日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PD

2015年8月27日(木) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PD009] 大学生の援助要請スタイルの違いが ストレス反応および友人関係満足感に及ぼす影響

肥田乃梨子1, 田中あゆみ2, 石川信一3 (1.同志社大学大学院, 2.同志社大学, 3.同志社大学)

キーワード:援助要請スタイル, ストレス, 援助要請行動

【問題と目的】
援助要請行動の質に着目した先行研究によると,援助要請過剰型,援助要請回避型,援助要請自立型の3つのスタイルが存在すると明らかにされている(永井,2013)。さらに縦断的調査によって,各スタイルが実際の援助要請行動を予測することも示されてはいるものの,援助要請スタイルの違いが個人に及ぼす影響については,今後の課題とされている。そこで本研究では,援助要請スタイルの違いが大学生の精神的健康および友人関係満足感に及ぼす影響について検討を行った。
【仮 説】
1.援助要請過剰型傾向は,ストレス反応,および友人関係満足感の両者に正の影響を与える。
2.援助要請回避型傾向は,ストレス反応に正の影響を与え,友人関係満足感に負の影響を与える。
3.援助要請自立型傾向は,ストレス反応に負の影響を与え,友人関係満足感に正の影響を与える。
【方 法】
調査対象者 大学生431名を対象とした(男性206名,女性225名,有効回答率97.51%)。平均年齢は,20.43(SD=1.19)であった。
質問紙の構成 ⑴フェイスシート:回答者の性別,年齢⑵援助要請スタイル尺度:永井(2013)
⑶心理的ストレス反応測定尺度(SRS-18):鈴木・嶋田・三浦・片柳・右馬埜・坂野(1997)⑷友人関係満足感尺度:加藤(2001)
【結 果】
構造方程式モデリング
援助要請過剰型,援助要請回避型,援助要請自立型の各傾向が,ストレス反応および友人関係満足感にどのように影響するかという因果モデルを,構造方程式モデルの推定によって検討した(Figure 1)。なお,分析にはAmos 22を用い,最尤法により母数の推定を行った。援助要請過剰型,援助要請回避型,援助要請自立型,友人関係満足感は,各1つの観測変数を用意したため,豊田他(1992)の計算式に従って誤差分散を算出し,誤差分散を固定して分析を行った。
その結果,援助要請過剰型は,ストレス反応と友人関係満足感に正の影響を与えていた(β=.29, .21)。援助要請回避型は,ストレス反応に正の影響を与えており(β=.22),友人関係満足感には負の影響を与えていた(β=-.12)。援助要請自立型は,ストレス反応に有意な影響を与えておらず,友人関係満足感には正の影響を与えていた(β=.16)。モデルの適合度を算出したところ,χ2=37.655,df=10,GFI=.976,AGFI=.934,CFI=.969,RMSEA=.080,AIC=73.66であり,説明率に問題はないと判断した。
【考 察】
仮説1と仮説2は支持され,仮説3の一部が支持されたことから,3つの援助要請スタイルの内,援助要請自立型が対人関係において最も悪影響の少ない援助要請スタイルである可能性が示された。つまり援助要請を行う場合,過剰にではなく,問題を抱え込むのでもなく,問題解決の試行錯誤を行った上で実行することが適切であるといえる。
しかし,援助要請自立型はストレス反応へ負の影響を与えるという仮説3は本研究で支持されなかったため,対人関係における満足感は高めるが,ストレス反応を低減させる方略とまでは言い切れない側面を示している。今後は縦断的研究を行うなど,更なる研究の構築が必要である。