The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PD

Thu. Aug 27, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PD024] 自己調整学習方略の発達差に関する横断的研究

メタ認知機能に焦点づけた検討

河内新一1, 吉澤寛之2 (1.岐阜大学大学院, 2.岐阜大学大学院)

Keywords:動機づけ, 学習方略, メタ認知

自己調整学習の定義には,学習者のメタ認知的な側面が考慮され,大きな位置を占めていることや,自己調整学習方略にプランニングやモニタリングなどのメタ認知過程が含まれている(伊藤, 2009)ことから,メタ認知能力は学習者が自分自身の学習過程に能動的に関与できるようにするために前提となる重要な発達的要因である。さらに,伊藤(2009)は,メタ認知能力が高い者ほど,より自己調整的な学習方略を有していることが予想されると述べている。本研究では,メタ認知能力を中心とした自己調整学習方略の発達差を確認し,併せて自己調整学習方略と学習パフォーマンスとの関連を各発達段階で検討した結果を報告する。
方 法
1.調査協力者
岐阜県内の小学校と中学校各3校の小学3年生から中学2年生に調査を実施し,有効データが得られた1558名(小学3年男子66名,女子59名,小学4年男子113名,女子127名,小学5年男子130名,女子109名,小学6年男子126名,女子107名,中学1年男子201名,女子169名,中学2年男子181名,女子170名)を分析対象にした。
2.自己調整学習方略に関する測定尺度
(1)認知的側面の自己調整学習方略(伊藤, 1996;14項目6件法)。(2)動機づけ的側面の自己調整学習方略(伊藤・神藤, 2003;27項目5件法)。(3)学習方略使用尺度(広田・佐藤, 1997;32項目5件法)。
3.学習パフォーマンスに関する測定尺度
(1)学習動機づけ方略尺度[MSLQ](Pintrich & De Groot, 1990;18項目6件法)。(2)目標志向性尺度(Elliot & Church, 1997;17項目4件法)。(3)平常の学習時の不安感(曽我, 1983;6項目5件法)。(4)学習の持続性の欠如,学習価値観の欠如,失敗回避傾向,達成志向,自己評価(下山ら, 1985;それぞれ5項目4件法)。(5)達成動機尺度の達成欲求下位尺度(Lang & Fries, 2006;5項目4件法)。
4.調査時期および手続き
2014年11月下旬~12月下旬に各尺度からなる無記名の個人記入形式の質問紙を各小中学校に配布し,それぞれの学校で学級ごとに実施した。
結果と考察
因子構造と信頼性を確認した後,発達段階(6水準)と性別(2水準)を独立変数,各尺度得点を従属変数とする一要因の分散分析を行った。メタ認知的方略尺度の下位尺度であるプランニング方略尺度などの自己調整学習方略に関わる尺度や,MSLQの下位尺度である自己効力感などの学習パフォーマンスに関わる尺度 に発達段階差や性差が見られた(発達段階差に関する主要結果はTable 1参照)。自己調整学習方略に関わる尺度については,そのほとんどが学年が上がるにつれてその使用が低下する傾向がみられた。また,パフォーマンスに関わる尺度については,自己効力感や学習持続性の低下,学習時の不安感の高まりといった学習に対する負の傾向が学校段階が上がるにつれて増加することが分かった。
次に,自己調整学習方略に関わる尺度を説明変数,学習パフォーマンスに関わる尺度を基準変数とした重回帰分析を行った。分析の結果,自己効力感へのベータが有意である自己調整学習方略の下位尺度数が発達に伴い増加していた(自己効力感の調整済R2:中学年.355,高学年.383,中学生.363, ps<.001)。また,熟達目標や達成欲求,内発的価値でも同様であった。このことから,発達段階が上がるにつれ,パフォーマンスの向上に有効な自己調整学習方略が増加することが明らかになった。
今後は,発達段階ごとに有効な自己調整学習方略への心理教育的介入研究を実施する予定である。