[PD010] 小学校における対立解消に焦点を当てたピア・サポート・トレーニングの効果の検討
キーワード:ピア・サポート, 対立解消, 社会性
小学生を対象に,対立解消(peer mediation)に焦点を当てたピア・サポート・トレーニングを実施し,社会性,対立解消スキル,サポートの授受,学級適応感の観点からその効果を検討した。
方法
参加者 公立小学校4年生1学級26名(男子10名,女子16名)。児童の特徴として,単一学級で児童間の人間関係の固定化や,自己表現が苦手であることなどがあげられていた。
実施者 教育学部の小学校教育コースに所属する大学生7名(3年生5名,4年生2名,性別は女性6名,男性1名)が大学教員の指導のもと実施者をつとめた。
実施概要 2014年9月から2015年2月まで,月2回のペースで1回あたり約45分,計10回のトレーニングを実施した。概要をTable 1に示す。
トレーニングの効果を般化させるための取り組みとして,日常の指導の中での児童への声かけを学級担任に依頼した他,トレーニングの要点を示す掲示物(教室内)や児童への宿題を用いた。
効果測定 トレーニングの実施の前後およびトレーニングの中盤(対立解消の具体的スキルを学ぶ直前;第7回と8回の間)の計3回,①社会性,②対立解消スキル,③サポートの授受,④学級適応感について,それぞれ以下の項目により測定を行った。①社会性:国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2004)の「わたしの学校生活しらべ」の社会性に関する12項目。②対立解消スキル:池島(2011)の記述をもとに,メディエーションについての知識や態度を問う10項目を作成して用いた。③サポートの授受に関する尺度:三宅(2011)の「サポートの入手可能性」「サポートの提供可能性」についての各尺度から5項目ずつを用いた。④学級での適応感:学校環境適応感尺度(ASSESS)の「生活満足感」5項目を使用した(山田,2013)。全て5段階で評定を求めた。
結果と考察
全3回の効果測定全てに参加し,回答に不備の無い23名(男子9名,女子14名)を対象とした。項目分析の結果不適と考えられた項目を削除した後,各尺度についてそれぞれ当該属性が高いほど高得点となるよう集計し,以下の分析に用いた。
測定時期ごとの各尺度の平均値をTable 2に示す。各尺度得点において,トレーニング前,トレーニング中盤,トレーニング後で変化がみられるかどうか分散分析(被験者内1要因,3水準)によって検討した。
その結果,社会性,対立解消スキルにおいては,測定時期の主効果が有意で,トレーニング前からトレーニング中盤にかけて上昇した後,トレーニング後にもほぼ同様の水準であった。サポートの授受(獲得・提供),学級適応感においては,統計的に有意な効果は示されなかった。
トレーニングの効果は,社会性と対立解消スキルにおいては明確に示された。サポートの授受と学級適応感については,平均値の値をみると上昇傾向にはあるが,統計的に有意といえるほどの変化はみられなかった。今後,トレーニングでの学習内容を生かしたピア・サポート活動を展開し,児童に自身の成長を実感できる機会を提供するとともに支え合いの学級雰囲気の醸成へとつなぐことによって,サポートの授受や学級適応感においても上昇が期待される。
方法
参加者 公立小学校4年生1学級26名(男子10名,女子16名)。児童の特徴として,単一学級で児童間の人間関係の固定化や,自己表現が苦手であることなどがあげられていた。
実施者 教育学部の小学校教育コースに所属する大学生7名(3年生5名,4年生2名,性別は女性6名,男性1名)が大学教員の指導のもと実施者をつとめた。
実施概要 2014年9月から2015年2月まで,月2回のペースで1回あたり約45分,計10回のトレーニングを実施した。概要をTable 1に示す。
トレーニングの効果を般化させるための取り組みとして,日常の指導の中での児童への声かけを学級担任に依頼した他,トレーニングの要点を示す掲示物(教室内)や児童への宿題を用いた。
効果測定 トレーニングの実施の前後およびトレーニングの中盤(対立解消の具体的スキルを学ぶ直前;第7回と8回の間)の計3回,①社会性,②対立解消スキル,③サポートの授受,④学級適応感について,それぞれ以下の項目により測定を行った。①社会性:国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2004)の「わたしの学校生活しらべ」の社会性に関する12項目。②対立解消スキル:池島(2011)の記述をもとに,メディエーションについての知識や態度を問う10項目を作成して用いた。③サポートの授受に関する尺度:三宅(2011)の「サポートの入手可能性」「サポートの提供可能性」についての各尺度から5項目ずつを用いた。④学級での適応感:学校環境適応感尺度(ASSESS)の「生活満足感」5項目を使用した(山田,2013)。全て5段階で評定を求めた。
結果と考察
全3回の効果測定全てに参加し,回答に不備の無い23名(男子9名,女子14名)を対象とした。項目分析の結果不適と考えられた項目を削除した後,各尺度についてそれぞれ当該属性が高いほど高得点となるよう集計し,以下の分析に用いた。
測定時期ごとの各尺度の平均値をTable 2に示す。各尺度得点において,トレーニング前,トレーニング中盤,トレーニング後で変化がみられるかどうか分散分析(被験者内1要因,3水準)によって検討した。
その結果,社会性,対立解消スキルにおいては,測定時期の主効果が有意で,トレーニング前からトレーニング中盤にかけて上昇した後,トレーニング後にもほぼ同様の水準であった。サポートの授受(獲得・提供),学級適応感においては,統計的に有意な効果は示されなかった。
トレーニングの効果は,社会性と対立解消スキルにおいては明確に示された。サポートの授受と学級適応感については,平均値の値をみると上昇傾向にはあるが,統計的に有意といえるほどの変化はみられなかった。今後,トレーニングでの学習内容を生かしたピア・サポート活動を展開し,児童に自身の成長を実感できる機会を提供するとともに支え合いの学級雰囲気の醸成へとつなぐことによって,サポートの授受や学級適応感においても上昇が期待される。