The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD018] 説明における聞き手の理解状況のモニタリングが説明内容に及ぼす影響

伊藤貴昭1, 垣花真一郎2 (1.明治大学, 2.郡山女子大学)

Keywords:説明, モニタリング

1.目的
学習者に説明を生成させることで理解が促進されるという現象がある。伊藤・垣花(2009)では,説明の中でも特に対面状況における説明によって,意味付与発言が増加し,これが理解に寄与することが示された。しかし,なぜ対面状況で説明者は意味を付与しようとするのかについては,その要因の一部(相手の否定的フィードバックによる再説明)のみが明らかにされただけであり,意味付与発言が生成されるその他の要因についての検討がなされていなかった。
本研究の目的は,対面状況における説明について,意味付与発言の生成プロセスに関わる要因を検討することである。具体的には,説明者が自発的に行っていると予想される相手の理解状況のモニタリングに焦点を当てる。説明者は,説明を生成する中で常に相手の理解状況をモニタリングしているはずである。その結果,相手から明確なフィードバックが得られるときはもちろんだが,それ以外にも自分の説明内容と(説明者が予想する)相手の理解状況とのすり合わせの結果,説明内容の修正を行っている可能性もある。本研究では客観的には捉えることの難しい説明者のモニタリングに着目することで,説明内容のうち特に意味付与発言との関連を検討することが目的である。
2.方法
参加者:首都圏の四年生大学に通う大学生38名(2名1組,計19組)。
材料:伊藤・垣花(2009)で用いた統計学の「散布度」に関する説明文(1282文字)。
手続き・分析:2人1組の友人同士で実験を行った。参加者の一方に説明文とメモ用紙を渡し,説明文読解後に聞き手の友人に説明させた。その際,聞き手には「はい,いいえ」以外の発話をしないよう教示した。また,本研究では説明中のモニタリング状況を把握するため,「相手が理解できていないと思った(説明者)」「説明内容が理解できないと思った(聞き手)」場面に親指を挙げて合図を送ってもらった。合図の指はお互いから見えないよう衝立で隠れるようにした。
3.結果と考察
説明者が自発的に行うモニタリングによって意味付与発言をしているならば,合図を頻繁に送る人(相手が理解できていないと敏感に感じる人)のほうが意味付与発言をより多くしていることが予想される。これを確認するため,説明者が行った合図の回数で高群・低群に分け,カテゴリ頻度および説明中に占める意味付与の割合を比較したものがFigure 1である。
検定の結果,「データの読み上げ」「データの意味づけ」「意味づけの繰り返し」で有意な差が検出された。つまり,相手のことをよくモニターすることが意味付与発言の増加に一定程度寄与していることが示された。しかし,高群では意味付与以外の発言数も多く,説明中に占める意味付与の割合が必ずしも低群を上回るわけではないため,それ以外の要因についてもさらに検討すべきである。