対応するために比較的タイムバインドの影響の受けにくく,かつ収入の補助を得られるパートタイムで就労する妻との関係性についての満足度が高い結果であると考えられる。
子育てストレスについて, 家庭教育不安,両価性葛藤,対応の硬直,指針の不一致のいずれも妻のほうが高く(指針の不一致のみp < .05,他はps < .001),特に,対応の硬直で職業形態の主効果(p < .10)がみられ, 妻が常勤の場合のみ,対応の硬直が低くなることが認められた。
就学前のこどもをもつ夫婦データに基づく木田(1985)では,妻がパートの場合,夫婦相互の理解は低く,双方常勤の場合は,相互理解が高いことが報告されており本調査の結果から,その傾向は子どもが思春期に達する段階でも同様の傾向であることを示唆するものといえよう。