[PD023] ストーリーアニメ理解過程に影響する要因の検討
Keywords:アニメ理解, イベントインデックスモデル, 状況的次元
問題と目的
梶井(2012a, 2012b)は,アニメ理解に関わる状況的次元について検討を行った。その結果,アニメのジャンルによって,影響を及ぼす状況的次元が異なることが示唆された。具体的には,ストーリー作品(梶井, 2012a)は時間次元が,ギャグ作品(梶井, 2012b)は,因果次元が有意であった。しかし,梶井(2012a)の材料は,全体で1つの話であり,なおかつ完結していなかった。一方,梶井(2012b) の材料は,3分前後の短い話が続いていた。そのため,物語の構成が結果に影響した可能性が考えられる。本研究では,全体で1つの話であり,なおかつ完結しているストーリー作品を用いて,梶井(2012a, 2012b)と同様の検討を行う。
方 法
参加者 日本語を母国語とする大学生,大学院生36名(男性18名,女性18名)。年齢は24歳11か月から19歳0か月で,平均年齢は20歳8か月であった。
手続き 映像はカットごとに区切った。1つのカットの映像刺激の再生が止まった後,スペースキーを押すことで,次のカットの映像刺激が再生されるようにした。映像刺激が止まってからスペースキーを押すまでの時間を,反応時間として計測した。この時間が長い場合,状況モデルが更新されると考えられる。参加者には,1つのカットの映像刺激の再生が止まった時,続きが見たいと思ったらスペースキーを押すように教示した。
材料分析 映像刺激は「昭和物語」を使用した。刺激の長さは18分48秒であり,カット数は193カットであった。状況的次元はZwaan et al.(1995)の5次元全てを採用した。変化の有無の判定は第3者と個別で行い,判定が食い違った箇所は合議で判定を決定した。また,状況的次元以外に反応時間に影響しそうな変数として,カットの長さ,カットの系列位置,BGMの開始,BGMの終了を補助的変数として加えた。以上の説明変数のうち,カットの長さ,カットの系列位置以外の変数は全て1,0でコード化した。
結 果
反応時間を従属変数とし,状況的次元の変化と補助的変数を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果をTable1に示した。共線性の問題はなかった。重回帰式は有意であった(F(9,183)=7.028, p<.001)。説明変数のうち,系列位置,BGMの終了のみが有意であった。
考 察
梶井(2012a)の結果とは異なり,状況的次元は反応時間に有意な影響を与えていなかった。これは,実験で使用した物語では,カット間で大きく時間が経過したり,前の時間に戻ったりすることが少なかった。そのため,参加者が物語を「1日のできごとだ」と捉えていた可能性が考えられる。一方,系列位置とBGMの終了は梶井(2012a, 2101b)と同じく有意であった。つまり,アニメ理解にはBGMが,ジャンルを問わず,影響していることが示された。
引用文献
梶井直親(2012a). 日本認知心理学会第10回大会発表論文集,45.
梶井直親(2012b). 日本心理学会第76回大会発表論文集,840.
梶井(2012a, 2012b)は,アニメ理解に関わる状況的次元について検討を行った。その結果,アニメのジャンルによって,影響を及ぼす状況的次元が異なることが示唆された。具体的には,ストーリー作品(梶井, 2012a)は時間次元が,ギャグ作品(梶井, 2012b)は,因果次元が有意であった。しかし,梶井(2012a)の材料は,全体で1つの話であり,なおかつ完結していなかった。一方,梶井(2012b) の材料は,3分前後の短い話が続いていた。そのため,物語の構成が結果に影響した可能性が考えられる。本研究では,全体で1つの話であり,なおかつ完結しているストーリー作品を用いて,梶井(2012a, 2012b)と同様の検討を行う。
方 法
参加者 日本語を母国語とする大学生,大学院生36名(男性18名,女性18名)。年齢は24歳11か月から19歳0か月で,平均年齢は20歳8か月であった。
手続き 映像はカットごとに区切った。1つのカットの映像刺激の再生が止まった後,スペースキーを押すことで,次のカットの映像刺激が再生されるようにした。映像刺激が止まってからスペースキーを押すまでの時間を,反応時間として計測した。この時間が長い場合,状況モデルが更新されると考えられる。参加者には,1つのカットの映像刺激の再生が止まった時,続きが見たいと思ったらスペースキーを押すように教示した。
材料分析 映像刺激は「昭和物語」を使用した。刺激の長さは18分48秒であり,カット数は193カットであった。状況的次元はZwaan et al.(1995)の5次元全てを採用した。変化の有無の判定は第3者と個別で行い,判定が食い違った箇所は合議で判定を決定した。また,状況的次元以外に反応時間に影響しそうな変数として,カットの長さ,カットの系列位置,BGMの開始,BGMの終了を補助的変数として加えた。以上の説明変数のうち,カットの長さ,カットの系列位置以外の変数は全て1,0でコード化した。
結 果
反応時間を従属変数とし,状況的次元の変化と補助的変数を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果をTable1に示した。共線性の問題はなかった。重回帰式は有意であった(F(9,183)=7.028, p<.001)。説明変数のうち,系列位置,BGMの終了のみが有意であった。
考 察
梶井(2012a)の結果とは異なり,状況的次元は反応時間に有意な影響を与えていなかった。これは,実験で使用した物語では,カット間で大きく時間が経過したり,前の時間に戻ったりすることが少なかった。そのため,参加者が物語を「1日のできごとだ」と捉えていた可能性が考えられる。一方,系列位置とBGMの終了は梶井(2012a, 2101b)と同じく有意であった。つまり,アニメ理解にはBGMが,ジャンルを問わず,影響していることが示された。
引用文献
梶井直親(2012a). 日本認知心理学会第10回大会発表論文集,45.
梶井直親(2012b). 日本心理学会第76回大会発表論文集,840.