日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PD

2015年8月27日(木) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PD008] 中学生の学級集団感に及ぼす合唱コンクールの影響

高橋知己1, 金谷諭#2 (1.上越教育大学, 2.上越教育大学大学院)

キーワード:合唱コンクール, 特別活動, 学級集団

【問題と目的】
多様な活動を通して自尊感情や集団生活においての他者理解を深め,良好な人間関係を構築することを目的とする学校行事は,教育課題の一つであるコミュニケーション能力を高めるための有効な方法である。本稿では,学校行事の中でも多くの中学校で取り組まれている「合唱コンクール」に焦点を当て,中学生の学級集団感に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
【方 法】
調査対象:A県公立B中学校に通う中学3年生(前:男子37名,女子28名.後:男子37名,女子26名)
調査時期:合唱コンクール前の20XX年10月下旬と合唱コンクール後の11月中旬に実施
調査手続き:以下の尺度から構成される質問紙に対する4件法で回答を求めた。①学級の持つ雰囲気や個性という学級の特徴を多面的に捉えるものとして,伊藤・松井(2001)による「学級風土尺度」の8下位尺度のうち「生徒間の親しさ(7項目)」,「学級内の公平さ(5項目)」の2つの下位尺度と,②教師-児童生徒関係の変容をとらえるため,中井・庄司(2008)による「生徒の教師に対する信頼感尺度」のうち「安心感(11項目)」について調査を行った結果について分析対象とした。
【結 果】
コンクール前後における3尺度について男女別に分散分析を行った。男子は全ての尺度において有意差はみられなかったが,女子では生徒間の親しさでは,(F(1,52)=4.010, p<.10),教師に対する信頼感では,(F(1,52)=3.604, p<.10),学級内の公平さでは,(F(1,52)=2.823, p<.10) と全ての尺度において有意傾向がみられた(Table1)。であった。
【考 察】
本研究の結果から,男子ではすでに友人や教師との信頼関係が構築され,それは合唱コンクールに影響されないほど堅牢だったのではないかと考えられる (Fig1,2)。一方女子では,学年の特性や合唱コンクールへの期待感,学級集団活動に対する意識の高まりが生徒間の親しさが向上した背景にあると思われる。また,教師に対する信頼感が増したことは,練習を通しての教師の関わり方が大きな意味を持つことが示唆される。ここでは特に公平さが有意に低下していることは注目に値する。合唱コンクールでの役割や活動への取り組みの過程における出来事に起因するものと思われるが,今後,特別活動(学級活動)を計画・実行する際の指導の在り方を検討するときの視点として,役割設定の仕方が指導上の大きなポイントとなるのではないだろうか。